実践型まちづくりワークショップ「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-」イベント実行レポート

実践型まちづくりワークショップ「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-」最終発表会レポート

2023年3月2日から20日の19日間と4月22日にかけて、東急田園都市線たまプラーザ駅とあざみ野駅の周辺を舞台に開催される実践型まちづくりワークショップ「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-(運営会社:東急株式会社、協力:YADOKARI株式会社)」。

第1回目となる今回、参加するのは大学生・大学院生です。2つのチームに分かれてたまプラーザ駅周辺とあざみ野駅周辺を対象に「住民・来訪者、だれもが楽しくなる、生活者目線の場づくりを考えよう」というテーマのもと、「まちにあったらいいモノ・コト」を考えていきます。
19日間のアイデア計画フェーズを経て、ついに4月22日(土)のアイデア実行フェーズへ。
東急百貨店たまプラーザ店屋上のCOMMON FIELDで開催されたイベントの模様をレポートします。

■早朝から準備がスタート!
10時のイベントスタートを前に、準備に追われているメンバーたち。
この日は6時から集まっていたと言います。
チームたぬき

チームpal

備品をチェックしたり、来てくださったお客様に配るアイテムを整理したり……。設営も、いざ始めてみると思っていた通りにはいかないことも多いようです。急きょ、配置を変えるなどして対応する姿も見られました。
また、この日は少し風が強かったこともあり、物が倒れないように補強も。そうしているうちにあっという間にオープン時間です!

スタート前には、両チーム集まってごあいさつ。
このイベントのためにあらゆる準備を重ねてきたメンバーたち。「お客さんはもちろん、自分たちも楽しもう!」と声を掛け合い、気合いを入れます。

■謎解きでまちについて知る
やはり気になるのはイベントにお客様が来てくださるかどうか。この日は気温がグッと下がり、肌寒かったことに加え、あいにくの曇り空。
スタート前は不安そうにしているメンバーもいましたが、杞憂だったよう。開始直後から続々と来場してくださる方が。

チームpalの企画は謎解きです。
たまプラーザのまちを巡り、まちに関する謎を解いていくというもの。駅近くの地域をまるっと使っています。

まずは、今回の謎解きのルールについて説明が行われます。

最初は、少し緊張している様子が見られたメンバーも。でも、回数を重ねていくうちにどんどんとスムーズに進んでいきます。
スタートのタイミングでは少し混雑もありましたが、続々とみなさん謎を解くためにまちへと出かけていきます。
持ち物は今回の謎解きに必須のマップ。クリアファイルのデザインもメンバーが手がけたものだそうです。

「謎」については、謎解きイベントの開催経験があるというメンバーが作成、それを全員でブラッシュアップしていったのだそう。
東急百貨店から街中に出ると、ポイントとなる場所にはメンバーが待機。
謎解きの参加者のサポートを行います。

写真左がメンバー。ポイントで、参加者をサポート

子どもも大人も一緒になって謎解きに取り組みます。

謎解きのルートは、何か特別な場所、というわけではなく、きっと住民のみなさんが毎日のように見ているに違いないたまプラーザの街並みです。駅前だったり、団地に通じる道路だったり、小学校のそばだったり。でも、改めて歩いてみると、新しい発見もあるかも?

そんな中でハイライトとなる場所が美しが丘小学校下にある100段階段です。

100段階段を目にした瞬間に、「わあ~!」と歓声をあげる方も多かったのだそう。
100段階段は一番標高が低い49メートルから一番高い83メートルまで続いています。階段や坂の多いまちを象徴する場所でもあり、まちでは「100段階段プロジェクト」なども発足されています。
この坂や階段の多さはチームpalがこの企画のアイディアを思いつくきっかけになった要素でもあります。

そして、100段階段そばでも問題に取り組む方の姿が。

謎解き企画は問題を解きつつ、まちを歩いて約1時間程度の行程です。お子さんがいらっしゃる場合は、もう少しかかっていたようですが、その分、まちを満喫していただけたのではないでしょうか。
無事にゴールに到着した方には、この日巡った場所の写真を使った缶バッジをプレゼント。もちろん、この写真もメンバーが撮影したものです。

