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「家族」というと、どんな形態を思い浮かべますかー。

一般的に思い浮かべるような、父・母・子という家族の形は、もう古いかもしれません。現在、伝統的な家族観に囚われない家族を包括する概念に、 “オルタナティブファミリー”というものがあります。

オルタナティブファミリーとは、alternative(代替する)とfamily(家族)からなる言葉で、ひとり親やステップファミリー、LGBTの家族……など、従来の核家族の形をとらない家族のことを指します。

近年、そんな従来の型にはまらないオルタナティブファミリーの数が増加しています。

なぜ“オルタナティブファミリー”が増えている?

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核家族以外の家族が増加している背景には、離婚率の上昇や女性の社会進出、また価値観の多様化などの変化があります。

家族の形態がどうであれ、最も重要なポイントは、子どもたちを安全で愛に満ちた環境で育てようと、またお互いを大事にしようと、努力することにあると言えるでしょう。そのために、オルタナティブファミリーに関する偏見や差別をなくし、社会的な支援や理解を促進することが必要とされています。

オルタナティブファミリーの例

ここでオルタナティブファミリーと呼ばれる、家族の例をいくつか紹介しましょう。

ひとり親家族

ひとり親家族は、子どもをひとりの親が育てる家族形態のことを指します。結婚やパートナーシップの解消、死別などの理由がありその数は増加。日本でも、1984年から2011年の間で母子世帯数は約1.7倍に、また父子世帯数は約1.3倍に増えている*と言われています。

また元から結婚せず、独身で子育てをする選択をするケースも広がっています。

ひとり親家族(特に母子世帯)は一般的な家族形態と比較し、経済的な困難を抱えるケースも多く、社会的な支援が必要とされています。

*参照 第2節 高齢者,ひとり親の状況 (内閣府男女共同参画局)

ステップファミリー(再婚家族)

ステップファミリーとは、離婚や再婚などによって、血縁関係のない親子がいる家族のことです。

どちらか片方の親に、元パートナーとの間に生まれた子どもがいる場合、両方の親にそれぞれ子どもがいる場合、また再婚後に生まれた子どもがいる場合……など、ステップファミリーの中でも、形態はさまざまです。

里親や養子縁組

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子どもを育てられない親の代わりに、一時的に子どもを預かって養育する「里親」制度。一方「養子縁組」は民法に基づいて、法律上の親子関係を作る制度のことです。どちらも、血縁関係がない親子が家族として生活する形の一つです。

日本では、2020年に民法が改正され「特別養子縁組制度」の対象年齢が、6歳未満から15歳未満に引き上げられました。15~17歳でも一定の条件のもと、養子縁組が可能です。

虐待や経済的な事情など、さまざまな理由で親と暮らせない子どもの数は多くいます。また不妊問題やLGBTQなど家族形態の増加に伴い、里親や養子縁組の制度は今後も必要とされるでしょう。

LGBTQ家族

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レズビアンやゲイカップルなどのLGBTQ家族も、近年増加している家族形態の一つです。「一夫一妻」の形態を取らないケースが多く、性別の役割を持たずに子どもを育てている場合が多いのが特徴です。

LGBTQ家族は、養子縁組や精子バンクの利用、代理出産などを通じて子どもを迎えることが可能です。

一方、2023年4月9日現在、日本では同性婚が法的に認められていない現状があります。複数の地方自治体でパートナーシップ制度が導入されていますが、法律的な効力はなく、制度化の検討が必要だと言えます。

共同育児(Co-Parenting)

Co-Parentingと呼ばれる共同育児は、元々両親が離婚した後も一緒に子育てをするケースに使われることが多かった呼び方です。近年では、コミュニティハウスで複数の家族が一緒に育児を行う場合、またLGBTコミュニティ内で共同育児を行う場合も増えてきています。

共同育児のメリットに、子育ての負担を分散できること、また想定される役割がないことが挙げられます。

多様化する家族のあり方

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社会の変化に伴い、従来の家族形態が多様化している今。これらのオルタナティブファミリーが、より社会の中で生活をしやすくなるためには、新しい法律的な枠組みや支援制度が求められています。

また、オルタナティブファミリーは、伝統的な家族に対する価値観の変化をもたらすこともあります。例えば、レズビアンカップルや非法律婚カップルは、通常形態の家族(法律婚異性愛家族)と比較し、家事分担が平等であること*が明らかにされています。家族内での役割が、ジェンダーや法律契約の有無によって、変わってくるのです。

*参照  釜野 さおり,“Housework and lesbian couples in Japan: Division, negotiation and interpretation” ,2009

 

従来の「一夫一妻」の形にとらわれないオルタナティブファミリーには、このように家族の役割や家族そのものの “あり方”を問う側面もあります。

家族は、どうあるべきなのか。そもそも「家族」とは、何なのかー。

色々な家族の形がある方が、私たちは心豊かにいい暮らしを送っていけるかもしれませんね。

参考元:https://www.huffingtonpost.co.uk/sarah-garrett/what-is-an-alternative-fa_b_11564254.html
養子縁組について知ろう (法務省)
Co-parenting: How to make it work, tips, and more
法改正後に見えてきた特別養子縁組の新たな課題 (日本財団)

あなたは自分自身について考えたことはあるだろうか。
あなたはどんなときに怒る?何を食べればハッピーな気持ちになる?好きな色は?

これらの質問に、悩まずに答えられる人はそう多くはないはずだ。

スマホを見れば大抵の情報は分かる現代、どこにも描いていないのが自分自身についてのこと。
恋人と別れたり、仕事で大失敗したり。人生において大きな出来事が起きると、わたしたちはパニックに陥ることがある。

そんなときに、あなたの心の支えになれるのはあなただけ。
そして、自分らしい人生を歩む他の決断をする、これもあなただけにできること。

死ぬまでずっと付き合う自分だからこそ、扱い方を深く知っておきたい。そこでおすすめしたいのが、思考ツールとしてのライティングだ。

ぐちゃぐちゃの感情の記録がやりたいことを浮き彫りにする

なぜかわからないけど、そう感じる。そう思う。そんな曖昧な感情は、書きなぐってしまおう。

書いていくうちに、あなたのやりたいことが浮き彫りになってくるはずだ。

例えば、会社に行くのが「なんとなく」つらいと思ったとしよう。書き溜めておいた日記を見返すと、こんな文言があった。

・イラストの練習をしたいが帰宅後そんな元気はない
・休み時間に絵の練習をしたいけどランチの輪から離れるのが怖い
・満員電車を避けるために早起きするようにしている

まとめると、「自分のやりたいことができない今の状況に満足できない自分」が見えてくる。

つまり、会社に行くのが「なんとなく」つらいの正体は、自分らしい生活ができない元凶である会社に対する嫌悪感にあったとわかる。

原因がわかれば、対策が打てる。同僚との昼食後にサラッと席を立つのもよし、フルリモートの会社に転職して時間を確保するのもよし。

あなたが残す言葉の数々をつなぎ合わせると、日々の不満の正体や、自分のやりたいことがだんだん見えてくるようになるのだ。

自分と向き合うために!書くときのコツ3つ

書くことの重要性がわかっても、どう書けばいいのかわからない。これはもっともな疑問だ。

書くときにおすすめしたいのが、以下3つのポイント。学校で習う作文のように形式ばる必要はないし、決まった文字数に収める必要もない。

1.自分のために書く

全ての文章は自分のために書くことを忘れないようにしよう。

人は見栄っ張りなもので、どうせ書くのなら評価されそうなものをつくろうと考えがちだ。しかし、自分と向き合うために他人からの評価は必要ない。

まずは自分の思ったことを素直に文字にしたためるようにしよう。

2.100点満点を目指さない

日記というからには、一日の出来事を細かく記録しなければいけないと思ってない?

