第3回:右手には大自然、左手には1DKの家?|僕は現場主義。世界はこんなに近いのだ。

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自転車世界一周中の熊谷です。最近は荒野でのテント生活以外に、準都会でも野宿ができるようになってきました。テンティスト(テントを中心としたライフスタイル)として徐々にレベルが上がってきていることを日々実感しています。

IMG_8684*レッドが走破済み、グリーンがこれから走るルート。

アラスカ州アンカレッジからスタートした旅も、かれこれ約7ヶ月が経とうとしている。今はサンフランシスコに滞在していて、これからの旅の計画は、ロサンゼルス→メキシコ→中南米→南米(西側)→欧州→中東→東南アジア→韓国→日本だ。トータルで海外に3年間(現在7ヶ月経過)は滞在し、その期間中に3回は日本に帰国するつもりである。なので旅の全行程としては、約4年間が予想される。

今年の4月下旬にはメキシコシティ(メキシコの首都)からの1回目の帰国を予定している。現時点で7ヶ月と短い期間だが、酸いも甘いもあったと思う。今回は僕がまだテンティストとして、駆け出しだったカナダでの出会いについて話をする。

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アメリカ合衆国は右側通行だ。もちろん右側だけでなく、目の前いっぱいに雄大な大自然が広がる。全く掴めそうにない遠くの山々を見ながら、僕は自転車を漕いでいた。路肩を走る僕にとって右側が大自然で、左側が自動車(車やバイク)で分けられる。カナダを走っていた時に1番多いと感じた車はキャンピングカーである。夏のシーズンは、仕事をリタイヤした人たちがキャンピングカーを使ってロングトリップを楽しんでいるのだ。

あの巨大な鉄の塊が僕の横を度々通るのだから恐怖である。日本で見るような小型のキャンピングカーではなく、バスのような大型タイプが、「ブォーーーーーーーン!!!」という音ともに僕の横をすり抜けていく。車体が大きい分、横からの風がハンパがなく強いので、よろめきそうになることが多々ある。その度に僕は、「道幅広いし、そんなに車も通っていないんだから、もっと遠く走れよーーー!」と、ペダルに怒りをぶつけるように、蹴るようにペダルを漕いでいた。ドライバーの姿形が見えないことから、僕は余計イライラしていた。しかし、ひょんなタイミングで、その車の全容を拝める時がきたのだ。

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カナダのディストラクションベイという小さな町のキャンプ場で連泊している時に、アラスカへツーリング中の夫婦二人組みと仲良くなった。当たり触わりのない話からスタートしたが、この夫婦ならイケる!と思いキャンピングカー車内を見学させてもらえるように交渉。予想通り快くOKをしてくれた。

車内を見せてくれるのは、ダン&デビー夫妻だ。改めてキャンピングカーに近づいてみると、かなり大きいことが分かる。自家用車がキャンピングカーを引くのではなく、キャンピングカーが自家用車を引いている。さっそく中に入ってみよう。

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結論から言うと、移動可能な1DKの家だ。ステップを上がると、目の前にはリビングルームのような広い空間。入って左手にはキッチンとソファ、右手にはダイニングテーブル。さらに奥進むと、大きいファミリー用の冷蔵庫が壁に埋め込まれている。この広さがあれば、キャンプ場で仲良くなった他のファミリーを招いても全く問題がないだろう。

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リビングルムームを抜けると洗濯機が出現。シャワールーム、トイレ、洗面所があるので、長距離運転も快適に過ごすことができる。さらに進むとキングサイズのベッドもある。運転で疲れたら横になって疲労回復。日本のワンルームマンションよりは確実に広い。これだけ広ければ車体も大きくなってしまうのも仕方がない。しかし、ここからがさらに凄い。

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あるボタンを押すと、「ウィーーーーーー」という音とともに、両側の壁が内側に迫ってくる。つまり、外側に出っ張っている部分が、中にちゃんと収納されるのである。リビングルームと思われる空間が狭くなり、人間ひとりがギリギリ通れるか、通れないかの通路になる。運転する時は、このような形で走行。

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キャンプ場に到着して、リラックスタイムがくれば再度トランスフォーム(変形)だ。今回は、それを動画で残せなかったのが残念である。大きなトラックばかりに気を取られていたが、大きいキャンピングカーにも気をつけなければいけない。家が車道を走っているのだから。別れ際にダンに言われた。

「僕たち以外にもたくさんキャンピングカーがいるから、これからも自転車旅を十分気をつけて!そして、楽しんで!メキシコで待ってるよ♪」

その言葉に僕はハッとした。幅寄せしてくるキャンピングカーにイライラしていた原因は僕だった。全てのドライバーが悪気があるわけではない。何より、ダンやデビー達みたいに心優しいドライバーもいるではないか。まずは僕が車をリスペクトすることから始めなければいけない。車と自転車がお互いを尊重できるようになれば、お互いの未来は明るいはず。僕は車に道を譲り、心穏やかにペダルを漕ぐだけでいい。

僕の旅は急ぐ必要はない。急ぐのではなく一瞬を楽しむ。急がば踊るのだ!