鎌倉でアップサイクルを体験!世界に広がる「クリーニングデイ」とは?(前編)| 未来へつなぐアップサイクル

大人も子どもも楽しめるイベント。鎌倉の町並みを楽しみながらお散歩気分で各会場をまわる。
鎌倉の町並みを楽しみながらお散歩気分で各会場をまわるイベント。大人も子どもも楽しめる。

「アップサイクル」とは、古い不要なモノに新しい価値をつけ、モノを生まれ変わらせることをいう言葉。5月24日、鎌倉でこのアップサイクルをテーマにした『クリーニングデイ』が開催されました。フィンランド発祥のこのイベント、日本では第1回目の開催です。鎌倉の町のあちこちでアップサイクルの考え方に触れるワークショップやレクチャーが行われ、五月晴れの空の下、多くの人が集まりました。

多彩なプログラムが『クリーニングデイ』の魅力。廃材でアクセサリーを作ったり、カラフルなシリコン材でモノを修理したりといったアップサイクル体験のほか、映画の鑑賞付きワークショップやトークイベントも。一日を通して、モノと自分の関係についてじっくりと考えることができました。

パタゴニア鎌倉ストア(オーガナイズ:KULUSKA)とFabLab Kamakuraで行われた、アップサイクルが体験できるワークショップでは、訪れた人が気軽にアクセサリー作りや壊れたモノのリペアにチャレンジ。普段は手に取ることのない廃材やリペア材を手にしてみると、あんなモノも作りたい、こんなモノも修理してみたいと、アイデアが広がるようです。ふらりと訪れた方も、時間を忘れてアップサイクルに没頭していました。

パタゴニア鎌倉店では鎌倉を拠点に活動しているKULUSKAによる廃材を活用したレザーアクセサリーワークショップを体験。革や布の端切れからアクセサリーを作る。本格的な革細工用の工具で切ったりくりぬいたり継ぎ合わせたり。無限の組み合わせを楽しめる。
パタゴニア鎌倉店では鎌倉を拠点に活動しているKULUSKAによる廃材を活用したレザーアクセサリーワークショップを体験。革や布の端切れからアクセサリーを作る。本格的な革細工用の工具で切ったりくりぬいたり継ぎ合わせたり。無限の組み合わせを楽しめる。
イギリス生まれの画期的なリペア材SUGRU。カラフルな粘土のようなSUGRUで現代の「金継ぎ」を。同系色を使って馴染ませることもできますが、あえて違う色で継ぎ目を目立たせても。
イギリス生まれの画期的なリペア材SUGRU。カラフルな粘土のようなSUGRUで現代の「金継ぎ」を。同系色を使って馴染ませることもできるが、あえて違う色で継ぎ目を目立たせても。

実際にアップサイクルを体験したことで分かるのは、デザインやストーリーを加えることで、廃材や壊れたモノが、新な存在として命を吹き返すということ。特に自分の手でアップサイクルしたモノは、より身近な存在になるようで、参加した皆さんの「作品」を手にしたときの笑顔が印象的でした。

モノは大切に使えば、人の暮らしに長く寄り添ってくれます。ところが、現在の日本ではモノと人との関係がアンバランスになっているのも事実。ソンベカフェで行われた「『アップサイクル』を学ぶトークイベント」によると、洋服ひとつ取っても無駄が多いのが現状だそう。2009年の経済産業省のデータによれば、約100万トン近くの衣料品全体の再使用率は25%程度に留まり、残りの約75万トンもの服は長く活用されることなく捨てられているのです。これは2001年の再使用率10%の実績からは進歩しているものの、まだまだ改善の余地があります。

 ソンベカフェで行われたIDEA R LAB 大月ヒロ子さんとパタゴニア日本支社環境プログラム・ディレクター篠健司さんによるトークイベント。アップサイクルのさまざまな事例が紹介された。

ソンベカフェで行われたIDEA R LAB 大月ヒロ子さんとパタゴニア日本支社環境プログラム・ディレクター篠健司さんによるトークイベント。アップサイクルのさまざまな事例が紹介された。