大切なのは、思ったことを素直に表すことであって、全てを正しく記録することではない。例えば、以下のような文だって立派な日記だ。

・バナナジュースは意外と美味しいと分かった。
・家を出たら隣人とばったり会ってしまい、あいさつした。恥ずかしかった。
・最近肩が凝ってしんどい。

あなたがその日に思った感情を、後で読めるように残しておく。それだけにフォーカスして、100点満点を目指すのはやめよう。

3.読み返して自分を知る

日記がある程度溜まってきたら、ザッと読み返してみよう。

あれがおいしい、あんな思いをした…どうでもいいことのようにも思えるが、それは確かにあなたが感じた思いだ。

「そういえば、たまにこの味が恋しくなる」「職場のあの人、いつもフォローしてくれて助かるな」

日々感じたことを残しておくことで、自分が身の回りのモノやコトをどう感じているかが分かるようになり、それが「やりたいこと」を見つけるのにもつながってくる。

まずはペンをもって書くことから。何ならオンライン日記ツールでササッと書き込むのもいいだろう。とにかくやってみることが大事だ。

手軽な日記からあなたの不安の種を突き止め、やりたいことに向かって突き進もう。

 

参考元:

METROPOLITAN STATE UNIVERCITY OF DENVER,”Writing as a Thinking Tool”,https://www.msudenver.edu/writing-center/faculty-resources/writing-as-a-thinking-tool/

東洋経済,”イライラ・怒りが減る「1日3行日記」のすごい効果”,https://toyokeizai.net/articles/-/478749?page=3

 

photo:http://www.tumbleweedhouses.com/

車で牽いて移動できる家「トレーラーハウス」は、いままで「不動産」として扱われてきた家のあり方を変えるものとして、ジワジワと注目を集めています。

このトレーラーハウスですが、「家の本体」と「家を載せる部分」に分けることができます。このうち、家を載せる部分はシャーシと呼ばれ、移動用のタイヤが付けられ、乗用車とドッキングできるようアタッチメントが付けられているのです。

トレーラーハウスの基礎となるシャーシですが、大きさ別に種類があることをご存知でしょうか?この記事ではトレーラーハウスのシャーシについて解説をします。

◎トレーラーハウスってなに?という方は、こちらをご覧ください
【タイニーハウス】スモールハウスやトレーラーハウスなど、日本で買える小さな家の種類とは?

種類は2種類、サイズ別トレーラーハウスの特徴とは

エアストリーム〈16’BAMBI SPORT〉|photo:トレーラーハウスディベロップメント

トレーラーハウスのシャーシですが、日本国内で手に入りやすいものは「12ft(フィート)」と「20ft(フィート)」のものです。

ft(フィート)という馴染みのない単位が出てきましたが、これは欧米で使われている長さの単位。1ftは約0.3mです。
この大きさは貨物用コンテナのサイズに合わせて作られており、日本で手に入るトレーラーハウスのシャーシの多くはこの2つのサイズになります。(海外製のものやオーダーメイドで10ftや18ftサイズを作ってくれるメーカーもありますので、気になる方は探してみましょう)

これら2つのシャーシですが、それぞれどのような特徴を持っているのでしょうか?その特徴をご紹介します。

◎12ft(約5畳)の特徴
・比較的牽引がしやすい
12ftのシャーシは長さ約3.6m。約6mの20ftシャーシに比べて短いので、公道で取り回しやすいことが特徴です。小さいため水回りなどは充実させられませんが、比較的牽引しやすいので、休日の旅行先でコテージの代わりにしたり移動式できるお店にしたりと、様々な使い方ができます。

・購入、建築コストが安い
12ftシャーシは20ftのものより比較的安価で、購入費用を抑えられます。上に建てる家も小さなものになるので建築コストが安く、経済的に「移動する家」を手に入れることができます。

◎20ft(約9畳)の特徴
・居住空間が大きく、シャワーなどの設置も可能
20ftのシャーシは、約9畳の家を積むことができます。これくらいのスペースがあれば、キッチン・シャワー・トイレの設置も可能。居住面積が広くとれるので、2〜3人で住むことも可能です。牽引は難易度が高く技術が求められますので、移動はあまり行わなず「将来的に移動ができたらよい」と考えている方はこちらを選ぶとよいでしょう。

・手に入りやすい
日本ではまだ馴染みがないトレーラーハウスは、シャーシを販売しているメーカーが多くありません。多くのメーカーで販売されているのは20ftのもので12ftは少数派。手に入りやすさを考えると、20ftに軍配が上がります。

▼YADOKARIでも20ftシャーシの販売をしています。
⇒https://yadokari.net/wp/orchestra-trailer/

ブレーキとナンバープレートは必須!トレーラーハウスに必要な設備

KIBAKO TRAILER|photo:天城カントリー工房

次はトレーラーハウスに必要な設備について解説します。どれも必要なものなので、シャーシを買う際には必ず確認しましょう。

・ブレーキ
法律上トレーラーハウス「車両を利用した工作物」として扱われています。そのため、ただタイヤが付いているだけでは公道を走ることはできません。ブレーキには「機械式慣性ブレーキ」と、けん引車のブレーキに反応して作動する「電磁ブレーキ」の2種類があり、電磁ブレーキの方が安全性は高めです。

・ナンバープレート
公道を走る場合はブレーキと同じく、ナンバープレートを取得する必要があります。ナンバープレートを取得できるトレーラーハウスは、全長12,000mm、全幅2,500mm、全高3,800mmのもの。それ以上のものは大型トレーラーハウスに区分され、ナンバープレートは取得できません(大型トレーラーハウスが公道を走る際は、「基準緩和認定書」「特殊車両通行許可書」という2つの書類の交付を受ける必要があります)。

・ブレーキライト
これも公道を走る際に必要な設備で、車両と同じく後続車にブレーキのタイミングを伝えるものです。

・ライフラインの着脱機構
電気・ガス・水道などのライフラインを手動で着脱可能になるアタッチメントで、簡単にライフラインが着脱できるようになるので移動しやすくなります。

移動できるから手に入る自由

家でもあり車両でもあるトレーラーハウスは、普通の家とは違う設備が必要な住まいです。住む場合も移動する場合もそれぞれ守らなければいけない法律があり、違反した場合は罰則の対象になってしまいます。

法の規制があるトレーラーハウスですが、法を守ったうえで、その特徴を知って家を建てれば、今までの家とは異なる可能性に満ちた住まいになってくれるはず。ライフスタイルに合わせて移動したり、旅行に連れて行ったりと、楽しい生活を送れるトレーラーハウスにあなたも住んでみませんか?

