【YADOKARI 小屋部】「ほしい小屋のつくりかた。」 葉山”すこし高台ショップ”のガーデンシェッド

すこし高台ショップガーデンシェッド
いつかはほしい、自分の小屋。こだわりの小屋を持ちたいなら買うのも良いが、作るのもまた良し。でも実際どうやって作るの?
2015年夏、葉山の自宅で植物や雑貨のセレクトショップ「すこし高台ショップ」を営む橋口元徳さんの小屋作りをYADOKARI小屋部がお手伝いしました。

ガーデンシェッド(庭に置く物置)となる小屋を建てたいとイメージを具体的に詰めていた橋口さん。小屋部と一緒にどのようにして作り上げたのか、工程を中心にレポートします。
DIYの所作は知っていても、工程がよくわからない読者の方は必見の内容です。

すこし高台ショップとは

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「すこし高台ショップ」は、葉山在住のアーティストが手がけるニット小物やアクセサリー、ステーショナリーや雑貨などを販売している「自宅ショップ」(月一回オープン)。テラスには橋口さんが仕入れ販売をしている個性的な多肉植物が、ずらりと並んでいます。

すこし高台ショップのHPはこちら ⇒ http://sukoshi-takadai.com/

すこし高台ショップの商品
橋口さん宅は、築40年ほどの瓦葺の平屋の家屋。商品がこの旧邸の空間にしっとりと調和している様は、ご夫婦の穏やかな「人柄」や心地の良い「暮らし」があることを静かに伝えています。この場に集うことを楽しみとして来店するお客さんも多いのだとか。

シンボルとなる小屋が欲しかった

こうした「場」をとても大切にしている橋口さんは、お客さま用のガーデンテーブルを置くことが多い中庭の隅に、庭の植物を飾るガーデンシェッドとして、時に家族連れ客の子どもが遊ぶキッズハウスとして、場の象徴となる小屋が欲しいとずっと考えていました。

橋口さんは小屋の参考画像を集めて理想のイメージを探しつつ、設置したい位置から必要サイズを割り出すなどして、ほしい小屋の形を練りつづけていました。そうしてでできたのが下記の図面です。

図面
橋口さんが作った図面。基本の寸法と希望のデザインが書かれている。

「最初は自分で作るつもりでした。でも小屋作りの経験はゼロだったので、着想から2年と時が流れてしまっていました。そんな折に、YADOKARI小屋部を知って」と橋口さん。何事にも自分の手を動かすタイプですが、小屋は少しハードルが高かった。そこでYADOKARI小屋部を知り、気軽な気持ちで相談をもちかけたのでした。

小屋部始動。

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今回の設計・現場指導を務めていただいたのは、すでにいくつもの小屋の設計/制作を手がけているチョウハシトオルさん。現地調査を兼ねた打ち合わせを橋口さん宅で行い、プランを練ります。「橋口さんから完成サイズや形の希望を具体的にいただいたので、こちらは材を選んで寸法を出しつつ、構造上の調整をして設計書を起こしました。具体的なイメージが施主さんに無いと、その相談から始まるので、今回はとてもスムーズでした」とチョウハシさん。
小屋の資材はホームセンターや町の材木店で調達。ガラス窓は古い建具を知人から譲り受けました。

YADOKARI小屋部の現場は、現場監督さん+ボランティアメンバー+施主さんでチームを編成します。KADOKARIサポーターズグループでボランティアを募ったところ、今回も小屋作りに関心のあるメンバーが集まってくれました。さぁ、小屋作りがスタートします。

土台づくり

建物の設置面の強度と水平を確保するためにコンクリートで土台を作ります。土台づくりは多様な手法がありますが、ここではキューブ状のコンクリートブロック(ピンコロ)を使いました。小屋を地面に直置きすると底面が腐食するおそれがあるため、ピンコロを使って少し高床に。

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↑ ピンクの糸(水糸)で小屋の四辺を取り、さらに水平を計測して高さを設定します(この作業を「基準出し」と言います)。このように床面の位置を決定したら四隅に穴を掘り、砂利、セメントの順に流し入れ、水平を確認しながらピンコロをピンク糸の高さまで沈め、固定させます。

土台作り
土台が完成

パネル作り

床、壁、屋根のパネルを作っていきます。こちらは床のパネルを裏から見たところ。表面はベニヤ板を貼ります。強度との兼ね合いで裏面に補強の材を数本渡らせます。
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↓ パネル用木材は、ホームセンターで購入した全長4メートルの材料を電動丸ノコでその場でカット(写真左上)。切り出した材を設計図通りに組み立てフレームを作ります(写真右上:屋根、左下:後面の壁、右下:前後の屋根下の三角部分)。寸法を誤ると接合時にズレが生じるため、作業は丁寧に進めます。
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組み立て・接合

