【インタビュー】リスクが生み出す、成長と楽しさを。フォレストアドベンチャーから学ぶ、「遊び」の可能性|志村辰也さん

「世界を変える、暮らしを創る」ため、「暮らしの美意識を体現し、新たなカルチャーを創造する」ことをミッションとしているYADOKARI。
その試行の一つとして数ヶ月に一度4〜5名でチームをつくり、興味のあるテーマを探求する活動を行なっている。今回のテーマは「遊び」の可能性。私たちはフォレストアドベンチャー・フジを訪れた。

フォレストアドベンチャーは、山の中にある、そのままの自然での遊びを提供するアウトドアパークだ。その遊び場では、森の中で高い樹からまた別の樹へ空中を移動しながら楽しむといった他に類を見ない体験が出来るという。

中でも2023年4月にグランドオープンしたフォレストアドベンチャー・フジは、遊休地山梨県南都留群富士河口湖街の富士山の北麓・標高1,100mの地に位置し、株式会社フォレストアドベンチャーが運営している40ものアウトドア施設のうちの1つ。宿泊施設を併設した『森で遊び、森に泊まる』を体現出来る複合型アウトドア施設として、注目を集めている。

彼らが提供するそのままの森林の中での遊びとは、彼らがこの場所を通して提供し続けている価値とは一体どのようなものなのだろうか。私たちは、株式会社フォレストアドベンチャー代表取締役、志村 辰也(しむら たつや)さんにお話を伺った。

フォレストアドベンチャーとは
フランス発祥の自然共生型アウトドアパーク。元々はフランスの企業、アルタス社が事業を開始し、企業や学校の研修コースとして運営されていたものの、後に人々に受け入れられ、一般の人々も足を運ぶアウトドア施設となった。日本国内では有限会社パシフィックネットワークとアルタス社が業務提携し、大人も子供も楽しめるアウトドア施設として40カ所で事業を展開する。

当初は馴染みのない遊び、安全かも分からない。


日本では馴染みのないそのままの自然をフィールドとするアウトドア施設。有限会社パシフィックネットワークがフランスから日本へも導入することとなった当初は、安全性を懸念する声もあったそうだ。良い森を使わせてくれる自治体や場所が見当たらず、いろんな場所を回ったという。

そんな中耳にしたのが「鳴沢村に荒れ放題の森林がある」ということだった。そこは、山梨県の県有林を地元有志の耕地整理組合が賃借していた場所で、木材価格の下落と林業後継者難によって遊休林となっていた。周囲の森林がゴルフ場や別荘地などに変わっていく中、「森林をそのままに、且つ子供たちに自然を体験してもらえる。今時なかなかないことだ。」と施設のコンセプトに共感した理組長の了承のもと、鳴沢村での設置と施設の運営がスタートしたという。

志村さん「最近の公園の遊具のクオリティは高いけれど、今の時代、ケガをしないようにだとか、うるさくしないようにということが重視され、近所の人がうるさいといったら公園が閉鎖されてしまうこともありますよね。子供たちが遊ぶ場所がすごく減ってきています。」

現代の子供の遊び場と比較して、森林が持つ良さは「リスクがある」ということなのだという。歩いている途中に何も樹の太い根っこがあったり、虫が飛んできたり、寒かったり、暑かったり。1人だと辛いけれど、仲間や家族とともにフォローし合うからこそ楽しめたり、コミュニケーションが生まれたり。森林にはそんな良さがあるのだとか。

もちろんケガをしないよう、安全管理は徹底的に行っているためケガをする人はほとんどいない。時に霧が出たり、動物がいたり、夕方になると寒かったり、季節によって表情を変え、予想もしてなかった癒しを体験できるのも、そのままの森林の中にいるからこその魅力なのだろう。

子供が大人になり、大人が子供になれる場所

実際に体験をさせてもらった。雨でもカッパを着れば問題なし!

公園の遊具で遊ぶのとはまるで違う、そんな楽しさを提供してくれるフォレストアドベンチャー。楽しめるのは子供たちだけではない。その楽しさを、大人たちも同様に感じることが出来る。

志村さん「空中を飛びながら木々を移動するといった、「高所」且つ「自然」という2つのリスクからなる非日常的な体験は、子供だけではなく、大人にとっても恐怖感や高揚感などを感じ、それらの感情をさらけ出しやすい場所になっています。」

普段仕事をしていると、会社のルールや固定観念の中でどうしても「こうしなくてならない」、「こうあるべきだ」などと考えては、無意識のうちに鎧のようなものを着てしまうこともあるだろう。そんな鎧を脱ぎ捨てて、感情をむき出しにできる場なのかもしれない。
一方、子供たちが無邪気に遊ぶ姿からは、楽しさが全面から伝わってくるのだとか。すいすいとコースを進み、自慢げな姿を見せる子もいれば、なかなか進めず周囲の同世代の子供を気にし始める子もいる。感情だけでなく、人の性格や特性がよく見える場所でもあるそうだ。

「子供たちの姿を見ていると、本当に面白いんだな、楽しいんだなというのが伝わってくる。ああ、これでいいんだな。逆にこっちも楽しまなきゃな、と感じさせられます。」と話す志村さんは、子供たちの姿に元気をもらうことが多いのだとか。

