選ぶワクワク、返すしあわせ。めぐる容器で楽しくテイクアウトしない?

私は、テイクアウトが好きだ。世界の中心でテイクアウトを叫ぶ。
いつもは見向きもしないポストに投函されるチラシの数々。だが、寿司や釜めしのテイクアウトのチラシは悔しいが部屋までの数十秒間食い入るように眺めてしまう。好きの尺度を示すのは難しいが、それくらいの「好き」だ。ちょっと豪華な料理を自宅で気軽に食べられることに高揚感を抱くのかもしれない。兎にも角にも、幼い頃からテイクアウトの晩飯には心が踊った。心だけでなく実際に舞っていた。

そう、今回のテーマは「テイクアウト」である。なかでもテイクアウトの際の「容器」に着目したい。多くの場合には自宅に到着後までの数分の為に使用され廃棄される「いのち短し」容器。そんな容器をリユース(再利用)するサービスを今回は紹介する。

この記事の主旨は新たな切り口からテイクアウトを楽しんでもらうこと

テイクアウト。それすなわち言わずもがな帰宅後に容器のゴミが生じることと同義である。事実、家庭ごみを丁寧に分解し内訳を分析するとなんとテイクアウト容器を含む「容器包装廃棄物」の割合は62%にのぼる。

参考:環境省「容器包装廃棄物の使用・輩出実態調査の概要(令和岩年度)」を基に作成

そして、資材別に見てもプラスチックの容器包装廃棄物が占める割合は全体の約半数の48%。とすると、容器包装廃棄物内におけるプラスチック素材の割合は77%にのぼる。

そう、つまりテイクアウト容器をリユースすることで、プラスチック容器包装のゴミを減らす。それは地球環境に優しい行動であり….更に近年よく耳にするSDGに貢献している…という趣旨の話題では今回はない。先にお断りしておくが、今回の話題ではなにも地球環境に優しく!と選択を無理強いするものでも、押し付けるものでは一切ない。とはいえ、テイクアウト容器を捨てる際にゴミが出ることに罪悪感を抱くか、という質問に対し約8割の人が抱くと回答しているのも事実。

参考:株式会社カマンによる独自調査を基に作成

環境へのメリットも最低限取り扱うが、主旨としては扱わない。
実際にそうしたサービスを体験を通じて感じた、心ときめく気持ち。新たなテイクアウトの体験をもたらす、リユース容器の利用。使命感や強制での利用ではなく、純粋に新たな切り口からテイクアウトを楽しむきっかけになればと考えて提案していく。

リユース容器先進国ドイツの事例

ビールにソーセージ。なんだか美食で溢れていそうなこの国では、テイクアウト容器を捨てずに再利用する「リユース」の文化がかなり根付いている。

その度合いで言えば、国家レベルである。今年の1月より一定規模以上の飲食店においてテイクアウトの際に容器の「リユース・使い捨て」の選択肢を設ける事が法律で義務付けられたそう。その際、リユース容器の使用時は使い捨ての場合よりも低価格となることが条件の中に含まれている。私達がエコバッグを使用した際にレジ袋代がかからない感覚と似ているだろうか。

そんなドイツのリユース容器のシステムでは主に
①デポジット式
②QRコード式
の2つの形式が存在する。

①デポジット式
このデポジット式の一例が「RECUP」と呼ばれるサービス。RECUPは飲料用のテイクアウトカップである。

https://recup.de/wp-content/uploads/2021/12/RECUPxREBOWL_regula%CC%88r_POS_Infopaket_Tresen7-12.20.19.jpg

購入の際にコーヒーの代金に加えて専用カップのデポジット(保証金)として1ユーロ支払ってテイクアウトする。日本での事例に置き換えると、ホテルのルームキー等を受け取る際に紛失防止用に支払う一時金と似ている。このデポジット金は、飲用後に提携店舗に返却すると返金される仕組みになっている。