メンバーがたまプラーザの坂や階段の景色を撮影し作成したオリジナル缶バッジ

 

お友だち同士や、きょうだいで参加されていた方の中は同じ写真の缶バッジを選んでお揃いに。まちならではのグッズでお揃いにできるなんて素敵ですね。

また、会場には「推しスポットMAP」と題されたたまプラーザ周辺の大きな白地図が展示されていました。

イベント参加者にはこのマップに書き込んだり、シールを貼ったり自分のお気に入りのスポットを紹介してもらいます。
この日、謎解きで見つけた新たな推しスポットを書き込んでいる人も。

イベントが終了するころにはびっしりと!
ひとつひとつ、推しスポットを巡っていったら、すっかりまちに詳しくなれそうですね。

プロジェクトについての感想を聞いてみると、まずは「想像していたよりもたくさんの方が来てくださってよかったです」とにっこり。

「推しスポットマップの前で話しかけたら、実際にオススメの場所を教えていただけたりしたのも嬉しかったですね。
謎解き自体は、想定よりも準備に時間がかかったのと、大変だったのでやっと終わった! という印象の方も多かったです。でも、ゴールしたときに話かけてくださった方の中に、美しが丘小学校の教員の方がいらして。『今度たまプラーザでまちのかるたを作ろうと思っているんですけど、一緒にやりませんか』というお話もいただいて嬉しかったです」

実は今日久しぶりにオフラインで全員が揃ったというチームpal。
「みんな違う大学なので、新学期が始まるとなかなか集まれなかったり、どうしてもオンライン上でのやりとりが多かったので対面で会えないと厳しいかな、と思うことがありました。でも、どうにか賑やかに開催できてよかったです」

 

■すごろくを通してまちの人と交流
もちろんチームたぬきの企画もイベントスタート時から大賑わい!
こちらの企画はすごろくです。まちの地図をすごろくのボードとして使用します。

ボードはメンバーの手作り。
すごろくのマスは9種類のジャンルごとに絵柄が分かれています。マスにはクイズが設定されており、正解するとパズルのピースをゲット。全問正解すると、パズルが揃い1枚の絵が完成する……というルールです。

各グループにはメンバーがひとりずつゲームマスターとして付き、一緒にすごろくを行っていきます。
すごろくは複数用意されていましたが、スタートからあっというまに満席状態に。

芝生に座って遊ぶすごろく、気分もよさそうです。

実はチームたぬき、事前にCOMMON FIELDで実験的にプロトタイプのすごろくを行っており、場の雰囲気を掴んでいたのだそう。その場にいたお子さんたちも巻き込んで遊んでみたのだとか。
そんな体験もあるからなのでしょうか、落ち着いてお客様にも対応していました。

もうひとつの見どころは、COMMON FIELDに配置された12枚のボード。

ボードにはたまプラーザの施設や活動をの紹介が掲載されております。
そしてボードの横にはカードが用意されており、こちらはTake Free。来場した方が自由に手に取り、自分だけのまちの冊子を作ることができます。
詳細に説明が書かれている大人用と、カードゲームに見立てて書かれた子ども用が用意されており、親子で収集する姿も見られました。

ただ見るだけではなく、「集める」がプラスされるとまた楽しみ方も変わってきますよね。
たまたまCOMMON FIELDに訪れた方が、すごろくには参加しなくてもパネルはじっくりと見ている……という姿が多く見受けられました。

そして、まちの人からたまプラーザの歴史についてメンバーとお話をする……なんていう場面も! ちなみに、こちらのご夫婦はたまプラーザに住んで約50年なんだそう。カードを見て、むかしのたまプラーザについて思い出し、そのお話をメンバーが聞く……という、今回のイベントならではの光景も生まれていました。

ほかにも、まちの人と交流している場面が多く見受けられたチームたぬき。

フェイスシールを用意しており、それをお子さんのお顔にペタリ。
嬉しそうに貼ってもらっている姿が印象的でした。こちらはイベント終了のぎりぎりまでやってもらいたがるお子さんがいて大賑わいでした。

