旅行とはひと味違う!暮らしに飛び込むWorkaway。-現地の人と過ごして見えたデンマーク-
気になる国に滞在したい時、どのような方法を思い浮かべるだろう。旅行に行く?留学やワーキングホリデーに挑戦する?
新たな選択肢として、“Workaway(ワークアウェイ)”という手段がある。滞在先のお手伝いをする代わりに、住む場所と食事を提供してもらうことができるのだ。手軽に憧れの場所に滞在できると人気が高まっているという。
家族の一員として共に暮らすと、外からは気づくことができないその地域のリアルが見えてくる。今回は、デンマーク滞在中にワークアウェイを経験したミオさんの話から、誰かの暮らしに飛び込んで得た気づきをシェアしていきたい。
本当に幸せな国なのか?デンマークの家庭で見た教育のカタチ
デンマークのフォルケホイスコーレ(※)を卒業後、ミオさんは一つ目のワークアウェイ先に向かった。ドイツとの国境付近にある、セナボーという街だ。
滞在の目的は、デンマークのリアルな家庭の様子を知ること。フォルケホイスコーレで充実した教育・福祉制度を知り、デンマークがすごく幸せな国に思えたそうだ。だからこそ、そのイメージは本当なのかと探究することにした。
※フォルケホイスコーレ:北欧独自の教育期間。17.5歳以上であれば、誰でも入学できる。
試験や成績が一切なく、共同生活を通して民主主義的思考を育てること。興味のある学びに取り組み、知の欲求を満たす場であることが特徴だ。
滞在先は、10歳〜18歳までの4人の子どもがいる家族だった。子どもたちは学校には通わず、両親がホームスクールとして勉強を教えていたという。ミオさんもホストマザーと協力しながら、日本語を教えることになった。
デンマークでは、大学院まで無料。個人の興味にあった進路選択がしやすく、充実した教育制度だと言える。それにも関わらず、ホームスクールを選択したのはなぜなのか。
理由は大きく二つ。両親の経験上、学校ではいじめが多くあったこと。そして、長女が少しだけ学校に通った際、コロナ期間だったこともあり生活面での制限が厳しかったこと。
集団生活を送る上で仕方ないと割り切る人も多いと思うが、両親はより自由に学ぶことができるようホームスクールを選択した。
朝食中に率先して新聞を読むのは子どもたち。カードゲームで世界の著名人や政治家を学び、社会への関心が高い。家族で食事をする際に、議論が白熱することもあったそうだ。
また、幼い頃から英語で映画を観ていたため、全員が流暢に英語を話すことができた。
日々の工夫により、学校教育以上ともいえる知識と探究心が育まれた子どもたち。学歴主義ではなく、個々の能力が大切にされるデンマークならではの教育のカタチかもしれない。
異なる暮らしの中で知る、大切にしたい価値観
誰かと暮らすことは時に大変。文化や言語が違う相手となら尚更だ。
ワークアウェイを通して、ミオさんは自らが心地よく生きるために欠かせないことを見つけた。それは、コミュニティの一員だと感じられることだ。結びつきが深い家族の中に溶け込むことは難しく、孤独感が付き纏ったという。
一番の壁となったのは、やはり言語だった。前述したデンマークの滞在先では、家族全員が英語で話そうと努力してくれたものの、深い話になればなるほどデンマーク語がメインに。精神的な繋がりをつくることは難しかった。
一緒に暮らしながらも輪の中に入りきれない感覚は、すごく辛いことに気づいたそうだ。
また、スイスで1ヶ月間滞在した際は、一緒に暮らすホストマザーの友人がフランス語しか話せず、コミュニケーションが上手くいかなかった。
それでも、お手伝い後にはビーチや湖に連れ出してくれた彼女。もっと話すことができたらお互いの距離が縮まったかもしれないと、ミオさんは残念そうに語った。
海外に行かずとも日本で。受け入れることで新たな気づきを
実は、日本に滞在したい外国人にもワークアウェイは人気だ。日本各地の家庭が、公式サイトで受け入れ登録をしている。
滞在する人にお手伝いしてもらいたいことは様々だ。自宅のDIY、畑づくり、子どもの遊び相手や英語を教えてほしいなど。あなたもお願いしたいことの一つや二つ、思い浮かぶのではないだろうか。
そして、家族のように共に過ごすのも大事な時間。お気に入りの場所、はたまた行ったことがないところに一緒に足を運んでみる。いつもの料理を振る舞うと、新鮮な反応が返ってくることに驚きや嬉しさを感じるかもしれない。
誰かの日常は他の人にとってはきっと発見の連続。他者と暮らしを交わらせることで、新たな気づきが見えてくるのでは?
【参考】