ブラジル・サンパウロで開催された展示「Janelas CASACOR 2020」で公開された「Elo Studio」は、建築家ティシアーネ・リマが手がけた15㎡のコンテナハウスだ。
真鍮と吹きガラスを組み合わせ、空虚さと支え合いを象徴するその表現を、住まいという空間に重ね合わせている。ガラスの繊細さを「家」に見立て、コロナ禍で家が避難所となった状況を示唆するように、住まいを「 fragile(壊れやすい)けれど互いに支え合う場所」として再定義した。
最小限で最大の心地よさ
内部はキッチン、オフィス、バスルーム、寝室、そして屋上へとつながる構成を持ち、限られた15㎡を巧みに使い切っている。スカンジナビアデザインを基調に、自然素材を活かした明るい空間が広がる。家具は最小限に抑えつつも多機能性を備え、持続可能な木材「Grano」を取り入れることで、軽やかで温かみのある雰囲気を生み出した。小さいからこそ必要なものだけが厳選され、日常に寄り添う余白を感じさせる空間だ。
都市に浮かぶ小さなオアシス
Elo Studioの大きな魅力は、都市のただ中で自然とつながる仕掛けを備えていることだ。キッチンや寝室の窓から風や光を取り込み、屋上にはランドスケープデザイナー、フラヴィオ・アビリオによるグリーンルーフを設置。さらに、リラックスできるテラスを併設し、都市生活にいながら自然と触れ合える環境をつくり出している。太陽光パネルによる発電と柔らかな採光も相まって、明るく健やかな空気感が漂う。
家が問いかける、本当に必要なもの
「Elo Studio」は、単なるコンパクトハウスではない。そこには「人が暮らすうえで、本当に必要なものは何か」という問いが込められている。限られた面積を工夫しながら、安心感や居心地を最大化する設計は、パンデミックを経て価値観が揺らぐ今の時代に、あらためて住まいの本質を考えさせてくれる。小さな巣のような空間に身を委ねることで、住むことの意味、そして家がもつやさしさを深く味わえるのだ。
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archdaily.com