伝統的な石の家とコンクリートによるオシャレな化学反応「compact karst house」

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中央ヨーロッパにあるスロヴェニア共和国。この国は、西はイタリア、北はオーストリア、南と南東はクロアチア、北東でハンガリーとそれぞれ国境を接している。スロヴェニアは日本の18分の1の面積で、人口205万人という小国だ。イタリアとの国境に位置するヴルホウリェ村はカルスト地方にある。今回ご紹介する「compact karst house」が建設されたヴルホウリェ村で有名なのは15世紀に建設された教会だけという、実に素朴な村だ。

カルスト地方はかつてオーク(ナラ)の木々の生い茂る緑豊かな地域だった。これらのオークの木々は、水の都で有名なベネツィアの建築にそのほとんどが使われた。
カルスト地方のあるスロベニア南西部とイタリア北東部にまたがる台地は石灰岩でできており、この石灰岩台地もこの地域名から取ってカルストと呼ばれるようになった。もともと風の強いこの地域は所々で石灰岩がむき出しになっている。風の強い地域性からか、窓のほとんどない石灰岩で造られた家が現在も数多く残されている。

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この地方の伝統的な石の家

小さな子供が二人いる若い夫婦にこの地域への住居の建築を依頼されたのが、スロヴェニア共和国の首都リュブリャナを拠点に活躍する建築事務所dekleva gregorič arhitektiだ。
彼らはこの地域の伝統を尊重し、石灰岩を使用しつつも、依頼者である夫婦の要望と現在の技術の原則に沿った小型で、なおかつモダンなデザインを考えた。その結果として生まれたのが、現代的田舎風スモールハウスだった。
家の基礎や内部、また伝統的な傾斜のある屋根にはコンクリートが使用され、外壁は伝統的な石灰岩で覆われた。外観的には92㎡の南北に伸びた長方形の石造の平屋に見えるが、内部の両端には木造の2階建てが2つ収まっているところがユニークだ。二つの木造の家は2階部分が大きな木でできた渡り廊下でつながっている。

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木造の小さな家の北側の1階部分はバスルームがあり、南側にはキッチンが構えられている。それぞれ木造の家の外側には背の高い収納スペースがコンクリート面にそって作り付けてある。二つの木造の家の間にある渡り廊下の下はリビングになっている。リビングの両側はこの地方の従来の石の家とは異なり大きな窓が作られ、オークの木々が覆う風景や近くにある教会を見渡すことができる。木造の家の外側は2階まで吹き抜けになっており、非常に開放的な印象だ。従来は暗かった伝統的な石の家の室内とはうってかわって、巨大な窓からは光が差し込み明るい空間となった。

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リビングの脇の書斎の横には2階へ上る階段がある。木の箱をモザイクのように組み立てた階段は、裏から見ると書斎の本棚になっているところが面白い。リビングの真上は大きな木の板と両脇を転落防止用のネットが張られたプレイルームとなっている。北側のバスルームの上は子供部屋、南側のキッチンの上は寝室だ。プライバシーの必要なそれぞれのベッドルームには天窓が設けられており、あたたかい陽射しが差し込む上に空を飛ぶ鳥以外、誰からものぞかれる心配もない。

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伝統を生かしつつ新しい発想をもって作られたこの家は、これからも持続可能な伝統的家屋の未来を期待させる。今後の展開が楽しみだ。

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Via:
smallhousebliss.com
dekleva-gregoric.com
brda.si
slovenia.info