【タイニーハウスに行ってみた】コンテスト入選作が実現した「BouwExpo Tiny Housing」

(c)Naoko Kurata

2016年、オランダではタイニーハウスのデザインコンテストが実施されました。245の応募作から3部門合計25のタイニーハウスのアイディアが受賞し、その斬新なデザインたちは話題を呼んでいたのです。そしてその中から更に約半分、12のタイニーハウスのデザインが実現化することになりました! 一般公開された「BouwExpo Tiny Housing」に見学に行ってきましたので、その様子をご紹介させてください。

「Bevrijd Wonen」タイニーハウス・デザインコンテスト

(c)Naoko Kurata

かつて筆者は、2016年に特集コラム(プレミアムメンバー限定公開)で、オランダにおけるタイニーハウスのデザインコンテストに関する記事を書いておりました。

参照記事:ムーブメントの未来を映すコンテスト「Bouw Expo Tiny Housing」

過去にも2回タイニーハウスのデザイン・コンテストを行い、ブームの先駆けになってきたオランダが、前回(1985年)から30年以上を経て実施した3回目。そして前2回同様、受賞作は実際に建設されるというので、上記の記事を執筆した後も完成を今か今かと待ちわびていました。そして結果発表から約1年2か月、ついに完成作が一般公開されたのです!

(c)Naoko Kurata

受賞作が建てられた場所は、同じく以前に特集コラムで紹介していたアルメレ(Almere)という街。オランダにおけるタイニーハウス・ムーブメントの中心地として重要な場所です。
そのAlmereに、受賞作25のうち12のデザインが実際に建築されることになりました。

(c)Naoko Kurata

ちなみに、今回のコンテストのテーマは「Bevrijd Wonen」。英語に直すと「Liberated Living」、日本語なら「自由に住む」や「自由な家」といったニュアンスになります。以前コンテスト実行委員会に問い合わせてみたところ、この「自由」には「少ない持ち物で自由に生活すること、物質主義から自由になること、住宅ローンからの自由」という想いも込められているそうです。

(c)Naoko Kurata

そんなタイニーハウス・ムーブメントの最先端をいくデザインが実際に見られるということで、お披露目期間はまるでお祭りのような雰囲気。フードスタンドが出て、老若男女の見物人が、数多く押し寄せてきていました。

では、早速タイニーハウスを順番に見てみましょう。

「Pioniers」~完全オフグリッドハウス

(c)Naoko Kurata

ここで筆者は、思わぬ再会をはたします。それは、以前この「タイニーハウスに行ってみた」シリーズで取材した「Tiny Tim」。

参照記事:【タイニーハウスに行ってみた】最先端のグリーン浄水システムを搭載した「Tiny TIM」

実は、この「Tiny Tim」もコンテストの受賞作だったのです。エネルギーを完全に自給自足するオフグリッド・ハウスの「Pioniers」(先駆者)部門から、唯一の「BouwExpo Tiny Housing」への登場です。

上記記事の執筆時には内部を見学できなかったのですが、1年近くの時を経てやっと中に入ることができました!

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

以前の記事で「最新の内装デザイン案」とスタッフに言われていたインテリアが、しっかりと再現されていて感動です。ベッドを収納式にすることで、狭さは全く感じませんでした。

「Permanent」~常設のタイニーハウスたち

お次は、「Permanent」部門の受賞作を見てみましょう。この部門のモデルハウスは、デザイナーが土地を購入または借地することでAlmereの街に恒久的に残されることになっています。

(c)Naoko Kurata

まずは、コンテスト優勝作の「Royal Wonen」。受賞デザインから外観の変更はありますが、優勝に恥じない素晴らしい家でした。

(c)Naoko Kurata

まず特徴として挙げられるのが、この玄関。窓と玄関を兼用することが多いタイニーハウスのなかで、専用の玄関があるのは面白いですね!さすが「ロイヤル」と名乗るだけはあります。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

