【インタビュー】面白法人カヤックCEO柳澤大輔さん vol.2|地域と関わり合い、貢献し、ともに成長するのが次の時代の 企業のあり方

面白法人カヤックの代表、柳澤大輔さんのインタビュー後編では、柳澤さんが、鎌倉、そして“地方”の可能性をどのように見ているかを掘り下げる。
vol.1 自分の住むまちを“ジブンゴト”として考えると、住むのが楽しくなる。
vol.2 鎌倉そして“地方”には可能性があるのか。

 

柳澤大輔(やなさわ だいすけ)
面白法人カヤック代表取締役CEO(最高経営責任者)。1974年生まれ。98年、学生時代の友人3人でカヤックを設立。2002年9月、鎌倉に本社移転。13年に鎌倉を拠点にする企業とともに「カマコンバレー」を設立(現在の名称はカマコン)。

鎌倉に根ざす企業とともに、新しい時代に即した経済圏をつくる

ー鎌倉市では“観光で遊びに行くまち”から“働くまち”へとイメージチェンジをはかろうと、市内での創業や企業のサテライトオフィス設置を促進する事業などをサポートしています。この動きについてはどうお考えですか。

柳澤大輔さん(以下、柳澤):今、地方創生という国を含めた大きな流れがあります。そういう流れが生まれている背景には、豊かさの定義の変化があるんじゃないかと思います。つまり、一極集中とか儲け第一主義みたいな資本主義の究極形ではなく、それぞれの価値観があり、幸せの形も様々、というあり方です。そういう方向に人が進化しています。

鎌倉に住んで働き、地域に還元するということを促進するのが「働くまち鎌倉」の考え方で、これは今言ったような国全体の流れと人の進化、どちらともマッチしているし、いいことだと思うので応援したいです。実現できるかどうかは僕らがどこまで頑張って協力するかにかかっていると思っています。

—具体的に、どのような協力をお考えですか。

柳澤:カヤックの本社は鎌倉ですが、横浜に支社があり、社員の大部分が横浜にいます。それをもう一度鎌倉に戻します。そして鎌倉に住む社員を会社がサポートして、職住近接型のライフスタイル、ワークスタイルを推進していこうと考えています。

鎌倉の新たなオフィスは、ファブラボ(※)的な機能もあるので、地域にも解放していこうと考えています。手始めに先日、子供たちがクリエイターに教わりながらものづくりをするワークショップを開催しました。

(※)ファブラボ=ドライバーやヤスリ、レーザーカッターや3Dプリンターなど、アナログからデジタルまで多彩な工作機械を備え “ものづくりの民主化”を目指す工房のこと。カヤック鎌倉オフィスも広く市民に開放される予定。

柳澤:鎌倉の生態系保全に取り組む会社に出資して、連携を進めようとも考えています。

先ほど「従来型の資本主義は、新しい資本主義に置き換わっていく」と言いましたが、資本主義そのものを否定しようとは考えていません。そもそも僕らは株式会社ですから。でもこの新しい世界で成長するには一社だけではどうにもならないので、同じ思いを持ち協力し合える会社を増やし、経済圏をつくりたいと思います。それを持続するためにも、地域に貢献する会社がいいと考えています。たとえば儲け第一主義の会社は何かあればすぐ別のエリアへ移ってしまうかもしれませんが、地域に根ざすことを考えれば変なことはできないですし、長期的な視点で地域との関係を考えるでしょう。そういう会社と組んで、お互いの成長にコミットしつつ地域にも還元していきたいんです。

ー鎌倉にこだわる理由は何でしょう。

柳澤:鎌倉というより、多様であることにこだわっています。鎌倉で完結するつもりもありません。カヤックとしてはまずは鎌倉でしっかりやって、ほかの地域への展開はそれからですね。

僕はカマコンと企業の活動はセットだと思っています。社員がカマコンのような地域活動に参加することを推奨していくと、地域も企業も盛り上がりますよね。カマコン単体では楽しいだけになってしまいますが、そこに企業が携わっていくことで実効性のあることができると思うんです。

—「地方創生」の流れはビジネス的にもチャンスがあると感じますか?

柳澤:そうですね。国も力を入れているという大きな潮流がありますし、個人レベルでも地方で働きたい人が増えているんじゃないでしょうか。さらに、多様な働き方ができるようになったことで、企業の考え方にも変化が出てきたように感じます。

ただ、地方で働きたいという人が増えているとはいっても“地方ならのんびりできる”といった感覚の人が集まってしまうのも違うと思います。企業側も地方から世界で戦うぞ!というくらいの気概がないと、本当の意味で「地方創生」はできないと思います。


柳澤さんがめざすのは、利益を追求するだけではなく、地域と関わり合い、ともに成長する会社のあり方だ。これからのカヤックの鎌倉での挑戦と、さらなる進化が楽しみだ。

(提供:ハロー! RENOVATION