「コレクティブハウス」×「シェアリング」で掴む新しい暮らしと未来は?
今や日本でも一般的になりつつある「コレクティブハウス(集合住宅)」での共同生活。その多様性は世界でじわじわと広がってきている。
このコレクティブハウスの多様性に欠かせないのが「シェアリング(共有)」の概念。
「コレクティブハウス」×「シェアリング」
ここから生まれる新たなライフスタイルとはどんなものがあるのだろうか?
そしてどんな未来を手に入れられるのだろうか?
生きかたを、遊ぶ住まい「YADORESI」や、入居者のクリエイティブ最大化をコンセプトとする「ニューヤンキーノタムロバ」など、暮らしにまつわる個性豊かなシェアの在り方を探求しつづけているYADOKARI。今回は、世界の多様な「シェア」のカタチを紹介していく。
そもそも「コレクティブハウス」とは?
コレクティブハウス(集合住宅)は、1935年のスウェーデン・ストックホルムで「スヴェン・マルケリウス(1889-1972)」によって生まれた。
そして1960年代には、働く女性が子育てに不安なく暮らせるように利用されていった。
一緒に住む人たちと共同キッチンやダイニングをシェアし、お互いに助け合えるところがメリットになっていたのだ。
共有のキッチンやリビングしかないシェアハウスと違い、各部屋にもキッチンやリビング等の設備が備わっているコレクティブハウス。
プライベートも保持しつつ、必要な時に他の住人とコミュニケーションをとれるのが大きな特徴である。
実例3つから見る「コレクティブハウス」×「シェアリング」の形
コレクティブハウスのデザインや共有する施設は、環境、ニーズ、目的などによって変わるもの。
全く同じものは1つとしてない。
続いては3つの実例を用いて、どんなコレクティブハウスにどんな住民が集まり、どんなシェアリングをしているのかを見ていこう。
スラム街の再開発(インド)
インドのサンジャイ・ナガルは、約300家族が住むスラム街。
ネット環境のようなインフラやセキュリティ設備のない場所でしたが、その反面、住民同士の結束力が強い地域である。
このスラム街の再開発として作られたコレクティブハウスで焦点が当てられたのは、「コミュニティ」と「健康的空間」。
中庭、屋上庭園、広い廊下など、今までの住民にかけがえのないコミュニティを持続できるシェアリング空間がある。
また自然光や換気できる構造・デザインによって、スラム街では得られなかった健康的空間を実現しているのだ。
無理に高度かつ高性能なシステムにするのではなく、地域のカルチャーを活かしたこのデザイン性。
家族ごとにスペースや綺麗な水までも所有することが難しい生活水準を上げるために、「シェアリング」の概念を上手く利用した形なのである。
都市での共同生活(ノルウェー)
ノルウェーのスタヴァンゲルで造られたこのコレクティブハウスは、多様な年代の住民がコミュニティを持続しながら暮らせるデザインである。
核家族化が進む中、都市生活の中でもコミュニティをもって住民同士が支え合える暮らしにすることが目的であるこのコレクティブハウス。
どんな年代、性別でも暮らしやすいように、各部屋の構造は均一ではなく多様なタイプで設計されているのだ。
シェアリングできるのはキッチンやダイニングだけでなく、図書室やアトリウムなど自分のリズムで使える施設も多数。
プライベート空間と、住民だけで限定的にシェアできる公共施設があるのは、コレクティブハウスだからこそできる設計なのである。
多世代家族の共同生活(シンガポール)
コレクティブハウスは他人家族同士のためのものだけではない。
シンガポールでは、多世代の家族が将来的にも住んでいけるコレクティブハウスが造られている。
他人と暮らすコレクティブハウスではプライベート空間も重視されるが、家族で暮らすこのコレクティブハウスは視覚的な「安心」をも実現した。
共有のダイニング、ジム、図書室だけでなく各ベッドルームまでも、中央の庭園やプライベートプールの周りに配置。
どこからでも色んな場所に目が届く設計なのである。
プライベート空間も維持しながら、施設だけでなく視覚もシェアリングできるこの設計で、子供達や高齢の家族の様子もチェックできる。
「安心」にも焦点を当てたこのデザインも、新たなコレクティブハウスの形になっているのだ。
「限定的シェアリング」で多様性&安心ある暮らしと未来
コレクティブハウスでは、住民同士のコミュニティだけという「限定的シェアリング」によって、多様性と安心のある暮らしが手に入れられる。
ダイニングやキッチンは一般的な家庭にはあるが、実例にもあったような図書室、プライベートプールなどは個々で所有するのが難しいもの。
「子供たちだけでは遊びに行かせられない」
「祖父母だけでは何かあったら心配」
そんな家庭でも、住民しかいない、また敷地内であるという制限されたコミュニティで利用できるシェアリング空間は、安心で効率的なものなのではないだろうか。
シェアリングの概念は建築されたものにとどまらず、ビーチ、山、畑などの趣味や娯楽にも反映できるはず。
例えば「別荘のためのコレクティブハウス」。
ビーチサイドに大きい一軒の別荘、広いプライベートビーチを所有するのは金銭的に厳しいだろう。
しかし、複数の家族で各部屋を所有できるコレクティブハウスと、そこでシェアできるプライベートビーチを確保することは実現できるかもしれない。
夢ある多様性&安心ある暮らしと未来は、「コレクティブハウス」×「シェアリング」が叶えてくれるのではないだろうか。
【参照元】
東洋経済
HOUSING LAB
スラム街を再開発したコレクティブハウス(インド)
都市で共同生活できるコレクティブハウス(ノルウェー)
多世代で生活できるコレクティブハウス(シンガポール)
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