【WHAT IS TINY タイニーハウスを買う前に、読んでおきたい記事一覧】
【タイニーハウス】スモールハウスやトレーラーハウスなど、日本で買える小さな家の種類とは?
小さくて豊かな暮らしのベース、タイニーハウスとは?
タイニーハウス、トイレやお風呂はどうするの?必要な設備について

“農業”と“農ある暮らし”の違い

労働時間が長くて、休みが少ない。おまけに収入も不安定。
“農業”というワードから連想されるイメージは必ずしもポジティブなものばかりとは限らない。
事実“食を支える”というポジティブなイメージの裏側ではこうしたマイナスイメージ通りの現状が存在する。

日本人の平均実労働時間が7時間54分と言われる中、7割を超える一部の農家さんが8時間以上働いている現状。中には12時間を超える農家さんも1割程度もいるというから驚きだ。

農家の現状⑴:長時間労働

ポケマル調べ

また、平均108日と言われている日本の年間休日。8割以上の農家さんの年間休日は84日以下。
そのうち、65日未満は全体の6割を占めるので、1カ月あたりの休みも5-6日。想像すると、なかなかハードな日常であることが容易に想像できるだろう。

農家の現状⑵:年間休日が平均以下

ポケマル調べ

こうしたいわゆる“農業”に対して、近年広まりつつあるのが“農のある暮らし”という生き方。1990年代に塩見氏によって提唱された「半農半X」の考え方も、農ある暮らしに紐づけられる。自分や家族の食べる分の食材を自給でまかない、残りを「X」つまりは自分の心からやりたいと思える天職に時間を充てるというものだ。

ただ、農に携わると言っても、その関わり方や度合いはかなり柔軟でよいとされている。田舎で電気に極力頼らない完全自給自足生活を送るといったものから、都会のアパートのバルコニーで野菜を育てる程度まで。農部分とX部分にかける時間を自分で選ぶことが出来るため、労働時間や休日日数に対する柔軟性がある。

 

また、農部分とX部分を掛け合わせた新たな取り組みを始めることも選択肢として生まれえる。例えば、自宅のオフィスを改装したカフェで、自分の畑で育てた野菜を使ったメニューを開発する。自分でもち米を育てつつ、全国を巡る楽器奏者が各地のライブハウスでお米の販売を行うといった例も実在する。
このように“農業”と“農ある暮らし”の一番の違いは、農に充てる時間や関わり方の柔軟性。それから“農”はあくまで自給的なものであって収益をあくまで二次的な副産物と捉えるという考え方も違いと言えそうだ。

“農ある暮らし”ってどうやって始めるの?

新型コロナウイルスの流行で家庭菜園を始めた。
フルリモートが可能となったので思い切って実家のある地方に移って畑を引き継いだ。

農業に関する記事や、周囲の友人の話を聞いている中で、新型コロナウイルス流行前よりは田舎暮らしや移住を始めるハードルは確実に下がっていると実感することが多い。実際に、家庭菜園で比較的場所を問わないさつまいもの栽培を始めたことをきっかけに、農業高校に通った方も身近に存在する。自分用の野菜を育てるためにという目的で始めたものの、今では週末のマルシェで焼き芋として販売したり天職としても農を取り入れている程だ。

とはいえ、こうした例は実は極稀なこと。今日明日でいきなり今の自分がいる住環境をガラリと変えることはなかなか難しい。農ある暮らしを実践したい、憧れがあると思っても、実際に始めるまでのハードルが高そう…と思っている方もいらっしゃるのではないだろうか。

そこで今回は、そもそも“農ある暮らし”ってどうやって始めるのか。
住む場所を変え、田舎暮らしをしなくてはいけないのか、大きな畑や庭がないと出来ないのか。そんな方々に向けた“農ある暮らし”を始める第一歩となりそうな事例を今回は紹介していく。

“農ある暮らし”をお試ししてみよう:海外のWWOOFという考え

ライター作成

皆さんは海外で盛んなWWOOFという取り組みをご存じだろうか?特にオーストラリアではよく聞く取り組みである。ウーファーと呼ばれる労働者が、ホストと呼ばれる農家の元へ住み込みをする。彼らは1日平均4-6時間の労働力を提供する。そしてその代わりに、ホストは寝床と食事などの住環境を提供する。このWWOOFと呼ばれる仕組みにおいてにおいて給与は発生しない。しかし、ウーファーは農の知識や新しい人脈を獲得し、ホスト側も人手や新たな人脈を獲得するという双方にとってwin-winな関係が成立する。

ライター作成

両者がWWOOF専用のサイトに登録し、プロフィール欄に情報を入力することでマッチングするという仕組みの下で行われる。ウーファーは農家の暮らしを体験することで農をより身近に感じることが出来る。
金銭のやり取りを交えない交流の中で新たな人脈や農業での知識を獲得し、自らの生活に“農”を取り入れ心豊かな生活を送るきっかけに繋がる。

“農ある暮らし”をお試ししてみよう:日本で見つけたWWOOFに近い経験

日本にもWWOOFは存在するが、なかなか日常で単語を聞くことは少ない。
確かにお給料を頂いて、農家に住み込みをするサービスや取り組みはいくつか存在する。「おてつたび」と呼ばれ、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた名前で自分に合った条件で農家さんの下でお仕事をするサービスは最近テレビでもよく取り上げられている。

だが、“農ある暮らし”において収入はあくまで副産物。これまで生きるために稼ぎ、お金を使うことでのみ得ていた幸福感。それを半自給的で小規模な農に携わることで、得ることが“農ある暮らし”の本来あるべき形と言える。

島旅農園「ほとり」公式画像

そこで今回御紹介するのが香川の離島にある「島旅農園ほとり」と呼ばれる宿での農体験。

この宿では「ヘルパー」と呼ばれる制度が存在する。この制度では、WWOOFと同じく給与が発生しない。代わりに、宿での宿泊および食事の提供(ほとりでは共同調理スタイル)が約束されている。ヘルパーの主な内容は季節ごとに変化する農作業で、募集期間は1週間からの日程で行われている。

しかし、どうしても農体験を経験したかった私。オーナーの唐崎さんに無理を言って1日限定のヘルパー体験をさせていただいた。

宿のオーナー兼島唐辛子農家でもある宿主の唐崎さんが家庭菜園として使用している畑の農作業。農薬・化学肥料不使用の畑において季節に応じた農業体験をすることが出来る。私が向かった10月は、秋冬野菜の種まきと植え付けが主な作業だった。

まな板上の収穫野菜

photo by ライター

収穫野菜(ねぎ)

photo by ライター

収穫野菜夕食

photo by ライター

スーパーがないため食材を購入するにはフェリーを用いて本土へ出向く必要がある離島。
唐崎さんの畑で収穫された畑の作物は、彼普段の食事や宿でお客さんに提供する料理に使用される。