そんななかでモノとの関係性を回復するには、どうしたらいいのでしょうか? トークで篠健司さんが紹介された、アウトドアウェアメーカーのパタゴニアが提案している5つのステップが参考になりそうです。

1.購入するモノを厳選して点数を減らす 

2.壊れたモノを修理する 

3.リユースして何度も使う

4.使えなくなったモノは素材をリサイクルする

5.新しい価値を付け加えてアップサイクルする

パタゴニアではこの5つのステップ全てをケアできるサービスを整えていて、製品の寿命の最後まで責任を持つことをポリシーにしているそう。パタゴニアの製品はおもに衣料品ですが、他の全てのものを大切に使うためにも意識したいステップです。

今回の『クリーニングデイ』のテーマであるアップサイクルの考え方が広まれば、モノとの付き合い方はもっとクリエイティブになるはず!『クリーニングデイ』をオーガナイズする森下詩子さんは、このイベントを通じて、モノと対話する一日を過ごして欲しいと言います。

オーガナイザーの森下歌子さんは長年映画の宣伝配給に携わってきた。
オーガナイザーの森下詩子さんは長年映画の宣伝配給に携わってきた。

「私はフィンランドが大好きで、ここ5年毎年訪れています。そのなかでフィンランドの良さを日本に持ち帰りたいという思いが強くなり、私が長年携わっている映画の分野で日本に紹介すべき作品をずっと探していました。そしてとうとう365日のシンプルライフ』に出逢ったのです。フィンランドは常に幸福度ランキング上位で、シンプルライフの実践にかけては世界有数の国。DIYやリユース、リサイクルは当たり前です。そんなフィンランド人らしさが詰まっているこの映画は、モノと自分との対話がテーマ。『幸せになるために、人生で必要なものは何か?』と問いかけています。この映画の醍醐味は観るだけにとどまらず、問いを“自分ごと”としていくことにあります。ですから、同じくフィンランドの国民性の表れともいえるイベント、『クリーニングデイ』と併せて紹介することにしました。この作品がテーマにしているモノとの対話を、イベントで体験していただければ嬉しいです」

『365日のシンプルライフ』 ヘルシンキ在住・26歳のペトリは、彼女にフラれたことをきっかけに、モノで溢れ返った自分の部屋にウンザリする。ここには自分の幸せがないと感じたペトリは、自分の持ちモノ全てをリセットする”実験”を決意する。 8月16日 オーデトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
『365日のシンプルライフ』
ヘルシンキ在住・26歳のペトリは、ある日、ふとしたきっかけで、モノで溢れ返った自分の部屋を見つめなおすようになる。ここには自分の幸せがないと感じたペトリは、自分の持ちモノ全てをリセットする”実験”を決意する。
8月16日 オーデトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー

『クリーニングデイ』は元々フィンランドで2012年より年2回(5月4週目・8月最終週の土曜日)開催されているリサイクル・カルチャー・イベント。「リサイクルのハードルを下げる」「地域交流」を目的として、オフィシャルサイトに登録さえすれば、誰でもどこでもフリーマーケットを開くことができます。20138月の第4回は、フィンランド国内で4,200以上の場所で開催されたとのこと。日本では、クリーニングデイを “モノと対話する日”として、フリーマーケットだけでなく、物々交換会やモノを直すリペア会など、自分のサイズでできる“モノと対話する”活動が、日本全国に自生的に広がっていくことを目指しています。

次回の『クリーニングデイ』は8月30日。再びフィンランドと日本で同時開催されます。日本でもこれから広がりを見せそうなこのイベント、次回も注目です!

後編は映画『365日のシンプルライフ』について、森下さんへのインタビューをお届けします。

『クリーニングデイ・ジャパン』

次回2014年8月30日(土)のクリーニングデイ限定で、『365日のシンプルライフ』上映会を、全国どこででも開催できるとのこと(有料)。開催希望の方は、詳細をkinologueのサイトにてご確認下さい。