
イラスト:千代田彩華
好きなことをやって、「ありがとう」と言われる。
そんなささやかな夢を、叶える小屋がある。
ほしいのは小屋そのものより、
出会いや、おもてなしの機会なのかもしれない。
人と出会う小屋
小屋は人と出会い、交流する場になる。
まず、小屋のかわいらしい姿が、人を惹き付ける。

ペットの犬をモチーフにしたコーヒースタンド。子どもたちに人気があり、似たような犬を飼う人にも親しんでもらっているという
自分が楽しいことを、集まってきた人に楽しんでもらえるようにする。
本が好きなら、移動本屋も良い。
前回記事で紹介した庭の音楽室も、玄関を開いて人を招けばコンサートステージだ。
人を集めて、ワークショップを開くこともできる。

味噌や醤油を製造する五味醤油(甲府市)は、富士山のような形の小屋で味噌作りワークショップを開いている
ちょうどよいサイズ感と、機動力
移動力を備えておけば、よりたくさんの人と触れ合える。
工夫次第で移動力に加え、機能性も兼ね備えられる。
小さく商売を始めるなら、軽トラックくらいのサイズも良さそうだ。

軽トラックを改造してつくったコーヒースタンド
キッチンカーも、いろいろなところで見かけるようになった。

イベントで見かけたビアスタンドとドイツ家庭料理店。店主は、飲食を通じたふれあいを副業として楽しんでいた
屋台や自転車も
厳密な小屋ではないが、簡易的な「屋台」も選択肢になる。
ダンボールの”屋台”でも「コミュニケーションツール」や「遊び道具」としての役割を果たす。
「まずは小さくても、自分の店を持ちたい」という夢を叶えるのは、こんな形からなのかもしれない。
「ありがとう」を交わす小屋
自分の好きな世界に、人を招いてみる。
得意なことを、誰かのためにやってみる。
お店を、小さく始めてみる。
そうしてホスピタリティを発揮し、誰かに「ありがとう」と言われる。
小屋は、そんな夢を叶えるための、ちょうどよいツールになる。
(了)
【都市科学メモ】 |
小屋の魅力
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人と交流するツールになる |
生きる特性
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外観の訴求力・発信力、開放性、移動能力、小さく始められる気軽さ |
結果(得られるもの)
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交流の場と機会、小さな商売・収入、「ありがとう」、笑顔 |
手段、方法、プロセスなど
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交流のテーマや方法を考える
小屋はあくまでツール。何をテーマに、どんな交流をしたいのかが大切だ。趣味なのか、商売なのか、あるいはボランティアなのか。自分が好きなことをベースに考えたい。それが決まれば、どんな小屋が良いのか、屋台でも良いのか、移動能力は必要なのか、などの機能面を検討しやすくなる。 |
市販品を活用する
目的に合った「タイニーハウス」や「屋台」を購入して、自分なりのアレンジを加えていくこともできる。下記は参考サイト
TINYHOUSE ORCHESTRA
WOODPRO BASE Web Store |
とにかくやってみる
「交流すること」「小商いすること」が大事なのであれば、まずはできることからやってみよう。地元のフリーマーケットに出店したり、自転車の荷台に箱をひとつ載せたりするだけで、ひとまず実現できるかもしれない。そして楽しかったら「小屋」への発展を考えれば良い。 |
【Theory and Feeling(研究後記)】 |
ぼくが欲しいのは、この「交流」目的のモバイルハウス。望遠鏡を積んでおいて天体観測会をやったり、パソコンの映像を壁に投影して「バーチャル宇宙旅行実演」や科学ワークショップやったりしたいんですよね(筆者はもともと天文少年で、以前は科学館に務めてました)。
コーヒーやビールを楽しみながら交流して、そのまま眠れる場所になるような。

こんな感じのことを、あちらこちらでできるようにしたい
ただ、1人でやるのはちょっと寂しい気がするので、仲間を探したいです。(たに) |
2018.11.27 イベント開催!
こちらの連載と連動して、都市を科学する〜小屋編〜「第1回:人はなぜ小屋に惹かれるのか?〜まちの中の小さな居場所を紐解く〜」|オンデザイン×YADOKARIを2018.11.27 イベント開催します。詳細は以下より。

「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。