農体験と一言で言っても単なる収穫体験とは少し異なる。
まずは土をならして畝を作るところから。初めての農具の重さや力仕事に手こずる。野菜によって土の表面に植えたり、少し深い部分に植えたり。唐崎さんの解説を基に農作業を進めていく。
終わる頃にはクタクタ。だが、一筋縄ではいかない種まきや土ならしを経験し自分の心の声が聞こえたり。少し冷静になれたり。農作業に集中することでこれまで気に留めることが少なかった自然について考えているから不思議だ。
そして、夜ご飯には唐崎さんが以前畑で収穫したねぎやお味噌汁を使った料理を共同調理という形で自炊を行う。島でおじちゃんから頂いた無花果、おばちゃんが獲ってきたひじき。誰かのことを思い浮かべながら頂く食事は思いがけず感謝やそのありがたみについて気づかされる。

東京へ戻った後も逐一、唐崎さんが生育状況について連絡をくださる。実際に自分が畑を持っているわけではないが、自分が植えた種が育っているのを見聞きする。労働力の代わりに対価を頂く普段の労働とは全く異なる。第二の故郷とも言える場所や唐崎さんを通じた他の農家さんとのご縁が、今回の経験によって心の豊かさに直結していることを日々実感する。

「ほとり」野菜生育状況「ほとり」かぶ成長後
自分の畑があるわけではないが、これもまた新しい“農ある暮らし”の在り方のように思う。離島で頂いたご縁が、畑を通じてまた、離島へ向かう理由にもなりえる。

一口に“農ある暮らし”と言ってもその在り方は十人十色。田舎暮らしをして自分の畑を持つのことも、私のように自分の畑はなくとも各地の農家さんの元へ出向いて”お試し農体験”を積むのも農との関わり方の1つの形だ。このように時間的拘束や収入に囚われない新しい農との関わり方を見つけてみてはいかがだろうか?自分なりの、そして自分だけの“農ある暮らし”を楽しんでみてほしい。

(参考元)

https://www.japantimes.co.jp/life/2023/01/21/%20lifestyle/han-no-han-x-farming
https://wwoof.com.au/
https://poke-m.com/stories/621?_k_ntvsync_b=eyJhcHBfaW5mbyI6eyJtb2R1bGVfaW5mbyI6eyJjb3JlIjoiMi4xNC4wIiwidXRpbGl0aWVzIjoiMy4zLjAiLCJpbl9hcHBfbWVzc2FnaW5nIjoiMi44LjEiLCJyZW1vdGVfbm90aWZpY2F0aW9uIjoiMi40LjAiLCJ2YXJpYWJsZXMiOiIyLjEuMCJ9LCJzeXN0ZW1faW5mbyI6eyJkZXZpY2UiOiJpUGhvbmUiLCJvcyI6ImlPUyIsImJ1bmRsZV9pZCI6ImNvbS5wb2tlbS5wb2NrZXRtYXJjaGUiLCJzY3JlZW4iOnsid2lkdGgiOjQxNCwiaGVpZ2h0Ijo4OTZ9LCJtb2RlbCI6ImlQaG9uZTEyLDEiLCJvc192ZXJzaW9uIjoiMTYuMy4xIiwibGFuZ3VhZ2UiOiJqYS1KUCIsImlkZnYiOiJDMUQ0RDA3RS1GMDNFLTQ4QjAtOUMwOC1CREJGQUI2NDRBQTQifSwidmVyc2lvbl9uYW1lIjoiMi43MC4yIiwia2FydGVfc2RrX3ZlcnNpb24iOiIyLjE0LjAiLCJ2ZXJzaW9uX2NvZGUiOiIxIn0sInRzIjoxNjgyNDYxNDE2LjQzNDgzOSwidmlzaXRvcl9pZCI6IjkzM0FFOUZBLTEzNTctNDcyMi05QkQ1LUM3QzBGMkI4NTdGMSIsIl9rYXJ0ZV90cmFja2VyX2RlYWN0aXZhdGUiOmZhbHNlfQ==
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ6Z43TRQ62OXIE005.html
https://shimatabi-hotori.wixsite.com/official/general-3

トレーラーハウスもローンで購入可能!?小さな暮らしをより手軽に手に入れる方法

コロナの影響も相まって、価値観に様々な変化がおきている近年、場所に囚われず働くことができるようになった今、地方移住や、2拠点居住を始める方も多くなってきました。

かつては”別荘”といえば富裕層の限られた人のみが所有できるものというイメージでしたが、最近では、家よりも気軽に購入できるトレーラーハウスが別荘として選ばれ、幅広い世代から注目を浴びています。
別荘と言われて思い描く「
豪華絢爛な建物」ではなく、トレーラーハウスを利用した小さな暮らしだからこそ、こだわりを詰め込みながらも手軽に手に入れられるのが魅力となっています。

しかし、小さな暮らしとはいっても、土地探し、土地の購入、トレーラーハウスの購入からライフラインの引き込みなども含めると、建築物を建てるよりはるかに安いものの、それなりの出費はつきものです。

そこで今回ご紹介するのがトレーラーハウス購入ローン!
トレーラーハウスの購入費用も分割払いをすることで、より手軽に手に入れる方法をご紹介します。

|トレーラーハウスの購入にはどんな費用がかかる?

・土地購入費用
・トレーラーハウス本体費用
・車検登録費用
・牽引設置費用
・ライフライン接続費用

土地購入費用
ご自宅の庭に別棟として置く方もいれば、新たに土地を購入する方もいます。
トレーラーハウスは車両のため、市街化調整区域など建築不可の土地でも設置が可能です。

ポイントは、”トレーラーハウスの搬入経路は確保できるか”、”大きな高低差はないか”という点です。
トレーラーハウスは現地施工ではなく、完成品を搬入するため、道路幅は最低でも3m以上必要です。
また、大きな高低差があるとトレーラーハウスの水平を保つことができず、
大規模な整地が必要となる場合があるので、できる限り平坦な土地を選ぶのをお勧めします!

トレーラーハウス本体費用
トレーラーハウスのサイズ、内外装のグレードによって金額が変わります。
用途によってどのサイズが快適か、実物を見たり、体験宿泊をしながら、
トレーラーハウスのサイズを決めていきましょう!

車検登録費用
YADOKARIのトレーラーハウスは全て車検付きです。
車検費用とは他に、自動車税などの諸税とナンバープレート発行手数料などが必要です。

牽引設置費用
トレーラーハウスは車両重量が750kg以上の場合は、牽引免許が必要です。
ご自身で牽引免許を取得する方もいらっしゃいますが、最大3.5tものトレーラーハウスを牽引できる馬力のある車両である必要があるので、牽引業者に配送から設置までを依頼するケースが多いです。

ライフライン接続費用
トレーラーハウスで生活をするためには、電気や水道の接続が必要になります。
接続の際は、随時移動ができるように”工具を使用せず着脱出来る方式”で施工することがポイント。

また、道路からどのくらい設置場所が離れているかによって、接続費用が大幅に変わります。
土地から探される方は、ライフラインの接続費用も事前に確認しておくことも大切です。

|トレーラーハウスの購入に利用できるローンってあるの?

