すこしずつ、発酵 インドネシアの大豆発酵食品、テンペ豆がアツい!
2月末に突然海鮮が食べたくなって茨城の大洗に1人旅をした。初のカウンター寿司を堪能したのち、帰りに寄った水戸でせっかくならば、と茨城土産を購入することにした。水戸といえば、納豆。
何を思ったか納豆を4種類も買ってしまった。切り干し大根が入ったそぼろ納豆に、藁納豆、天狗納豆など。とにかく食べ比べできるようにと購入した。
突如始まった納豆ライフ。まず初めての藁納豆開封に苦戦し、なかなか藁住まいから離れぬ大豆達をあやすのに一苦労をした。食べたいと思わせる見た目と、食べやすさは必ずしも比例しないと痛感した。
そんな前置きはさておき。今回のテーマはそう、『発酵食品』である。発酵食品の中でもなかなか聞き馴染みのないインドネシアの大豆発酵食品であるテンペ豆について今回は取り上げていく。
そもそも発酵食品って何がいい?
発酵食品といえど、そもそも発酵とは何か。
物質に微生物などの菌類が付着し、栄養素が分解されてうまみ成分が生成され、人間にとって有益なものになること、とされている。
なんだか小難しいが、私が買いだめをした納豆を例に挙げると、大豆に納豆菌が付着し、大豆に含まれるたんぱく質が分解されることで旨み成分であるアミノ酸、その他の栄養成分が発生した状態を示す。こうして見事に発酵を遂げた食品が発酵食品と定義される。
では、よく身体に良いと聞く発酵食品だが、そもそも発酵食品が「良い」とされる理由は何だろうか。そして、「良い」とされる発酵食品を体内に取り込むメリットとは何だろうか。発酵食品のメリットは大きく3つある。
①食品の保存性を上げる
②味わい・香りを良くする
③栄養価・健康調節機能を上げる
の3つである。発酵によって増えた微生物が、腐敗菌を寄せ付けなくなることで食品の保存可能期間が長くなるとされる。また、発酵過程で栄養素が分解されることで生まれたアミノ酸が「うま味」の元となり、味わいの良さに繋がる。
そして、今回特に注目したいメリットがこの3つ目の栄養価・健康調節機能の向上。ビタミン類などの栄養素を微生物が生成する他、健康調整機能を持つ物質が体内に吸収されやすくなる。例えば、納豆においては、納豆に含まれるビタミンB2は煮大豆の約10倍になる。また、美肌効果をもたらすイソフラボンが体内に吸収されやすく変換されるといった効果が期待される。こうしたメリットを踏まえて、発酵食品を摂取することで私達が期待できる効果は大きく5つある。
①若々しさの維持
②体内の吸収効果を上げる
③免疫力の向上
④代謝の向上
⑤ストレス軽減効果
の5つだ。老化の原因といわれる体内の活性酸素を抑えるのに有効な物質が豊富に含まれているため、若さの維持に役立つ。また、発酵過程で栄養素を分解するため、体内での分解が必要なく栄養を吸収しやすくなる。他にも発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌が腸内環境を整え、免疫力向上に役立つ他、代謝促進作用を持つビタミンB群も豊富に含む。さらに、味噌や納豆に含まれる天然アミノ酸の一種であるGABAには脳の興奮を鎮めストレス軽減を促す効果がある。
このように発酵食品そのもののメリットに加えて、摂取することによる健康促進効果はなかなか高い。いや、なかなかどころではなくかなり高そうだ。一攫千発酵とでもいうべきだろうか。
インドネシアの発酵食品テンペって?