明るくてすっきりとしたリビング・ダイニングとキッチンが完備されています。

(c)Naoko Kurata

もちろん、清潔なシャワーブースとトイレも。一般住宅と比べても、まったく不都合なさそうです。

(c)Naoko Kurata

そしてダブルベッドが置けるプライベートスペースも。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

そればかりではなく、リビングからはしごで上がれるロフトスペースもありました。必要があれば、ここにマットレスを置いて寝られそうです。

(c)Naoko Kurata

リアルな生活が想像できることもあり、中は熱心な見学者の熱気であふれていました。

(c)Naoko Kurata

次は、「Home Boxen」。文字通り、箱のような家ですね。

(c)Naoko Kurata

この家の特徴は、高さを生かした2階建て構造。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

ロフトがリビングの上とバス&キッチンスペースの上の両側にあるので、寝室スペースや物置としてスペースを有効に使えるのです。

(c)Naoko Kurata

こちらも、熱心に商談中(?)でした。

(c)Naoko Kurata

中には、まだ建設途中の作品も。こちらは「Tiny-A」という三角屋根の家。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

中には入れませんでしたが、シートの隙間から中をのぞくことができました。このデザインは、完成すれば受賞作のデザインとかなり近いものになりそうな気がします。

(c)Naoko Kurata

そして同じく、「SLIM FIT」というタワー状の家も未完成でした。最上階から見下ろしたかったのに残念です!

次は、「Tijdelijk」部門のご紹介です!

「Tijdelijk」~2年間限定の設置

(c)Naoko Kurata

「Tijdelijk」部門は、アルメレの自治体との契約で、2年限定でこの場所に設置されるタイニーハウスたち。筆者の個人的趣味としては、この部門の家たちが一番見ごたえがありました!上の画像は、白いキューブ型の「KODA」。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

屋根にはソーラーパネルが設置されています。

(c)Naoko Kurata

そして日当たりの良いリビングスペースの横には、キッチンとクローゼットを兼ねたスペースが。その奥にトイレとシャワーブースも上手に隠されています。

(c)Naoko Kurata

キッチンスペース上のロフトには、寝室スペースが。二人でもゆったりと眠れそうです。

(c)Naoko Kurata

タイニーハウスであるということを忘れそうな、しっかりとした「家」でした。

(c)Naoko Kurata

そして、「朝日と夕日の両方を楽しめる」がコンセプトの「Snuk」。

(c)Naoko Kurata

家具は置かれていない状態でしたが、その分、室内の規模感がよくつかめました。

(c)Naoko Kurata

そして最後に、「WIKKELHOUSE」。段ボールを断熱材にした家であるとともに、パーツをつないで家の長さを自由にカスタマイズできる機能的な家です。

(c)Naoko Kurata

段ボールが使われているとはいっても、木材でおおわれているので、一見すると普通の家に見えます。

(c)Naoko Kurata

パーツをつなぎ合わせている継ぎ目も見えますね。このパーツを継ぎ足すことで、いくらでも家を広く(長く)作ることができるのです。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

このモデルハウスでは、キッチンの後ろにバスルームと物置がパーテーション的に使われていました。そしてその向こうにはベッドルームが。

(c)Naoko Kurata

ちなみにこれが、ベッドルーム側からみた外観。煙突も見えて可愛らしいですね。

(c)Naoko Kurata
(c)Naoko Kurata

残念ながら、まだ建築に着手していない家も数軒ありました。これらはすべて常設の「Permanent」エリアだったので、また時間をおいて見学に訪れたいと思います。2年以内であれば「Tijdelijk」エリアのタイニーハウスたちも(外観のみ)見学できるはずなので、みなさまもオランダ旅行の際はAlmereに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

コンテストの結果発表後、1年以上も成り行きを見守っていたタイニーハウスたちだったので、ついに実物を体験出来て感無量です。そして、タイニーハウスを熱心に見入っている来場者たちの、熱気にも圧倒されそうにもなりました。オランダにおけるタイニーハウスの注目度を肌で感じられた気がします。これからもオランダのタイニーハウス・ムーブメントをけん引するAlmereには注目していきたいと思います。

Via:
bouwexpo-tinyhousing.nl

ライター:倉田直子