完成したパネルを一気に組み立てていきます。面を接合するごとに小屋の輪郭が現れてくるこの工程は、見ていてとてもワクワクする時です。パネルが綺麗に作られていたので、作業はとてもスムーズでした。
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屋根

床と壁が出来たら、次は屋根を取り付けます。
↓ 屋根の両翼となるフレームを接合し(左上)、壁の上部に配置(右上)。屋根フレームを固定し(左下)、表面にベニアの板を貼ったあとさらに防水シートを貼ります(右下)。この黒いシートは合成繊維不織布にアスファルトを含ませてコーティングした屋根専用防水シート。一般の住宅建築でも使われています。
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屋根の外装は、譲り受けた古いトタンを使用。トタンに防腐剤およびペンキを塗って仕上げ、取り付けました。

外装・仕上げ

外装から仕上げは細かな仕事が続きます。外壁材をペンキで塗って、外壁を貼り、ドア、窓などの建具の取り付けを行います。外壁のブルー、窓枠のオフホワイトなどの色はすべて橋口さんが選んだもの。特に外壁のブルーはペンキ数色を調合して作ったこだわりの色です。
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↓ 壁用の防水シートを壁面すべてに貼り、室内に雨が染み入ることを防ぎます(左上)。その後、外装板を電動ドライバーでバシバシ打ち付けます(右上)。譲り受けた窓の建具に枠を取り付け、引き違いの溝も手作りで(左下)。前面のガラス窓、ドア等をつけて完成です(右下)。
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完成

工程の最終日。完成は日が暮れてしまいました。完成後、施主の橋口さんから嬉しい一言。
「理想通りです!」

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小屋作りの経験を経て

すこし高台ショップの小屋は、土日を使った計4日間の期間で、チョウハシさんと1日に3~4人のボランティアメンバー+施主の橋口さんで完成しました。

初めてDIYの作業をするボランティアメンバーも、周囲のメンバーから説明を受け、実践しながら憶えていきます。一つできることが増えると、新しい作業に挑戦したくなり、どんどん夢中になっていきます。初めて会った仲間と作業を共にするなかで打ち解けていくのも楽しさの一つ。いろんな人の話を聞いて自分の世界が広がることもありました。

また、ボランティアを通してスキルを蓄積していくメンバーもいます。経験を増やせば道具の使い方の一つ一つが熟練し、精度をあげることができます。そのため今回、良いメジャーの選び方や正しい寸法の取り方といったレクチャーも盛り込まれました。

施主の橋口さんも、4日間通しで制作に関わることで新しいものづくりの世界が開けてきたとのこと。作りたいことが増え、小屋の内装を手掛ける計画に加えて「ウッドデッキも作りたい」とさらなる構想が浮かんだようです。

メンバー
写真のお二人は、小屋部の活動に何度も足を運んでいただいている村上健太さんと宍戸幸大さん。締め付けのないゆったりとした服+帽子や手袋で危険防止+道具やビスが入った腰袋など作業に集中できるスタイル。

小屋って専門家がいなくちゃダメなのか

今回はツーバイフォー工法を応用した作り方でしたが、小屋の作り方には規定はなく自由に作ればいいとチョウハシさんは言います。
「確かに強度とかあったほうがいいけれど、それよりも作りたい人の思いや考えが詰まった作り方でできるのもいいと思います。プロが作ると、完成度は高いが、隙のないものになってしまう。どこか曲がっているくらいが味があってちょうどいい。」

しかし自由に作るといっても、なんの情報も持たないままでは一歩を歩みだすことも難しいものです。この記事の工程紹介が、これから小屋をつくる計画を立てる方々の参考になれば幸いです。

YADOKARI小屋部より

すべてをひとりでこなすのもよいけれど、今回の橋口さんのように人と一緒に作ったり、アドバイスをもらって作るのも賢い方法です。
そんなときには、YADOKARI小屋部に声をかけてみてください。
YADOKARI小屋部では、全国の「作りたい人」と「作れる人」と「作る場所」をつなぐ活動をしています。

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▼ YADOKARI小屋部についてのお問い合わせ先
⇒yadokari.mobi@gmail.com

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(文=ライター・ハシグチチカコ)