ケーススタディ:未来の住まい方 日本の小さな住まい方

【特集】greenz.jp 編集長 鈴木菜央さんが実践する小さな住まい方、家族4人のトレーラーハウス暮らし

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「未来住まい方会議」では、これまでに様々な国のタイニーハウスやモバイルハウス、小さな暮らしの実践者をご紹介してきました。しかし日本国内に目を向けてみると、そのような暮らし方を実践し、アクティブに発信している方のお話を聞く機会はそう多くはありません。

greenz.jp 代表/Co編集長の鈴木菜央さんは、昨年から千葉県いすみ市でご家族とともにトレーラーハウスでの生活をスタートされました。関心は高くても、普段なかなか知ることのないトレーラーハウスでの暮らし。普段の過ごし方、トレーラーハウスにまつわるコストや生活費、ご家族との関係性の変化など、小さな暮らしの先駆者ならではの貴重なお話を鈴木さんにお伺いしました。

※この記事は2015年1月29日に行われた「YADOKARI Meeting Vol.1」にて、ゲストスピーカーの鈴木さんにお話頂いた内容をもとに作成されています。
イベントレポートはこちら⇒http://yadokari.net/event/23690/

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鈴木菜央(すずき なお)さん NPOグリーンズ代表/greenz.jp編集長 76年バンコク生まれ東京育ち。2002年より3年間「月刊ソトコト」にて編集。独立後06年「ほしい未来は、つくろう」をテーマにしたWebマガジン「greenz.jp」創刊。千葉県いすみ市在住。家族4人で35㎡のタイニーハウス(車輪付き)にて、小さくて大きな暮らしの実験中。著作に『「ほしい未来」は自分の手でつくる』(講談社 星海社新書)。

150㎡の賃貸から35㎡のトレーラーハウスへ劇的ダウンサイジング。その理由とは?

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── 以前は150㎡の広い賃貸の家に家族4人+ハムスター一匹と暮らしていた鈴木さん。これまでよりもずっと小さいトレーラーハウスに引っ越すことを決意されたのには、何か理由があったのでしょうか?

鈴木菜央さん(以下、鈴木) 「僕はずっと賃貸住まいだったんですけど、『そろそろ自分が面倒見れる大きさの家で、自分が手をかけて生きていくみたいなことをやりたいなぁ』、『DIYやりたいなぁ』、『支出をもっと減らして自由になりたいなぁ』とかずっと考えてたんですね。ローンに絡めとられるのは自分は向いていないし。でもなかなか一歩踏み出せなくて。
結局5年間賃貸に住んでいたんですけど、去年の春くらいに何か次のアクションをしよう!って色々調べていったら、アメリカで盛り上がってるタイニーハウスムーブメントのことを知って。『小さい家を仲間と一緒に作って住めばいいじゃん』っていう話がとても面白いなぁって思いはじめました。」

── タイニーハウスムーブメントに共感し、アメリカのタイニーハウスの動画などを熱心にチェックしていた鈴木さん。ほどなくお友達の一人から思わぬ提案が舞い込みます。

鈴木 「友達から『6年間住んだトレーラーハウスを売りに出すから見に来る?』って話があったんです。妻はどう思うかなってドキドキしてたんですけど、実際に見に行ってみたら『いいじゃん、これで』って全然悩んでなかった。でも僕は契約するとなると『本当にこれでいいのかな?』、『他の選択肢もありだね!』とか悩んでいて。そしたら三日ぐらいして妻が『ウジウジしてんじゃねーよ!』って言いはじめて(笑)。それで、とりあえず引っ越しちゃおう!と決めました。」

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九十九里からいすみ市まで、ハラハラドキドキの1時間半の旅

── トレーラーハウスが他の家と大きく異なる点は、トラックにつなげて家そのものを移動できること。しかし日本ではまだ前例の少ないトレーラーハウスの大移動、その現場ではどのようなご苦労があったのでしょうか?

