第10回:鳴子温泉で“伝統手法”の小屋づくり(3)〜組立前編〜|エコ・フレンドリー
小屋には個性がある。
小屋には地域性がある。
小屋には自由がある。
宮城県の東鳴子温泉の湯守の森で始まった板倉マイスター講習。1回目のチェーンソー講習、2回目の製材見学、刻み体験などを経て、最終回の今回は、いよいよ3坪の板倉の小屋を2日間で組立てます。その様子を、前編・後編の2回にわけてご紹介します。
日本の杉を活かす、板倉構法の小屋づくり
『板倉構法』とは古来より神社や米倉に使われてきた建築構法で、厚い板と角材のみを使用し、伝統的な継手手口や柱の溝に板を落としこんで壁を作る、日本の伝統建築構法の一つです。板倉マイスター講座では、板倉構法の第一人者、安藤邦廣先生(筑波大学名誉教授)に、建物の歴史や木材、伝統技術などについても教えていただきます。
小屋を設置する森は宮城県大崎市。麓には1000年の歴史を持つ鳴子温泉があり、古くから湯治場として栄えてきました。源泉は400本近くあり、日本国内にある11泉種のうち9泉種が楽しめる有数の温泉観光地。その温泉の水源でもある森を持続可能な方式で整備し、豊かな温泉と森を守っていく、それが今回の板倉マイスター講習の目的でもあります。
いよいよ待望の組立作業。意気揚々と現場に集まった私達の目の前に現れたのは大量の木材。
「3坪の小屋を作るには、贅沢すぎる量ですよね(笑)」と、製材をしてくださった株式会社くりこまくんえんの大場さん。
作業1日目は、大工さんが作っておいてくださった土台からスタート。
土台に柱を建て、柱の間に板を落として壁を作っていきます。この過程では金物や釘は使用しません。
「板倉構法は、木材の優れた特性である断熱性と調湿性を活かして、温湿度の安定した室内環境をつくります。古来より宝蔵や米蔵として使われ、板倉という名称も、それが主に倉として使われてきたことに由来します。
古来、板倉は重要な建築をつくる特別な構法で、一般庶民には手が届かないものでしたが、今は豊富にあるスギを用いることによって倉のように丈夫で長持ちする板倉の建物ができるようになりました。合板や石油化学製品を使わずに、構造から仕上げ材までスギでつくるので、室内環境汚染の心配もありません。また、構造が表しとなって見るようになっていることにより、木材に湿気がこもらず傷みにくく、手入れもしやすいのです」と安藤先生。
私たち受講生は「小屋と呼ぶには、あまりに立派すぎる造りだ(笑)」と話しながら作業をしました。1日目は屋根の下地材まで作業終わった所で終了。2日目に続きます!
板倉マイスター講習にご興味ある方は、ぜひ主催団体(NPO法人しんりん)へお問い合せください。
※後編は来週に公開予定です。
関連リンク
NPO法人しんりん(板倉マイスター講習主催団体)
一級建築事務所 株式会社 里山建築研究所
【写真協力】
清水信義・大林紅子・大沼旅館