リサーチをした中で、トレーラーハウスに使えるローンを発見!その一部をご紹介します。

スルガ銀行さんでは、トレーラーハウスの購入時に利用できる専用ローンの取り扱いがスタートしたそうです!
これまでの初期費用の負担を大幅に減らすことで、より多くの方がトレーラーハウスのある暮らしを始めやすくなりそうです。個人用としてトレーラーハウスをご購入される方は、スルガ銀行さんの「トレーラーハウス購入ローン」をご検討されてみてはいかがでしょうか?

以下、スルガ銀行さんの「トレーラーハウス購入ローン」の商品ページから一部をご紹介します。

●ローンの対象となる費用(一例)
ートレーラーハウス本体費用
ーオプション費用(カスタム費用)
ー車検費用
ーその他諸経費(運送費等)など
ー牽引設置費用
ーライフライン接続費用

●融資額
10〜800万円まで

●金利
年2.5〜7.5%

●ご返済回数
6〜120回

●特徴
ー最短翌営業日で仮審査が可能!(別途、本審査がございます)
ーパソコンやスマホから24時間お申し込み可能!
ーコンビニやATMで繰り上げ返済可能!

※事業目的及び投資目的でのご購入にはご利用いただけません。
※事業者を介さない個人間売買でのご購入にはご利用いただけません。

|YADOKARIのトレーラーハウスではじめる小さい豊かな暮らし

トレーラーハウスのように、より小さく、より気軽に、けれども暮らしの幅は広く、夢は大きく!早速、トレーラーハウスのある暮らしをはじめてみませんか?
YADOKARIでは用途に合わせて様々なトレーラーハウスをご用意しております。

プロダクトページはこちら:https://yadokari.company/products

●Tinys INSPIRATION
20ftサイズ/シャワー・トイレ・ミニキッチン付き
本宅、別荘、ゲストルームにぴったりなスタイリッシュなデザイン

 

●Tinys Living
20ftサイズ/シャワー・トイレ・ミニキッチン付き
本宅、別荘、ゲストルームにぴったりな木のぬくもり溢れるデザイン

 

●STORK
12ftサイズ/水回りなし
アイキャッチにもなる近未来的な斬新なデザイン

 

●HAWK
20ftサイズ/水回りなし/カウンター付き
和を感じさせる移動できるオフィス空間

 

●METOS ASEMA
サウナトレーラー/薪ストーブ付き
どこでも本格サウナが楽しめるトレーラー

|YADOKARIのトレーラーハウスを見にいこう!

<トレーラーハウスの宿泊施設>
Tinys Yokohama Hinodecho
住所:〒231-0066 神奈川県横浜市中区日ノ出町2-166先
ご予約はこちらから⇨https://tinys.life/yokohama/
定休日:火曜日

<トレーラーハウス展示場>
Tinys Lab Hiratsuka
住所:神奈川県平塚市馬入2186付近
https://goo.gl/maps/iCTrcrVghjLPhq7UA
営業日:平日11~16時 ※完全予約制

|ローンについての詳細は専用ページへ!

詳しくはスルガ銀行のトレーラーハウス購入ローン専用ページをご覧ください。

トレーラーハウス購入ローン専用ページ

※ローンについての説明書は、スルガ銀行ホームページにご用意しております。
※本ローンはお客様とスルガ銀行との2者間契約となり、提携ローンではございません。
※本ローンの内容は、2022年9月1日現在での内容となります。

 

クィア映画の歴史と“クィア”

「クィア映画」とは、LGBTQ+を登場人物にした作品や、当事者たちが制作した映画のジャンルを指します。

元々“クィア(Queer)”という言葉は、「奇妙な」「風変わりな」といった意味合いを持ち、ゲイやトランスジェンダーに対する蔑称でもありました。しかし、そんな“クィア”という言葉を性的マイノリティを包括する呼称として当事者たちがあえて名乗ることで、差別に打ち勝とうとしてきた歴史があります。そのため今回もLGBTQ+映画を、あえて「クィア映画」と呼ぶことにしましょう。

20世紀初頭の映画には、性的マイノリティな人物はほとんど登場しませんでした。その後LGBTQ+が映画内で描かれることはあっても、引き立て役のような役割が多く、主人公となることはほぼありませんでした。またアメリカ映画界では、1934年から68年まで「ヘイズ・コード」によって同性愛描写が禁止されていたように、映画界ではヘテロセクシュアルな物語が長く受け入れられてきました。

@via:https://cinemafromthespectrum.com

しかし1990年代に入り、LGBTQ+を描いた作品が「ニュー・クィア・シネマ」と呼ばれるなど、クィア映画が人々に評価されるように。カンヌ国際映画祭の独立賞の一つとして、“クィア・パルム”賞が生まれるなど、映画界においてクィア映画が一定の地位を築くように変化してきたのです。

クィア映画の名作を紹介

LGBTQ+を描いた作品には、様々なものがあります。今回はその中でも、特に「映画史に影響を与えた」と言える、2000年代以降のクィア映画をご紹介しましょう。

『ブロークバック・マウンテン』(2005)

@via:https://theplaylist.net/

2006年のアカデミー賞で監督賞を含む3つの賞を受賞した作品。
監督はアジア系のアン・リーで、ジェイク・ギレンホールと今は亡きヒース・レジャーが主演を務めました。

アメリカ西部、出稼ぎ労働先の牧場で出会った、カウボーイ同士の恋愛と人生を描くストーリー。60年代アメリカの封建的な社会の中、受け入れられない葛藤や想い、その行き先が描かれています。

本作品は同年のアカデミー最作品賞の最有力候補と言われていたものの、結果は敗退。当時言われていた「同性愛を扱った映画は作品賞を獲れない」というジンクスを破ることはできませんでした。

アン・リー監督/134分/アメリカ
原題:Brokeback Mountain

『わたしはロランス』(2012)

@via:https://www.cinematheque.qc.ca/fr/

2012年度のカンヌ国際映画祭 クィア・パルム賞を受賞した作品。カナダ・モントリオールに住む国語教師ロランスが、恋人フレッドに「これまでの自分は偽りだった。女になりたい。」と打ち明けてから10年間にわたる、2人の姿を描いた物語です。

本作品は、生まれた時に割り当てられた性別と、自身で認識する性が異なるトランスジェンダー女性を描いた一作と言えます。公開当時23歳だった、若き奇才グザヴィエ・ドラン監督独自の映像表現が素晴らしい映画です。

グザヴィエ・ドラン監督/168分/カナダ・フランス
原題:Laurence Anyways

『アデル、ブルーは熱い色』(2013)

@via:https://www.bitchmedia.org/

カンヌ国際映画祭で審査委員長のスティーヴン・スピルバーグが称賛した作品。青い髪をした美大生・エマと強烈な恋に落ちた高校生・アデルを描いた物語で、当時はベッドシーンも話題になりました。

本作品は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。監督だけでなく主演を務めたアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥの2人にも賞が授与され、賞賛を浴びました。

アブデラティフ・ケシシュ監督/179分/フランス
原題:La vie d’Adele : Chapitres 1 et 2

『キャロル』(2015)

@via:https://carolfilm.com/

ミステリー作家 パトリシア・ハイスミスが、彼女自身の体験を基に書き、1952年に大ベストセラーとなった原作を元に作られた一本。1950年代のNYを舞台に、高級百貨店でアルバイトをする若い女性と、娘を持つ女性の間に芽生えた恋情を描いています。