日常生活や子育てにおいて、大人が子供を育てるということは当たり前のことだと考えられている。時に過保護になってしまうことでさえも。しかしここではそういった情景が見られることは少ない。なぜなら、基本的に大人も子供も同じコースを体験することになっているこの場は、初めての経験を親子が共に体験して、対話して、挑戦することの出来る場所だからだ。

大人が何も教えていないのにも関わらず、前回よりも先まで進むことが出来たわが子の姿から、子供の成長を感じることが出来るなんてこともよくあるだろう。他では気づくことの出来ない子供の成長を、子供と共に喜びあえるのもこの施設の魅力なのだ。

樹を「使わせてもらっている」という気持ちで


「『自然と共生する。』なんて言葉を最近はよく聞きますが、実際は私たち人間が自然の恩恵を受けているという認識が強いような気がします。自然と人間とが共にあるこの場所で、人間が森林に与えているものはあるのでしょうか。」

「自然共生型」アウトドアパークであるフォレストアドベンチャー。自然との「共生」を掲げているものの、ここまでの内容だけでは、人間が森林がもつ恩恵を享受している場所という認識を持つ人も多いだろう。
実際のところ、フォレストアドベンチャーではただそのままの森林の恩恵を受けるだけでなく、良い森林を維持し続けるための徹底した管理を行っているようだ。

志村さん「施設が安全であるためには樹が健康でなければならなりません。実際100箇所の森を見て、施設をつくることが出来るのは、1、2箇所程度です。
樹が枯れてしまったり、台風で折れてしまったり、皮が剥けてしまったり。安全な施設を運営、維持するためにはこういったことがあってはなりません。毎朝、樹の根っこからてっぺんまでの様子をスタッフが管理するのはもちろん、コースを設置する際などは樹木医の協力のもと、ケーブルの巻き方や森林が光合成をしやすいような間引きの仕方など、森林にダメージのない形でコースの設置が出来るよう工夫を凝らしています。」

実は間引かれた樹々も、着地点や土留めとして施設の中で使用されている。
そのままの森林の中での他に類をみない体験、そして遊ぶ人たちの笑顔の裏には、スタッフの人たちのこうした徹底した森林管理があり、そのような人間と自然との関わり合いの中で、自然と共生する環境が作られていた。

誰もが喜ぶ「遊び」を越える体験を、これからも


「もともとフランスで活用されていたものだとはいえ、日本全国で40拠点以上もの施設が運営されるまでに至った背景には、法律や安全性への懸念など乗り越えるべき課題がたくさんあったのではないでしょうか。これらの障壁をどのように乗り越えたのですか?」

志村さん「フォレストアドベンチャーがこうした障壁を乗り越えることが出来た理由は、フォレストアドベンチャーが「みんなが喜ぶ施設」であるという確信があったからです。」

それは体験したお客さんの喜びだけではなく、作った施設の周辺に住む地域の方々や、お客さんが楽しむ姿に感銘を受けるスタッフにも喜びをもたらし、さらには人工林の放置という日本が抱える課題をも解決するものだったという。

新たなカルチャーを世の中に提案する時に直面する、困難さ。時間・お金・場所にとらわれない自由な暮らしを広げることをミッションに、時に壁や障害を乗り越えながら活動することを余儀なくされる私たちYADOKARIとどこか共通点のようなものを感じた。多くの人の笑顔のため。そうまっすぐに語る志村さんの姿に、背中を押された気がする。

「これからこんなことをやっていきたい!というものがあれば、教えていただけませんか?」

志村さん「自然共生にとことん特化したいですね。フォレストアドベンチャーを約2時間満喫して森から帰る。そういった数時間の遊びではなく、遊んでたくさん汗を流した後に森の中で食事をしてもらったり、そのまま宿泊をしてもらって、1日以上森の中で過ごすことの心地よさを体験してもらえたらと考えています。
そしてここで提供しているそのままの森が持つ価値を、10年先の未来でも変わらず分かりやすい価値で提供していきたいですね。」

オープンしたばかりのトレーラーハウス型の宿泊施設。家族や友人同士、企業研修などにも最適だ。

ここでそのままの森林のここちよさを学んだ子供たちが、10年後、小さな子供たちを連れてここに足を運ぶ。そんな姿が想像された。私たちも多くの友人を連れて再びここを訪れたいと思った。

今回お邪魔させていただいた「フォレストアドベンチャー」は、子供の遊び場としてだけでなく、そのままの自然が持つ価値を最大限に活かした、大人も子供も、全ての人が心から楽しめる場所だった。
世代を問わず何かを一緒に体験、挑戦することによって、企業や組織のチームビルディング、そして日常では体験することの難しい、親子が成長や学びを分かち合う場としての価値を提供しているこの場所から、「遊び」を通した可能性を追求することの大切さを学ばせていただいた。

そして、海外からの導入に伴い懸念されていた安全性や法律などの壁を乗り越え、現在日本各地で運営されるまでに至ったその背景には、ゲストだけなく近隣住民からも喜ばれる施設であるという志村さんの確信があり、「多くの人の笑顔のため」そういって挑戦を続ける彼の姿から、私たちYADOKARIが活動し続けるにあたって大切にすべきものを教えていただいたように思う。