ライター作成

しかし、デポジットを返却する際に飲食店側には手間がかかる。その手間を解消すべく新たに生まれたのがQR式のテイクアウト容器リユースサービスである。

②QRコード式

Revolveと呼ばれるサービスでは、専用のアプリが用いられる。デポジット金ではなく、リユース容器と提携店舗に添付されたQRコードを介した返却システムが確立している。

https://relevo.app/wp-content/uploads/2022/11/SAN_Schale_Becher_freigestellt-1024×638.png

商品購入後に、容器に添付されているQRコードをスキャンする。その後、14日以内に提携店舗にて容器を返却する。その際に店舗にあるQRコードを読み込む。すると専用アプリにて返却までにかかった日数に応じてポイントが加算される仕組みだ。

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紹介した2つの事例以外にも複数のリユースサービスが展開されているドイツ。日常の中にテイクアウト容器をリユースする意識が根付いていると言えそうだ。

リユース容器を使用することでの環境へのメリット

こうしたテイクアウト容器のリユースが環境に与えるメリットは大きく3つ。中でもRECUPの事例をお約束通り軽く紹介する。

ライター作成

製造〜使用時、使用後、廃棄時の3段階に分けて考えた。
まず製造〜使用時では、資源消費量が少ない。製造時、洗浄時にかなりの資源を消費するリユース容器だが、17回以上の使用で使い捨て容器製造時を下回ると言われている。また、使用可能回数の目安はおよそ1000回。自分が900人目か、はたまた6人目か。考えてしまいそうな数字だ。そして、最終的に廃棄する際もポリプロピレンと呼ばれる100%リサイクルできる素材を使用しているそうだ。使い捨て容器は紙コップであっても、カップ内側にプラスチックが使用されている事が多くリサイクルが難しいのだそう。

こうしてドイツでは浸透率の高いテイクアウト容器のリユース文化。返却の手間はあれど、サービス利用の結果美味しいものを少しお安く頂けてしまう。ついドイツ移住を考えてしまいそうになる。だがしかし、ドイツのような国家レベルではないものの、日本でも同様の仕組みは存在する。

日本にあるサービス「Megloo」って?

今回紹介する「Megloo」というサービス。現在は鎌倉周辺の利用がメインと限定的だが、複数の店舗で導入されている。仕組みは以下の図の通りだ。

ライター作成

Meglooではデポジット式ではない。上記のように、LINEの公式アカウントからサービスを開き、選択した店舗のメニューから注文を行う。その後、店舗にて保温性や密閉性の高い容器に注文の品を入れてもらう。店舗によっては、マイボトル割のようにMegloo割が実施されている店もある。

エコバッグやマイボトルのように、自分で容器を用意する手間はない。テイクアウトをしたいと思ったタイミングで手軽に始められるなんとも気軽に始められそうな仕組みだ。
その上、たかだか数分の為に使用されて捨てられていた容器を捨てずに済むというわけである。テイクアウトしたものをお皿に移し替え、ゴミ箱に入れてしまう時に感じるちょっとした罪悪感。あの感情に永遠の別れを告げられる、そう考えるとなんだか実践してみたくなる。

そんなわけで私も実際にMeglooユーザーとして体験してみた。

実際にMeglooを利用してみた

photo by writer

今回利用したのは鎌倉にある「ハッピーデリ」と呼ばれる惣菜店。手作りのデリやスイーツが並ぶ落ち着いたお店だ。

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店内のショーケースには10種類近くの惣菜が並ぶ。店の方にMegloo使用について尋ねたところ、Mサイズ(2deli+ライス)もしくはBig サイズ(3deli+ライス)から選べるという事であった。

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早速Mサイズを注文し、デリを選ぶ。選ぶときのワクワク感と、店主の方のおすすめをお聞きする時に生まれるちょっとした会話が嬉しかった。

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こうして無事に詰められた私のMegloo弁当。レジ部分にある、LINEのQRコードを読み取り、テイクアウト店舗名を選択し、Meglooの使用個数を送信したら終了である。

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にやけの止まらぬ帰り道。電車での帰宅であったが、自宅に着いて蓋を開けた時の密閉性には驚いた。