イベントについてはチームたぬきも「想像していたよりも来てくださったのがまず嬉しいです」とホッとした様子を見せます。
「お子さんがクイズを楽しんでくれていたり、大人の方もカードを手に取ってくださってて。その中で住民の方と会話が生まれたのもよかったな、と思います」

準備中に大変だったことについてお聞きすると「それぞれ自分の意見をちゃんと持っててそれを言葉に出せる人たちだったので、ぶつかり合いながら、遠回りをしてやっと形になりました」との回答が。
また、チームメイトのモチベーションを2か月保ち続けるのも大変だったと言います。

「たまプラーザに思い入れのある人と初めて来た人のすり合わせや同じ目標にどうやって向いていくか、というところが難しかったですね。
あと、紹介ボードの内容は、まちの方にお話を聞きに行って作ったんですけど、その人が伝えたいことをちゃんと表現できるように意識しました。子どもたちはカードを見てもまだ理解はできないとは思うんですけど、大人になったときに何かのきっかけで思い出してもらえたらいいな、と思います」

最後は、思い入れのあるアイテムを手にして全員で記念写真を。

約2か月間、お疲れさまでした!

 

■「DELight(ディライト)プロジェクト-ちょっといいミライをこのまちで-」を終えて

無事にイベント終了後、プロジェクトリーダーである東急株式会社の金井純平さんにお話を伺いました。

--イベントを終えてみて。
学生主体で僕ら事務局はサポートという形で推進してきましたが、想定していた以上にアクティブに活動してくれたと思います。
最初は単純にイベントを開催するというところに意識を取られがちでしたが、、イベントが盛り上がるだけではなく、どういった目的で実行するのかテーマをしっかりと構築してくれたのがよかったですね。

--「DELightプロジェクト」に至るまでの経緯について。
もともと郊外をテーマに進めている「nexus(ネクサス)構想」という新しいまちづくり構想がありまして、その中の若年層への施策ということでスタートしました。
郊外では人口減少と高齢化が進み、若者はどんどんいなくなっていくことが課題としてあります。そこで、目的としているのが若年層の関係人口を作っていくこと。
今すぐにたまプラーザに住んでもらうのは賃料が高いので厳しいと思うのですが、関係人口を作っていくことで将来的に住むために訪れてくれたら、ということがひとつの側面としてあります。
もうひとつ、nexus構想では生活者起点のまちづくりを掲げています。その生活者起点という点で、学生がまちづくりに関わって起こしていく活動自体をどんどん増やしていきたいと考えているんです。若者がまちを変えるきっかけになるのではないか、と考えているので、そういう側面でも学生が計画から実行までできるような機会が欲しいなと思い、開催した次第です。

--第1回で印象的だったこと
頭でっかちにまちを知ってもらう意識の高いイベントにならず、参加者の裾野を広げようと楽しみながらいつの間にかまちを知っていくという体験を試行錯誤していたのが印象的でしたね。
また、地域で既に活動されている人にも積極的に話を聞きに行っていました。少し地域に寄りすぎて奇抜さや学生らしい突飛さが若干弱まったかなとは思いますが、地域に入り込んで学んでいくうちに、たまプラーザで活動している人たちを大切にするまちにしたいと考えるに至ったんだな、と思います。

--今後の展開について
ひとつは、今回参加してくれた学生たちとの繋がりを活かしていくことです。。まちづくりの関心が高まった、まちへの愛着が生まれたとメンバーのみなさんが言ってくれていますし、地域のいろいろ方に話を聞きに行ったおかげもあって、「今後ぜひ学生たちと関わって活動したい」というオファーを多数いただいています。地域の活動やイベントに学生たちを巻き込んでいって、一緒にまちづくりができたら。
もうひとつが第2回のDELightプロジェクトをどのように進めていくか。初回ということで改善の余地はたくさんありますし、テーマや開催形態などについて考えているところです。ほかにも、「イベントが一日だけだと物足りない」という声はワークショップ中の早いうちから学生から挙がっていたので、イベント開催よりもっとまちづくりコミットできそうな活動をワークショップの題材に据えて、次回は募集できればと思っています。