第2回:移住者にとっての土地、お百姓さんにとっての土地|おおいた農村潜伏記

これは野津というところの田んぼ。あまりに綺麗に並んでいたので撮影。
これは野津というところの田んぼ。あまりに綺麗に並んでいたので撮影。

「未来住まい方会議 by YADOKARI」をご覧のみなさん、こんにちは。
大分に移住して約10か月になりました小海もも子です。今回は、私が感じた土地について、農村に馴染む方法についてなどお話ししたいと思います。

私の移住したところは大分県でも山の方で、由布市の庄内という場所でした。太陽は山から昇り、山へ沈んでいきます。山裾には棚田や段々畑が広がり、一番下に大分川が流れています。ザ・農村という感じです。

農村で古民家に住むことは、土地を受け継ぐこと


古い家だと直すのも大変です。壁、床、棚などはもちろん、瓦屋根も修理が必要な場合もあります。
古い家だと直すのも大変です。壁、床、棚などはもちろん、瓦屋根も修理が必要な場合もあります。

私の農村生活のイメージは、自然の多い場所で、古民家に住んで、畑で野菜を育てて……と、至ってノーマルなものでした。実際住んでみるとその通りで、だんだん自分がそのイメージに近づいていくことが嬉しいような、気恥ずかしいような気持ちになったものです。

都市部の古民家との違いは、敷地が広め、納屋がある、畑や田んぼがある、敷地内にお墓や社があることもある、山から動物が降りてくることがある、などです。そしてもれなく家周辺の草取りや近所付き合いも付いてきます。家と言うよりも、土地を受け継ぐといった感覚の方が近いかもしれません。

大分に限らず、地方では状態の良し悪しはあるものの古民家が100万円台から購入できます。賃貸でも1万円くらいから借りられたり、場合によっては無料でもいいよと言ってくれる大家さんもいたりします。

しかし、安いからといって購入すると、修理でお金がかかってしまう場合もあります。私が住んだ家は床が抜ける、雨漏りする、排水菅が詰まる、隙間風やムカデの侵入など、今まで考えたことのない問題が起きました。古民家には魅力がありますが、修繕する技術と、笑って乗り越えるポジティブさが必要ですね。

場所によっては驚きの安さ! 大分移住に興味がある人、地方で家を探してみたい方は下記のサイトをご覧ください。
移住・交流ポータルサイトおおいた暮らし
九州の古民家などを多く取り扱っている不動産 オアシス不動産

農村に馴染むための作戦! 地域づくり=自分の住環境を良くする


集落の総会。今年度の予算を報告したり、区費の使い道を説明したりします。
集落の総会。今年度の予算を報告したり、区費の使い道を説明したりします。

田舎では生活に必須の情報がインターネットに上がっていないのがほとんど。どこに野菜が売っているのか、どこに美味しい食堂があるのか知りたかったら地元の人と仲良くなるのが一番! ということで、地元の方との縁をつなぐために、私のオススメは下記です。

① 挨拶をする、車ですれ違う時もペコリ
② 犬の散歩
③ 畑仕事
④ 集落のイベントに参加
⑤ 集落の飲み会に参加
⑥ 温泉でコミュニケーション
⑦ その土地を好きになる、それを伝える
⑧ 道普請(道や側溝の掃除など)や草取りなど集落維持に必要なことを積極的にする

自分のスタイルを押し通すよりも、まずは周囲に合わせる方が無難です。近所の人たちに「あいつはいいやつだ、無害だ」と思ってもらえることが、双方にとって良いことだと思います。

また、地域の環境が良くならないと、自分の住環境も良くなりません。積極的に集落行事に参加して、地域作りに参加しましょう。私が住んだ集落では、結構頻繁に集まりがありました。総会もあって、小さい集落ながらみんな真剣に話し合っていて、地域を維持して行くための努力を知ることができました。

そんな時は女性の役割も重要で、私も近所のおばちゃんたちとお茶の用意をしたり、お花を飾ったり、座布団をならべたりしました。名前も覚えられるし、わからないことなど聞くチャンスになります。私は幸いにも可愛がっていただき、集まりの最後には残った漬け物やお菓子を持たせてくれました。

住んでいる人が守ってきた土地があるからこそ移住できる


集落にある神社までの小道。きっと長い時間をかけて集落の人たちが作り上げてきたのだと思います。
集落にある神社までの小道。今はちょっと竹林が荒れているけど、きっと長い時間をかけて集落の人たちが作り上げてきた道だと思います。

さて私は常々、人は土からできているんじゃないかと思っています。土からできた物を食べて、土の上で遊んで、土に帰っていきます。お母さんは、土からできたものを食べて赤ちゃんの命を育んでいきます。

地元の人達が昔から住んできた、ここはいわば産土(うぶすな)です。自分たちの命をつなげてきた土地に、知らないところから来た人が住み始めるのは、やっぱり少し不安があるのだと思います。だからこそ新しく住む人間は、その土地の人達に、ある程度自分はどういう人間ですと示さないといけないような気がします。

移住者にとってはお金で買った土地でありますが、この土地で生きてきた人達は、特にお百姓さんたちにとっては、この土地を守って来たという自負があります。ご先祖さまたちが野山を切り開いて住めるようになった場所かもしれません。

移住者としては、その土地のやり方を押しつけられたくないという人もいるかと思いますが、地元の人の土地への愛着も理解する必要があると思います。

命を育てる土は素晴らしいものです。
命を育てる土は素晴らしいものです。

さて、第1回で、彼が買った家に転がり込む形で大分に住むことになった成り行きを書きましたが、実は移住してそうそうに彼とお別れすることになってしまいました。当然、家を出ることになったのですが土地勘もなく、友達もほとんどいない場所で家なき子状態です。

いきなり大分に来た理由がなくなってしまったわたしですが、さて、これからどうしよう。次回は、それでもわたしが大分にいようと思った理由について書きたいと思います。