家族は一つの形に留まらない。“オルタナティブファミリー”と多様化する家族のあり方
「家族」というと、どんな形態を思い浮かべますかー。
一般的に思い浮かべるような、父・母・子という家族の形は、もう古いかもしれません。現在、伝統的な家族観に囚われない家族を包括する概念に、 “オルタナティブファミリー”というものがあります。
オルタナティブファミリーとは、alternative(代替する)とfamily(家族)からなる言葉で、ひとり親やステップファミリー、LGBTの家族……など、従来の核家族の形をとらない家族のことを指します。
近年、そんな従来の型にはまらないオルタナティブファミリーの数が増加しています。
なぜ“オルタナティブファミリー”が増えている?
核家族以外の家族が増加している背景には、離婚率の上昇や女性の社会進出、また価値観の多様化などの変化があります。
家族の形態がどうであれ、最も重要なポイントは、子どもたちを安全で愛に満ちた環境で育てようと、またお互いを大事にしようと、努力することにあると言えるでしょう。そのために、オルタナティブファミリーに関する偏見や差別をなくし、社会的な支援や理解を促進することが必要とされています。
オルタナティブファミリーの例
ここでオルタナティブファミリーと呼ばれる、家族の例をいくつか紹介しましょう。
ひとり親家族
ひとり親家族は、子どもをひとりの親が育てる家族形態のことを指します。結婚やパートナーシップの解消、死別などの理由がありその数は増加。日本でも、1984年から2011年の間で母子世帯数は約1.7倍に、また父子世帯数は約1.3倍に増えている*と言われています。
また元から結婚せず、独身で子育てをする選択をするケースも広がっています。
ひとり親家族(特に母子世帯)は一般的な家族形態と比較し、経済的な困難を抱えるケースも多く、社会的な支援が必要とされています。
*参照 第2節 高齢者,ひとり親の状況 (内閣府男女共同参画局)
ステップファミリー(再婚家族)
ステップファミリーとは、離婚や再婚などによって、血縁関係のない親子がいる家族のことです。
どちらか片方の親に、元パートナーとの間に生まれた子どもがいる場合、両方の親にそれぞれ子どもがいる場合、また再婚後に生まれた子どもがいる場合……など、ステップファミリーの中でも、形態はさまざまです。
里親や養子縁組
子どもを育てられない親の代わりに、一時的に子どもを預かって養育する「里親」制度。一方「養子縁組」は民法に基づいて、法律上の親子関係を作る制度のことです。どちらも、血縁関係がない親子が家族として生活する形の一つです。
日本では、2020年に民法が改正され「特別養子縁組制度」の対象年齢が、6歳未満から15歳未満に引き上げられました。15~17歳でも一定の条件のもと、養子縁組が可能です。
虐待や経済的な事情など、さまざまな理由で親と暮らせない子どもの数は多くいます。また不妊問題やLGBTQなど家族形態の増加に伴い、里親や養子縁組の制度は今後も必要とされるでしょう。
LGBTQ家族
レズビアンやゲイカップルなどのLGBTQ家族も、近年増加している家族形態の一つです。「一夫一妻」の形態を取らないケースが多く、性別の役割を持たずに子どもを育てている場合が多いのが特徴です。
LGBTQ家族は、養子縁組や精子バンクの利用、代理出産などを通じて子どもを迎えることが可能です。
一方、2023年4月9日現在、日本では同性婚が法的に認められていない現状があります。複数の地方自治体でパートナーシップ制度が導入されていますが、法律的な効力はなく、制度化の検討が必要だと言えます。
共同育児(Co-Parenting)
Co-Parentingと呼ばれる共同育児は、元々両親が離婚した後も一緒に子育てをするケースに使われることが多かった呼び方です。近年では、コミュニティハウスで複数の家族が一緒に育児を行う場合、またLGBTコミュニティ内で共同育児を行う場合も増えてきています。
共同育児のメリットに、子育ての負担を分散できること、また想定される役割がないことが挙げられます。
多様化する家族のあり方
社会の変化に伴い、従来の家族形態が多様化している今。これらのオルタナティブファミリーが、より社会の中で生活をしやすくなるためには、新しい法律的な枠組みや支援制度が求められています。
また、オルタナティブファミリーは、伝統的な家族に対する価値観の変化をもたらすこともあります。例えば、レズビアンカップルや非法律婚カップルは、通常形態の家族(法律婚異性愛家族)と比較し、家事分担が平等であること*が明らかにされています。家族内での役割が、ジェンダーや法律契約の有無によって、変わってくるのです。
*参照 釜野 さおり,“Housework and lesbian couples in Japan: Division, negotiation and interpretation” ,2009
従来の「一夫一妻」の形にとらわれないオルタナティブファミリーには、このように家族の役割や家族そのものの “あり方”を問う側面もあります。
家族は、どうあるべきなのか。そもそも「家族」とは、何なのかー。
色々な家族の形がある方が、私たちは心豊かにいい暮らしを送っていけるかもしれませんね。
参考元:https://www.huffingtonpost.co.uk/sarah-garrett/what-is-an-alternative-fa_b_11564254.html
養子縁組について知ろう (法務省)
Co-parenting: How to make it work, tips, and more
法改正後に見えてきた特別養子縁組の新たな課題 (日本財団)