持続可能な都市の再生を考える。学生の建築ワークショップEASA

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ヨーロッパ各国の建築を学ぶ学生が一同に集まり、一緒に寝泊まりしながら地域の課題に向き合う。EASA(欧州建築学生会)は、2週間の建築ワークショップを通して、異なるカルチャーやバックグラウンドを若い感性で楽しむ機会を提供します。ダイバーシティが生み出す、ユニークな学生の建築プロジェクトを見ていきましょう。

EASA (European Architecture Students Assembly)は、ヨーロッパの建築を学ぶ学生と世界中の専門家を結び付ける教育的な交流プラットフォーム。1981年以来、毎年夏の2週間の期間、ヨーロッパ各地でワークショップを開催しています。500人近くの学生と建築の専門家が一緒に暮らして、仕事、勉強、料理、食事、掃除を共同で行います。2018年のワークショップは、2020年の欧州文化首都に指定された、クロアチアの港湾都市リエカ(Rijeka)で行われました。

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「Level Up」という遊び場プロジェクトは、デッドキャナルと呼ばれる川と海が出会うリエカのデルタ地帯の再生に焦点を当てています。洪水対策の埋立地は、現在では使われなくなった倉庫や資材置き場が並ぶ産業の荒廃地。「Level Up」は、デッドキャナルにある1950年代の工業用倉庫Export Drvoの延長として建設されました。Export Drvoは2020年の欧州文化首都のセレモニーが催される予定の建築物です。

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建物の外側に建設された「Level Up」は、ストリートから屋上エリアへと導く大きな階段状の交流の場。既存の建築環境を再考し、リエカを180度見渡せる魅力的な屋上テラスを、足場とウッドデッキを組み合わせたシンプルな構造に設置しました。

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プロジェクトのテーマは、放棄されて使用されなくなった屋外スペースを再利用して若返らせることと、リサイクル可能な材料を使用すること。EASAはこれまで多くのプロジェクトに木材を使ってきましたが、構造フレームにスチール足場を使用したのは初めて。足場と木材が、撤去後に他の何かに再利用できるよう、一時的な構造物として考えられています。

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ワークショップが進むうちに、倉庫内の暑さと湿度で眠れない学生たちが、階段を接続する前の屋上テラスで寝るようになりました。2週間目には、毎日50人ほどの学生が屋上で目覚めて働き始めました。自発的なパフォーマンスも発生し、ワークショップを楽しく盛り上げます。

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リエカでは「Spotlight」という、アナモルフォーシス(歪像)アートプロジェクトも行われました。近年流行りのアナモルフォーシスアートは、立体物をペイントして、ある角度から見ると平面の画像や形が浮かび上がるというもの。建築とランドスケープの関係性を考えるには格好のテーマです。

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プロジェクトでは、2005年に閉鎖されたリエカの中心部の古い製紙工場 Harteraに焦点を当てています。閉鎖されるまで、ヨーロッパ最大のたばこ紙メーカーの1つだった都市の産業黄金時代の遺物です。「Spotlight」は文字通り無視された場所にスポットライトを当て、人々が新しい目で見ることで、場所の持つ物語、歴史、価値に気づけるという狙いです。

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ワークショップの初日は、参加者は塗料の原料となる瓦礫を集めるために、リエカの街とその周辺を探索することに専念しました。路上や建設現場、放棄された場所などから、無視されたり役に立たなかった壊れたレンガや石、大理石、鉄石を見つけ、それらを小さく粉砕し、セメントと水と混ぜ合わせて塗料をDIYで作り出しました。

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アナモルフォーシスアートの製作には、プロジェクターは必要ありませんでした。ロープや定規と仲間を導くための声だけで、デザインを異なる表面に投影するのに十分でした。

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ダイバーシティ豊かなワークショップは、建築を追求する学生たちにとても貴重な経験となるでしょう。最近オープンイノベーションが注目されていますが、日本の企業にダイバーシティが欠けていることもその理由かと思います。建築では、本当の意味でのデザイン思考が不可欠です。建築やリノベーションのワークショップを地方で開催し、海外と国内のビジネスパーソンが一緒に滞在する機会を提供すれば、新しい形の創造型インバウンドツーリズムが実現できるのではないでしょうか。

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