このように摂取するメリットが多い発酵食品。日本で聞き馴染みのある発酵食品と言えば、納豆に味噌、ヨーグルトが挙げられる。
では、インドネシアに存在する大豆発酵食品「テンペ」をご存じだろうか。
大豆にテンペ菌をつけて発酵させた、伝統的な発酵食品の1つで「インドネシアの納豆」と呼ばれる事もあるそうだ。ただ、納豆とは異なり、バナナやハイビスカスの葉に付着しているカビの一種“テンペ菌”を付着させ発酵を促す。茹でた大豆をバナナの葉に包むことで、バナナの葉にあるテンペ菌の働きで発酵が進む。結果、テンペが出来上がる。数百年〜数千年前にインドネシアで生まれたとされるテンペ。
宗教上の理由で肉を食べない人が多いことや、肉が高価であるとされるこの地域では、肉の代替品としてテンペが食べられることが多いそう。また、各国において大豆由来の食品であることからベジタリアンやヴィーガンによって料理に取り入れられることが多いそう。栄養面ではビタミンB1や、タンパク質、食物繊維が豊富である。そして大豆由来のイソフラボンがコレステロール値を下げるなど、健康促進にも効果が期待できる。
クセの少ない味わいと納豆に近い大豆のほっくりとした食感が特徴のテンペ。調理法は、生食も可能なほか、揚げる・炒める・煮るなどあらゆるジャンルに適している。東南アジア一帯では炒め物や煮物、揚げ物に使われることが一般的だそうだ。
私は今回、素揚げにして、生姜醤油といりごまをかけるシンプルな調理方法を試したが、カリッとした素揚げ感と中に残るホックリ感が“肉の代替”と妥協を感じさせる味わいではなかった。この、調理方法のアレンジのしやすさと食べ応えある食感を活かしてテンペを暮らしに取り入れるヒントを探ってみようと思う。
テンペを暮らしに取り入れるヒント「ナット―ジャネーゼ」
健康・美容でかなりの威力を発揮するテンペ。しかし、そのネーミングはなかなか馴染みがない。納豆とは全く別物でありながら食感や味わいはくさみを抑えた納豆に近い風味。おそらく一度食べれば、納豆よりもクセの少ない納豆として好む方も多そうな予感がする。
こうした状況下で、テンペの存在に詳しくない、あるいは知らない人に、手にとってもらいやすい存在になってほしいと株式会社hakko projectによって「ナット―ジャネーゼ」は開発された。通常のテンペと同様に主原料は大豆。テンペ菌と少量の米粉から成る。全て国産原料からなる植物性食材は不使用の食品である。また、栄養面でもたんぱく質や食物繊維が豊富だ。
インドネシア現地のテンペよりもさらに癖のない味わいで作られているナット―ジャネーゼ。まず生で味わってみたが、大豆の風味が心地よく鼻に抜ける香りと柔らかいホクホクした食感が美味しかった。ただ、納豆が苦手な方であれば若干ある発酵特有のくさみを嫌に思う可能性があるので要注意だ。肉の代替とされると聞き、酢豚ならぬ酢ナット―ジャネーゼを作ってみた。(食材を揚げてはいないので正確には甘酢炒めのナット―ジャネーゼverだが)刻んだ野菜とナット―ジャネーゼに片栗粉をまぶし、醤油や味醂で味付けをして炒める。手軽にできる調理法である。
酢ナット―ジャネーゼの感想は、まずナット―ジャネーゼ自体が存在感がある。これは豚肉の座をまんまと奪っていると個人的に感じた。サイコロ上に刻み、食感がでるようにしたのだがかなり食べ応えがあって満足感があった。また、ナット―ジャネーゼ自体がクセが少ない味わいであるため、醤油や味醂・お酢の味わいとよく絡み美味しかった。よっ、料理上手と自分を褒めたい気持ち…。ではなく、これほどまでに汎用性の高い新たな発酵食品があるのか…と思わず感心してしまった。料理における選択肢の広がりを感じた。
ガパオライスやタコライスの挽肉代わりに入れたり、ミートソースの肉代わりにも使えそうだと料理のレパートリーが次から次に浮かんでくる。料理に合わせて切り方や大きさを変えて自分好みに出来るのもテンペの魅力だろう。郷に入れば郷に従え、と幼い頃から習ってきたのか?と思わず疑いたくなるくらい多くの料理に馴染むテンペ。今後の食卓に柔軟に取り入れられそうだ。
美味しいだけではなく、栄養価も高い。心身の満足を満たして止まないテンペを今後の暮らしに取り入れてみてはいかがだろうか?きっと水戸から帰宅した私を待っていた納豆ライフならぬ、テンペライフが待っているかもしれない。
(参考文献)
発酵とは?腐敗とは?その違いについて
発酵食品って何がいいの?|発酵のぎもん
まるで納豆?お肉の代わりにも?インドネシア発祥の「テンペ」は使い勝手抜群のスーパーフード!|Webマガジン「発酵美食」|マルコメ
インドネシアの発酵食品「テンペ」とは?絶品レシピ12選も要チェック! (2ページ目) – macaroni
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