本作品は、第88回アカデミー賞 作品賞・監督賞の最有力候補と言われたものの、ノミネートされることはなく、各所から惜しまれる声が上がりました。

トッド・ヘインズ監督/118分/アメリカ・イギリス
原題:Carol

『ムーンライト』(2016)

@via:https://www.lensculture.com/

第89回アカデミー賞で、クィア映画としてはじめて作品賞を受賞した一本。「同性愛を扱った映画は作品賞を獲れない」というジンクスを打破し、まさに歴史を変えた作品となりました。

物語はマイアミの貧困地域で育った主人公シャロンが、黒人としてのアイデンティティやセクシュアリティを模索しながら、人生を歩んでいく…というもの。幼少期・青年期・成人期の3つの時期にわたって、家族や友人との関係や成長が描かれています。

キャスト全員が黒人であることでも話題になった本作品は、アカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞だけでなく脚色賞・助演男優賞の3部門を受賞しました。

バリー・ジェンキンス監督/111分/アメリカ
原題:Moonlight

@via:https://www.austinchronicle.com/

今回はクィア映画の歴史と、映画史に残る名作を紹介しました。

これらの作品では、各時代において“クィア”に生きていくということがいかに難しかったのか、そんな中で生き抜いてきた彼ら/彼女らの強さ……また、時には未来への希望が描かれています。

あなたも、是非これらの名作たちに触れてみてはいかがでしょうか。

「夜なかなか寝付けない」「いつも疲れている」

日々の暮らしの中で感じる悩みや疲れ。その原因は、過去や未来に縛られる脳のクセにあるのかもしれない。

例えば、会社で大きなミスをしたとき。あなたは迷惑をかけた人に謝罪し、取引先や上司への説明を終え、事態は解決したとしよう。

ところが、あなたの脳はあなたのミスを終わらせない。夜ベッドに入ったとたん、「あのときこうすればよかったんだ」と過去の行動を悔んだり、「もう出世できないだろう」と未来を悲観したりし、終わりのない焦りや不安に駆られることになる。

結果、枕元のスマートフォンに手を伸ばし、インターネットを通して不安や焦りを解消しようとしてしまう。

「会社 ミス 落ち込む」「部下 ミス どう思う」といったキーワードで検索し、終わりのない不安と焦りの解決策を探すのは、つらい。

進化しすぎたデバイスと古代のままの脳

ここ十数年で一気に進化したデジタルデバイスやSNSは、脳の特性を知ったうえで、私たちの行動に大きな影響を与えている。

例えば、ユーチューブショートを数時間続けて見てしまったり、インスタグラムのハートマークの数を異常に気にしてしまったりするのは、脳の特性(次々と現れる新情報や、誰かに評価されることが好き)を利用した中毒とも呼べる現象。

対する人間の脳は、1万年前と同じ。脳の特性を利用した刺激をデバイス越しに受け取っても、その通りに動いてしまい、デバイスに影響されていることにも気づけない始末。

スウェーデンの脳科学者、アンデシュ・ハンセンは、私たちがデバイスに合わせるのではなく、デバイスが私たちに合わせるべきだと主張している。
数あるテック企業が、私たちの脳に合わせたデバイスを作るのを待つのも手だが、情報を受け取る側の私たちにもできることがあるはず。

例えば、デジタルデバイスの電源を切ってみる。デジタルデバイスと私たちの間に物理的な距離を置いてみる。

このような取り組みで目指す先にあるのが、デジタル・ウェルビーイングだ。

デジタル・ウェルビーイングを実現するマインドフルネス

デジタル・ウェルビーイングを実現するには、小さなことを習慣化させることが大切。なかでも、場所を選ばず、お金もかけずにできるマインドフルネス(瞑想)がおすすめ。

マインドフルネスとは、瞑想などを取り入れた脳の休息法のこと。マインドフルネスでは、未来や過去に触れず、今この瞬間に注目するのが特徴だ。

例えば、椅子に座ったとき。何も考えずに座るとき、その後にすべきこと(書く、読む、食べるなど)に気を取られていることがほとんど。

一方、マインドフルネスでは、椅子に座っていることに集中する。背筋が伸び、足の裏が地面についていて、息を吸ったり吐いたりしている感覚に浸かり、雑念を無くす。

このように、意図的に今を意識する習慣付けをすることで、過去や未来の不安や焦りに対応できる心をつくるのがマインドフルネスだ。
焦りや不安で自分の心がゆらぐ場面に遭遇したときに、マインドフルネスの習慣があれば、デジタルデバイスに手を伸ばす必要はない。

今に集中することで、焦りや不安などの雑念を減らし、平常心に戻る。マインドフルネスは、常にベストコンディションを保ち、デジタルデバイスと距離を置くのに最適な方法といえる。

小さな心の変化を暮らしに取り入れよう

デジタル・ウェルビーイングやマインドフルネスは、周囲の情報や人々とのかかわり方にも活かすことができる。デジタル・ウェルビーイングやマインドフルネスで得られる、他者との関わりに活きる視点を3つ紹介しよう。

①オープンな心
朝、窓を開けて心地よい風を浴びると気持ちがいいと感じたり、洗いたての布団のやわらかさに幸せを感じたりする心のこと。

自分の感情や感覚に気づきやすくなるため、快適な空間づくりや、趣味や生きがいを見つけるのに役立つ。

②判断しない
インスタグラムで、友だちが充実した1日を送ったという投稿を見たとき。自分の1日と比べて焦るのではなく、ありのままの事実として受け取ることができる。

彼女は彼女、自分は自分という線引きをすることで、焦りや不安に支配されることがなくなる。

③思いやり
ニュースサイトを読み続け、気が付けば2時間経ってしまっていたとき。自分を責め、恥じるのではなく、教訓として次に活かす余裕が生まれる。これはミスを犯した他者に対しても同じで、思いやりを持った対応ができるようになる。

デジタル・ウェルビーイングを通じて、心の平穏を取り戻す。そうすることで、自分の焦りや不安を解消するだけでなく、周囲へのポジティブな態度として現れてくるようになる。

わたしたちの暮らしがもっと豊かになるように、できることから始めていきたい。

参照元:アンデシュ・ハンセン.スマホ脳.新潮新書.2020-11-18(参照 2023-04-25)
Shaping Design.”How digital wellness is bringing mindfulness to design”.2020-11-18.https://www.editorx.com/shaping-design/article/digital-wellness(参照 2023-04-25)
digitalwellbeing.org.2022-04-08.“https://digitalwellbeing.org/seven-dimensions-of-digital-wellbeing/”(参照 2023-04-25)
Netflix.”監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影”.2020.https://www.netflix.com/title/81254224(参照 2023-04-25)

毎日自由に移動して、好きな場所で過ごし、生きるために必要な食材は、全て周辺地域で取り揃えることが出来る。
そして1日の労働時間は、おおよそ3~4時間。
このような生活はまさしく、多くの人が憧れる場所・時間・お金に縛られない、新しい生活だと言えるのではないだろうか。
しかし遠く離れたアフリカには、古くからこのような暮らしを続けている“ブッシュマン”と呼ばれる人々がいる。
1日3~4時間の労働で生活に必要なエネルギーを蓄えることが出来て、自由に移動が出来るだなんて、とても効率的な暮らしだと思える。