鈴木 「トレーラーハウスを移動すると、トレーラーが大きすぎて対向車両が通れないんですよ。なので、対向車がいない時はスピードを出して、対向車が来たら時速10キロとか15キロとかでノロノロ走って行く。そんな感じで早朝朝4時に出発して、九十九里から移動先のいすみまでの35㎞くらいを一時間半位かけて移動しました。」

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鈴木 「家を設置するまでには、重機で土地をならしてコンクリートで基礎を作って、その上に設置するんです。設置の時にクレーンでトレーラーハウスを吊らなきゃいけないんですが、クレーンとトレーラーハウスの重みで、道路に穴が開いちゃったんです。『穴が開いたコストまで僕が払うのかな?』ってドキドキしてたんだけど、業者さんが市の方に言ってくれて、すぐ直しに来てくれました。
クレーンも一番大きいもので、家が10トンあるので、それを吊れるクレーンの費用が一日あたり10万円ほど。トレーラーの運搬も特殊な免許を持ってる業者さんに長野からわざわざ来てもらいました。だからトレーラーハウスとはいえ、タイニーハウスみたいに気軽に動かす感じとは違いますね。」

ご近所のトレーラーハウスへの反応は?

鈴木 「トレーラーハウスって、まだ知名度が低いから、周囲の住人の方をびっくりさせないように、ご近所の40軒ぐらいに手紙を配ったんです。あとは丸一日道路を封鎖しなきゃいけなかったので、ものすごい気を使ってご近所に菓子折を配って歩いたり。そうして事前に話してたので、みんな当日に見学に来て『おー、これがトレーラーハウスか』『中どうなってんの?』と面白がってくれました。
引っ越した後の話ですが、うちの前に道路があるんですけど、車が通る時にみんなすごい減速して、一回ゆっくり見てからまた加速して行くんですよ。珍しい建物だから、たぶんご近所の目印になってるんじゃないでしょうか。」

物がいっぱい!?YADOKARIに小屋を発注

── 海外の事例などで見るスモールハウスは物が少なく、スッキリしたお宅が多い印象があります。一方、150㎡の家に家族四人で暮らしてきた鈴木さんは、四分の一ほどに減ってしまった家の広さに問題はなかったのでしょうか?­­­

鈴木 「いま住んでいるトレーラーの面積が35㎡なんですね。中は10m×3.5mなのかな、だから狭いんですよ。上にロフトが二つあって、下だけで35㎡、上と合わせると50㎡、天井が1.4mくらいで。さすがにこれじゃ荷物を全部入れるのは無理ですよね。元々150㎡の家に住んでたから物がいっぱいあったので、『よし、小屋建てちゃおう!』と決めて、YADOKARI小屋部と相談して、うちの敷地に一棟の小屋を建てました。」

その時の様子はこちら⇒http://yadokari.net/yadokari-hut/16078/

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断捨離の効果はいかに?

鈴木 「持ち物は、始めに家具を半分にしました。あとはテレビと電子レンジと炊飯器と、電気式のオイルヒーターを減らして、洋服も三分の一に減らしています。ついでに情報もダイエットしてしまおうと思って、NHKの受信と新聞の購読もやめて、本を1500冊から300冊の五分の一に減らしています。本は電子書籍にしたのものが一割ぐらいで、あとは人にあげて、あげられない物は売りました。
やってみて分かったことなのですが、捨てて後悔してる物って何もないんです。電子レンジが無いと不便じゃない?とよく聞かれるんですが、無いなら無いで、全く困らないことに気づきました。ただ、炊飯器だけは一応取ってあって、たまに使います。
普段持っている服だって全部着ないですよね?本も持っているものは全部読むわけではないし、思い出の物や最低限必要な物を残しておけば、なにも困らないですよ。」

ここで気になるトレーラーハウスの購入費、諸経費を大公開!

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鈴木 「費用で言うと、地方は東京に比べて地価が安いですよね。ただ盲点だったのが上下水道で、水道を引くのに土地と同じくらいのお金がかかってしまいました。トレーラーハウス本体は約480万円で、あとは運び賃と整地と設置の費用が70万円くらい。合わせて800万円後半でした。
ハッキリ言ってしまうと、このエリアでこの値段だと中古の家が買えるんです。だけど、それ以上に面白いことに価値があるかなと考えて現在の家は購入しました。ちなみに家のローンは、車輪がついてるから『オートローンで支払って下さい』と言われています。その費用は4年のオートローンを組んで払っています。」

トレーラー暮らしのビフォー・アフター

── トレーラーに引っ越したことで日常の支出に変化はありましたか?

