【海外事例】伸縮する屋根が生む心地よさ。風景に溶け込むタイニーハウス「The Brook House」

ここは、ビクトリア州南西部。オーストラリアの先住民グンディチマラ族の伝統的な土地にあるローズブルックだ。この土地に溶け込みながらもお洒落な雰囲気を醸し出す一台のタイニーハウスが佇んでいる。
その名も「The Brook House 」。この住まいの注目すべきポイントは、伸縮可能な屋根。タイニーハウスにとって重要な、可動のしやすさと空間の開放感そのどちらも最大限実現するために採用された屋根だという。
運ぶ時は、屋根を出来るだけ低く、暮らすときは天井を出来るだけ高く。
そんな自由と柔軟性を兼ね備えた、理想的なタイニーハウスだ。

伝統の地に佇む、個性あふれるタイニーハウス
緑豊かな放牧場に佇む「The Brook House 」。広い湿地帯に囲まれた窓からは、モワン川、どこまでも続く草原、そして時折通り過ぎる牛たちの姿を見たりなど、中からでも外の景色を一望できる。床から天井までつづく、この大きな窓はミニマルでありながらも、自然の広さを体感できそうだ。


伸縮式の屋根が生む、自由で柔軟な暮らし
彼らがサイズを決めるにあたって重要視したのが、送電線の下を通れる家を作るということ。しかし同時に、広々とした開放感のある空間であることも不可欠だった。そのために彼らが思いついたのが、格納式の屋根を備えた伸縮式フレームだ。それによって、運搬時には屋根を下げ、生活時には天井を高くすることができるという。運ぶ時には、最大限移動をしやすく、暮らすときには可能な限り広く快適に過ごすことが出来る。そんな住まいは、トレーラーハウスを手にしたいと思う誰もが望む理想の空間なのではないだろうか。
限られた空間を最大限に活かす三層構造
この住まいに取り入れられたユニークな仕掛けは、屋根だけではない。限られた敷地面積を最大限に活用するため、小さな空間を3層に分け、多目的に使用できるスペースづくりが実現されているという。
そのポイントが、小さな空間の中に作られたこのラウンジだ。二重の高さが感じられるこのラウンジは、住む人に開放感を与えているだけでなく、中2階という新しい空間を生み出している。2階へと続く中二階の床がデスクの席、ガードレールがデスクとなるような、そんなユニークなオフィスが、狭い空間を3層に分け、住む人の満足感をさらに高いものへと高めている。

田園風景に溶け込む素材選び
材料の入手と選定は、田園風景からインスピレーションを受けて行われた。錆びた赤い農家の小屋や風雨にさらされた海岸沿いの建物が並ぶ風景に溶け込むように、The Brook House は地元で調達されたものやリサイクルされたもので構成されている。

住まいが育つ、素材の表情を楽しむ
外壁は、地元で伐採されたヒノキの薄板を採用。風や雨にさらされて灰色になるにつれ、それはまるで小枝の家のようになり、酸化していく銅に対してねじれたりわずかに反ったりしながら、徐々に風景に溶け込んでいくのだとか。


使い続けていくことによって革の変化を楽しめる財布のように、この住まいは、住み続けていくことによって生まれる住まいの表情の変化を、段々と深まってゆく風景への溶け込みを感じながら楽しめるのだ。
バスルームには地元の火山岩が敷き詰められ、コンクリートや亜鉛メッキ鋼板のディテールが随所に施されている。エントランスの階段とデッキはすべて、近くのコンクリート製の牛追い桶と廃屋になった豚小屋のメッシュを再利用している。

田舎の温もりと洗練が共存する空間
どこか田舎らしさが感じられながらも、お洒落な雰囲気が漂う、そんな空間には見えないだろうか。家を愛でるようにすご過ごせそうな親しみやすさと、ちょっと特別な気持ちになれる他の住まいにはないこだわりやお洒落さ、その両方がここちよく両立した住まいが、このThe Brook Houseだ。
via:
archdaily.com
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