この記事では、そんなブッシュマンの生活を紹介する。遠く離れた場所で暮らす彼らの暮らし方を知り、自身の生き方や価値観を見つめなおすきっかけになるかもしれない。

彼らがブッシュマン。

狩猟採集民族「ブッシュマン」

南部アフリカの乾燥地帯、カラハリ砂漠で生活している先住民族、ブッシュマン。全人口は約10万人ほどで、ボツアナ・ナミビア・南アフリカ・ザンビア・アンゴラなどの広い範囲で暮らしている。彼らの暮らしの最大の特徴は、移動と狩猟採集をしながら生活をしているということ。
移動をしながら、簡易的な住まいをつくったり、周囲で捕らえた動物や収穫した野生の野菜などを食べて暮らしているのだ。
つまり、そんな彼らにとっての労働とは、簡単な住居を作ることや、獲物や野菜などの食材を集めて調理をすることだ。労働時間はたったの3~4時間なのだとか。

ブッシュマンたちが住む、カラハリ砂漠。

しかし1970年以降から、政府による近代化政策の一貫として、ブッシュマンを定住化させ、賃金労働を行うことを促す取り組みが進められている。
なぜなら政府は、移動生活をする人々がたくさんいることによって、国民の管理が難しくなるから。そして何よりも、安定した生活を営んでほしいということが政府の望みだった。狩猟採集に頼る「野蛮」な生活よりも、賃金労働をしてお金をもらって好きなものを買う、学校や病院に通うことが出来るというような私たちの暮らしに馴染みのある暮らし方にシフトするほうがよっぽどいいだろう、と。

そして政府から仕事や住居が与えられたブッシュマン。彼らが住む家が立ち並ぶ1,000人規模のコミュニティが複数作られ、一部には事務職・工事現場や学校建設などの公共事業に関する仕事が、また一部には農地や家畜など農業や畜産業が行える環境が与えられた。

いきなり住む場所を与えられ、賃金労働を強いられたブッシュマンは一体どのような行動を起こしたのだろうか。

定住か、狩猟採集か。ブッシュマンがとった行動とは?

なんと彼らは、賃金労働や定住地での暮らしをあっさりと受け入れたのだそう。
学校や病院にもそこそこ行くようになり、定住地に住み、賃金労働も彼らにとっては新鮮で前向きに取り組みはじめた。家畜がもらえるのなら喜んでもらうし、畑もやるようになった。そんなブッシュマンだが、面白いことに狩猟採集も辞めずに続けているのだとか。

獲物を狙うブッシュマン。

なぜ1つのことしかやらないんだ?

賃金労働を始めたブッシュマンたちは、スーパーでフライドチキンを買うようになっても未だに時に狩猟採集を続けている。時に定住地に住むこともあれば、移動生活をするときもある。
自分で動物を狩って食料にすることと、スーパーでお肉を買うということ。定住地に住むことと、砂漠の中で移動生活をすること。
これらの両極端にあるような2つのことが、無理なく共存しているのが現在のブッシュマンの暮らしなのだ。
そんな彼らの行動を不思議に思う方も多いのではないだろうか。開発を進めていた政府の誰もが、街に来たら狩猟採集をやめるだろうと思っていたという。

彼らが狩猟採集をやめなかった理由、それは、

彼らは1つのことに専念するということに価値を見出さないからなのだそう。

彼らのコミュニティには、狩猟採集している○○さん、工事現場で働く○○さんなどというくくりはない。一つの仕事や暮らし方に特化せず、みんなで役割や暮らしをシフトしているのだ。
そしてブッシュマンは、政府の役人たちのことを「1つのことをするヤツら」と呼び、1つのことだけをすることはおかしい。不思議だ。というように捉えているのだとか。

いつ雨が降るか分からないカラハリ砂漠での暮らし。
昨日獲物が獲れたからと言って、明日も同じ場所で同じものが獲れるわけではない。
常に変化の激しい不安定な暮らしを営むブッシュマンだからこそ、常に新しいことを受け入れながら変化し続けることの出来る強さを持ち合わせているのかもしれない。

何か1つのことを選ばなくてはいけないなんて、ない

日本での「キャリア形成」と呼ばれるものには、何か一つの道に特化するために、ステップを踏んでいくというスタイルがあるように感じる。「二兎を追う者は一兎をも得ず」なんて言葉もよく耳にする。

しかし、
私たちはなぜ、新しいことを始めると古いことをやめなければならないと考えているのだろう?
なぜどちらかを選ばないといけないと思っていたのだろう?
どちらかを選ばないとならないと思っていたことがあったけれど、案外両方やることも出来たのではないか?

ブッシュマンの生活に触れると、そのようなことを考えさせられないだろうか?

出会いや別れ、新生活のスタートなど生活に変化がある人も多い春。
新たな暮らしに一歩を踏み出した方も、何か新たなことに挑戦したいけれど、まだ一歩を踏み出せずにいる方もいるかもしれない。
何かを始めるときに何かをやめなくてはいけないわけではないし、一度決めた道をずっと貫かなくてはならないわけではない。
そして誰だって、いつだって何にでも挑戦出来るし、何にでもなれる。

読んでくださった方が、そんなワクワクした気持ちで日々を過ごせることを願っている。

参考文献
1. 書籍:松村圭一郎編, 働くことの人類学, 株式会社黒鳥社, 2021年
2. 書籍:丸山淳子, 変化を生きぬくブッシュマン -開発政策と先住民運動のはざまで-, 世界思想社, 2010

暮らしの実践者に問いかけ、生きかたのヒントを探究する「Life is beautiful」。
今回は、鎌倉の古民家で北欧の考え方を取り入れながら暮らす、YADOKARIのセールスユニットで働く遠藤美智子さんを訪ねました。

理想と現実の中で自分を適合させていた過去

――遠藤さんの今の暮らしに辿り着くまでの経緯を教えていただけますか?