鈴木 「支出は電気代が3,000円くらいと、水道代が2,000円くらいになって。それぞれ昔は1万円くらい支払ってたんです。ガスは4〜5,000円くらいになって。情報系ではインターネットの光回線をやめて、モバイルWiFiを一個置いてます。不便なのが、電波が悪いので家の中をあちこち持って歩かなきゃいけないこと。けれど情報系はすごくコストが下がりました。
冷蔵庫は450Lの家庭用から120Lに替えています。でも小さい冷蔵庫に交換したら音がうるさくて、音がイヤになったから夜間は電源を切るようになったんですよ。それで電気代がすごく下がって。
今は冬だからできてるんですけど(このインタビューは冬場に行われました)、『冷蔵庫はいらないかも』ということになって。家の北側の外に箱を作って窓をあけて野菜を入れたりとか、ビールを飲みたければ、その時だけ小さい冷蔵庫に電源入れて冷やせばいいかなとか、そんな風に工夫をしながら生活しています。」

── トレーラーハウスでは引っ越し前のお住まいと比べてご家族との距離がぐっと近くなったと思いますが、そのことでご家族との関係にも何か変化がありましたか?

鈴木 「基本的には変わらないんですが、近くにいるから、ケンカしたときの衝突がすごいですね(笑)。
でも普段は家族みんながいつも近くにいます。テレビが家にないこともあって、ご飯を食べた後の静かな時間に、家族は編み物をしてたり、本を読んでたり、僕は相撲を見ていたり。家が狭い分、いつでも家族に話しかけられて、ゆっくりした時間は増えたと思います。」

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トレーラーハウスの暮らしで得たもの

鈴木 「トレーラーハウスの暮らしで得たものは、やっぱり暮らしを自分で作る充実感ですかね。ローンを払い終えたらメチャクチャ自由だなと思って。あと電気代やガス代、情報系の支出が減ったことです。それでもまだまだ工夫できると思います。電気代がもっと減ってきたらオフグリッドも部分的にできるなぁとか。家が小さいので、手を入れた結果がすぐ返ってくるじゃないですか。
いつも思うのですが、人生一回こっきりなんで、面白おかしく生きていきたいって思います。家って借りるにしても買うにしても人生で一番大きなものですよね。それを使って遊べたら楽しいかなって。」

小さな暮らしは「理にかなった暮らし」

── ズバリ、小さな暮らしはおすすめできますか?

鈴木 「おすすめできますね。全然辛くないです。全部が理にかなってるって感じで無理がない。別に一生ここにいようって決めてる訳ではないですけど、ある時期にこういう暮らしを選択するのは『冒険』って感じがするんです。なんでもない感じで、普通に暮らしている日常自体が楽しくて。
先のことは分からないので、もしかしたら、三年くらい経てば『やっぱり広い家がいいよね!』って言ってるかもしれないんですが、理にかなった暮らしをするとメチャクチャ楽です。そうして楽になった分、自分のクリエティビティーを発揮できる。日々仕事とか稼ぎとかにあくせくしないで済みます。
アメリカの家みたいに大きくないのに、物だけ増えちゃってるのが日本の家じゃないですか。物が少ない暮らしをしたいなら狭い家に住んじゃうのが一番早いのかなって思います。ぜひ、みんなでやりましょう!と言いたいですね。」

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人生で一番大きい買い物と言われる家に対しても、柔軟な発想でご家族と「冒険」のごとく日々の生活を楽しまれている鈴木さん。家は「一回こっきり」の人生を楽しむステージだと考えたなら、私たちの住まい選びにも、今まで以上に多くの選択肢が広がっていることが感じられるのではないでしょうか。

写真提供(※最後の一枚除く):greenz.jp 鈴木菜央

ちいさな暮らしを知る・体験する・実践するためのメディア TINYHOUSE ORCHESTRA
月極本3 特集「好きなお金、嫌いなお金。」

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