アウトドアのリサイタル⁉小さな庭先音楽室 “Music studio”

via: https://www.dezeen.com

ここは南半球の美しい自然があふれるオーストラリア、ニューサウスウェールズ州のニューカッスル。

オーストラリアの面積は7,686,850 kmと日本の約20倍。その広大な面積の割に人口が少なく、総人口約2,413万人と日本の人口の5分の1。人柄もおおらかで、何か全てがゆったりとしている。そんな中で、もちろん家の敷地や造りもゆったりとしたスペースのある家が多い。

今回ご紹介するこの庭先のアウトドアのリサイタルスペースも、その特性をいかしたものだ。

オーストラリアのブリスベンに本拠を置く、教育、公共施設の建築に特化した建築会社「M3 アーキテクチャー」は、作曲家であり、弦楽器の先生でもあるクライアントのために小さな庭先音楽室を制作した。

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音楽家の暮らしにとって大きな障壁となるのが、音で家族に迷惑をかけてしまうことだ。同じ家に防音の音楽室を作るのもひとつの解決策となるが、今回はオーストラリアの広い庭を生かして、庭先に小さな音楽室を作ることにしたのだ。

壁と天井は石膏ボードを使用し、外装はファイバーコンクリートでコーティングして、その上を白色で塗り上げた。

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床は暖かい木のぬくもりを感じさせるフローリング。木製のアンティークなピアノと見事にマッチしている。

内装は外の白と組み合わせて濃紺色が所々に使われ、その2色のコントラストが美しい。
デザイナーのバーネイによれば、この音楽室はフィンランドの建築家であるアルバール・アルトが制作した、フィンランディアホールにインスピレーションを得たものだそうだ。

玄関から入って正面に見えるのは、濃紺色の壁に作り付けの広々とした作業用デスクと本棚だ。
部屋の奥は暗くなりがちだが、机の横に窓を取り付け、そこから光を取り込むことができるため、昼間はライトなども必要ないほど明るい。

奥に見える通路は後ろ側に続く小さな洗面所。
この趣きのある特徴的なグランドピアノを動かせば、部屋のスペースも二倍となるため、客室としても利用可能となる。左手に見える青いソファーは広げればベットにもなり、ここで睡眠をとることも可能だ。

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建物の高さは3mで盛り上がった天井は、部屋自体が反響するように設計してある。

予算に限りがあったため、できるだけ安い素材を使用した。しかし、不思議と安っぽさはなく、むしろユニークな特性が出ている。すぐそばに生えていたオリーブの木を使うなど、現地調達という面でコストを削った。

壁にかかる深い青の厚手の重いカーテンは防音にも役立ち、練習したい時や、控えめなアコースティックなサウンドが欲しい場合にも非常に効果的だ。

またスモールハウスの上部にも小さなガラス窓が取り付けられており、ここでも室内に明るい光を取り込む工夫がなされている。正面のドアも大きなガラス張りの造りとなっており、たとえドアを締め切っても圧迫感がなく、開けた時と同様の明るさを保つことができる。

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切妻造りの玄関はスタジオの全面へと開かれ、この様なミニコンサートステージへと変身する。写真からもバイオリン、ピアノ、チェロのアンティークな三重奏が聞こえてきそうだ。

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筆者自身も楽器をやるのだが、音楽家にとっては自分自身の音楽室がある家というのは、ある種の夢なのだ。
さらにそこで野外コンサートまでできるとなると、これ以上の喜びはない。この庭先スモール音楽室は、その全てを実現してくれる夢の様なアイデアと言えるだろう。
また、このようにスモールハウスの使い方というのは、非常に多岐にわたるということがわかる一例と言えるだろう。

 

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dezeen.com
/visit.alvaraalto.fi