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液漏れはおろか、総菜が容器内で飛び散っている事も無かった。自分の持ち帰り技術だと自負したい気もするが恐らくそうではない。

photo by writer

今回選んだ野菜グリルとスパイシーチキンの組み合わせ。美味しそうな香りに早く食べたいと心が叫ぶ。使い捨て容器の場合、ズボラな性分が発動しない限り皿を移し替える手間が生じる。だが、Meglooではその必要はない。すぐに美味しいご飯を頂くことが出来たのであった。
(ちなみに特にグリル野菜は野菜の大きさも種類の多さも味付けも申し分なく美味しかった)

Meglooを利用して感じたメリット

こうして利用した結果、ユーザーとして感じた利用するメリットは大きく4つあった。

ライター作成

①注文時の「選ぶ」ワクワク感があること
②食事時に容器としての利用が可能であること
③容器を捨てる罪悪感とは無縁なこと
④返却時に店の方と会話が生まれること

まず、①の選ぶワクワク感。公式のLINEアカウント内で店舗を選ぶ。その後、メニューを選択するのだが複数ある店舗と美味しそうな写真付きのメニューにワクワク感が止まらなかった。まさに、テイクアウトのチラシを見てしまう感覚と同じだ。

②は帰宅後に皿を取り換える手間が省けることが有難かった。たかが数分だが、空腹時にはその時間すら惜しい。

③は今まで少なからず感じていたあの罪悪感。ものの数分の寿命しかなかった容器を捨てることはない。心置きなく食事を楽しめるというわけだ。

④の返却時の会話は思いがけなかった。食べた後に「ご馳走様」と直接伝える。店舗で飲食をする際も手渡しでお皿を下げることは少ない。だが、この仕組み下では可能だ。提携店舗であればどこでも返却可能だが、何となく店の方に直接美味しかった旨を伝えたくなって利用店舗に返却したくなる。店の方とのコミュニケーションもリユース容器のシステムならではだろう。

本来であれば長くともおよそ数十分で捨ててしまうテイクアウトの容器。リユースの仕組みを使えば、事前の準備も不要で美味しいグルメを自宅で味わえるという従来のテイクアウトに加えて、容器を捨てる罪悪感を抱かない。自ずと環境にも良い取り組みに参加して得した気分になり心置きなく食事を楽しむことが出来る。そして面倒とも思われがちな返却も、お店の方とちょっとしたコミュニケーションが生まれるメリットが生まれて良い時間となった。

新たなテイクアウト文化に底知れぬ可能性を感じた。今後、生活の中で新たな食の選択肢を増やすきっかけをもたらしてくれる仕組みになりそうだ。

(参考文献)
コロナ渦で増えたテイクアウト容器をシェアしてゴミを減らす仕組み、MEGLOO(メグルー)
テイクアウト容器ゴミを削減するリユース容器シェアリングサービス「Megloo(メグルー)」鎌倉で10月20日〜β版開始
急増するプラごみ 外出自粛が影響? 自治体に危機感
プラスチック容器からバガス容器に変更して、プラごみを削減。 | ジチタイワークス
【リユース容器が街を巡る!】ゴミが出ない気持ち良いテイクアウト文化を広めたい! – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
Recup
reCIRCLE
リターナブルカップや容器が生活に入り込む ドイツの「ネオ・エコロジー」の取り組み | 未来コトハジメ
Relevo
「ゴミが出ない文化を」テイクアウト容器を飲食店間で共有 登録はLINEで | 国内 | ABEMA TIMES
「デリバリーにリユース容器の選択肢を」渋谷区でリユース容器シェアリングサービスMeglooの実証実験を10月20日から開始
Megloo東京都実証実験@渋谷 with Wolt – Megloo(メグルー) | 使い捨て容器ゴミを削減するリユース容器シェアリングサービス
マイボトルも不要 ドイツの1万店舗以上で導入「デポジット制コーヒーカップ・RECUP」 | ELEMINIST(エレミニスト)
街中でリユース容器をシェアするサービスを始めました|Shingo Yoshizumi
ドイツのレストランなど 「リユース容器」の選択肢提示が義務に | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
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