世界の小さな住まい方

波乗り後の一杯を、絵になるコーヒースタンドで。「Third Wave Kiosk」

伊藤 愛プロフィールアイコン | 2015.5.29
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オーストラリアのメルボルンから約1時間ほど南下した場所にあるトーキーは、一年を通してサーフィンの世界大会やフェスティバルが開催され、サーファーたちのメッカとして知られるサーフタウンだ。そのトーキーの海を臨む崖地の中腹に、散歩途中のローカルやサーファーたちで賑わう「Third Wave Kiosk」がある。

「Third Wave Kiosk」はコーヒーや軽食などを販売する売店のほかに、化粧室や更衣室を完備した新しいタイプの公共施設として、地元の建築家であるTony Hobba氏によって設計された。しかし「Third Wave Kiosk」は私たちが公共施設と聞いて思い浮かべる無味乾燥な建築とは一味もふた味も違う。質素だけれど優美さも持ち合わせ、周囲となじんでいるのに一度見たら忘れられない存在感がある。そんな相反する性質をいくつも内包する不思議な建築なのである。

赤褐色の岩肌のように荒々しい表情の外壁は、後からエイジング加工を施したのではなく、2010年にビクトリア州で起きた洪水の防御壁として使用された鋼矢板(こうやいた)をリサイクルしたもの。厳しい予算を克服するためにHobba氏が提案した環境にも優しいアイディアだ。

鋼矢板とは主に港湾や河川などの型枠として使用されるもので、この建物のように建築の表舞台で使用されることはとても珍しい。Hobba氏によると、あえて赤褐色に腐食した鋼矢板を加工せずそのまま使用することで、周囲の崖との色調の調和を図ったという。

海岸へ降りる道と平行に斜めに下がっていく特徴的な形状やこの建物全体の高さは、土地の起伏や植生に配慮した結果導き出されたものだ。近くで見るとかなり主張する意匠のように見えるが、遠くからみると程よい加減で周囲の環境に溶け込んでいることに気付く。例えるなら普段は手に取らないシルエットの服を、勧められるがままに試着してみたら以外にしっくりきて驚いた、という感じか。

トーキーの海を眼下に眺めるオープンなカウンター席は、波の格好の定点観測地だろう。海から上がったあとはここで暖かいコーヒー片手に今日のロングライドを思い返して幸せに浸る。彼の地のサーファーたちは、ここでしか味わえない至福の一杯を「Third Wave Kiosk」で手にすることができるのだ。

Via:
dezeen.com
archdaily.com
knstrct.com

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YADOKARI「未来働き方会議」オープン!

伊藤 愛プロフィールアイコン

Writer 伊藤 愛

1975年、北海道羊蹄山麓の雪深い町に生まれる。
半ミニマリスト的生活を送る中で小さな家に興味を抱く。
元々美しい家やインテリアが三度の飯よりも好き。

学生時代訪れたイギリスで古い建築が市井の人々の生活の場として機能していることに感銘を受ける。
そのノリで札幌市郊外の中古住宅に住み、真夜中に突如思いつきで家のペイントを始める「ゲリラ的DIY」を敢行するも、
往々にしてあまりに微妙過ぎて家族にも気付かれていない。

そんな生活から一変、降って湧いた引っ越しで持ち家や車を手放すと、人生一度きりという言葉がリアルに迫ってきた。
今では美しい風景を求めて旅に出たいとウズウズする毎日。

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