遠藤:小さい頃、家と言えば三角の屋根で、家族で安らげるかわいい空間みたいなイメージがすごくあったのですが、実際の自分の実家は平らな屋根の鉄骨造で、どうして自分の家は三角屋根じゃないのだろうと漠然とした疑問がありました。

でも街を歩いていると、窓から温かい光が漏れているすごくかわいい家が日本にもあって、心がドキドキするような憧れを覚えました。その家が輸入住宅だということを母に教えてもらい、それからいつか自分もそういう家に住みたいと幼いながらに思っていました。

――そこから家に対する思いがあったんですね。

遠藤:間取りを見るのも大好きでしたし、ずっとその気持ちはぶれませんでした。

でも小さい頃に将来の夢を聞かれた時に、職業を答えないといけないみたいな風潮があるじゃないですか。 本当は”かわいい家に住みたい”という夢があるのに、ひとまず素敵な職業として思い浮かぶ看護師さんと言いながらも、どこか心の中ではモヤモヤしていて。

理想の自分と社会的に人に見られる自分との溝にもがきながら、社会的な自分を適合させて過ごしていたように思います。

――同じように自分の気持ちに蓋をして過ごしている人もたくさんいると思います。

遠藤:でも自分の心の中にはずっとかわいい家への思いがあったので、せめてそれに携われる仕事をしようと思って輸入住宅を扱う会社に就職しました。

初めて北欧を訪れたのは会社の研修でスウェーデンに行ったときです。実際に行ってみると、森の中にかわいい家や湖があって、どれだけ田舎に行っても国民全員が家を大切にしていることがわかりました。その豊かな暮らしの背景には充実した社会制度があり、「私が生きたいのはこういう世界だ!」という感覚になりました。

ただ、その時は結婚やキャリアなど、社会的な自分との葛藤もあり、北欧に住むという決断はすぐにはできませんでした。

――一度北欧からは離れたのですね。

遠藤:はい。ただその後、「こんなに一生懸命仕事も家庭も頑張っているはずなのに、幸せじゃないのはなぜなんだろう。」と考えるようになりました。そして、やっぱりスウェーデンにもう一度行きたいと思い、ひとりで行ったんです。みんながどういう価値観を持って暮らしているのかもう一度確かめたくて、現地の人と触れ合いながら知っていくと、家はもちろんのこと、文化や国の制度なども含めてやっぱり私は北欧が好きだと再確認できました。その後、様々なことが重なり、離婚をし、新卒から務めた会社を辞め、デンマークに留学することを決めました。

何もなくても満たされていたデンマークでの生活

――デンマークではどんな場所に住んでいたのですか?

遠藤:フォルケホイスコーレという全寮制の学校に通っていて、家自体は最寄りのバス停まで徒歩40分の田舎にありました。自転車で小一時間ほどで街には出られるのですが、街に出なくても自然に囲まれた環境で、仲間がそこにいて、美しい景色もあって、特に何をする訳でもないのにすごく満たされていました。

娯楽という娯楽がなくてもすごく豊かに一年間を過ごすことができたので、都会に住むことだけが全てじゃないという概念にもそこで出会えました。

――学校ではどのような勉強をするのでしょうか。

遠藤:そこでは、様々な分野の中から自分の興味のある科目を選択でき、私はパーマカルチャーや陶芸、ヨガ、保存食などを学びました。

印象的だったのは陶芸の授業で楽焼という日本の焼き物の手法を学んだり、保存食の授業でピクルスや果実のシロップを作ったりしたことで、北欧だけでなく、日本にも素敵な文化や技術がたくさんあることに気づいたことです。

――生活の中で何か印象的なことはありましたか?

遠藤:北欧では抹茶がブームだったので、友人に茶筅と抹茶をプレゼントしたのですが、どうやって使うのかと聞かれた時に、どうやってお茶をたてるのか、何も説明ができませんでした。海外の人が興味を持ってくれている日本の文化を私自身は何も知らなかったのです。

それと同時に、北欧じゃないとできないと思っていたことは実は日本でできることもたくさんあって、豊かな暮らしは北欧にしかないと決めつけて、日本のことを知ろうとしなかったのは自分自身だったことにも気づかされました。

やりたかったことを叶えるために選んだ場所

――そこから日本に戻ることにしたのはきっかけがあったんですか?

遠藤:北欧に行って長年自分がやりたかったことを叶えて、いろんなことを学んだときに、これを人に還元しなきゃいけないって思ったんです。

北欧でしか豊かな暮らしができないとなると、元々日本で悩んでいた私のような人達が全員北欧に行ける訳ではないし、この暮らしは日本でも実現できることを私自身が証明して、過去の私のような人に手を差し伸べたいという貢献感や勝手な使命感みたいなものが湧き出てきて、日本に帰ろうと思いました。

――この鎌倉の地を住む場所として選んだのには理由があったのでしょうか?

遠藤:家を探すとなるとこれまでは駅や勤務地までの時間などを基準に探していましたが、北欧での生活を経験して、都会の便利な生活じゃなくても毎日が豊かに暮らせることがわかったので、利便性ではなく環境を重視して家を探しました。ここは駅から徒歩50分ですが、目の前に山や綺麗な川もあって、とても気に入っています。

――遠藤さんの家は日本の居心地の良いアイテムが並んでいて落ち着きますね。

遠藤:元々輸入住宅のかわいい家に憧れていた当時の私からしたら、和室に住むとは思ってもみませんでした。でもなんとなく日本の文化も素敵だなと思いながら帰国したので、日本の文化と私が学んだ北欧の文化を合わせて暮らしてみたいという思いもありました。

新品の家具家電で綺麗に揃えるのではなく、その人のこだわりや生きざま、歴史を一つ一つに反映されているインテリアはすごく美しいということも北欧に行ったからこそ知れたことです。私の家では世界中で買い付けてきた思い出の雑貨を設えています。

自然に寄り添い、幸せを自分で作り出すターシャ・テューダーの考え方


――現在遠藤さんはどんな働き方をされていますか?

遠藤:私の中で「働く」という言葉自体に違和感があって、「生きる」という言葉をベースに考えると、エネルギー補給をするための食べ物と質の良い睡眠のための家があれば生命は維持できるなぁと考えていて。

今は働いたお金で食べ物や家を確保していますが、お金を払わなくてもそれが手に入れられたら、働く必要ってないんじゃないかと実は思っているんです。

――自給自足の生活ということでしょうか。

遠藤:そうです。自分で家を建てて、庭の畑で野菜を育てれば、働かなくても生きていけるのかもしれないと思っていて、いつか実験してみたいと思っています。でも一方で社会的な自分を大事にしている所もあって、社会や人に求められたり、働いたことが結果に結びつくととても嬉しいです。

それはさっきの貢献感や人のために何かしてあげたいみたいな気持ちが自分の中にあるからで、「働く」や「稼ぐ」という言葉ではなくて、好きなことで、かつ人の役に立つことをしてお金を「いただく」という時間を増やしていきたいですね。

――家に人を呼ぶのもその一つに繋がるのでしょうか。

遠藤:そうだと思います。昔仕事で疲れ切っていた頃、アメリカのガーデナー、ターシャ・テューダーの言葉や生き様に感銘を受けて、自分の心に正直に生きる大切さを再確認し、それも人生の軌道修正ができた大きなきっかけでもありました。この家での暮らしが、誰かにとって暮らしや生き方をちょっと変えてみる、ヒントやきっかけになれたらいいなと思っています。

なので、これからはたくさん働いて、稼ごうという気持ちより、「いただいた」分だけ、人に還元できるコンテンツをどんどん増やしていきたいという気持ちが大きいです。

――家の中で一番今気に入っている所はありますか?

遠藤:一つ一つをセレクトしているので全部がこだわりポイントですが、最近買ったこのロッキングチェアは特にお気に入りです。ロッキングチェアは揺れる空間も必要ですし、リラックスしている時間じゃないと座れなくて、場所的な意味でも時間的な意味でも、暮らしの余白の中に生まれる幸せな時間の象徴だと思っています。

それが手に入れられたことで、ようやくそういう時間と場所を持てるようになったのだと思いましたし、この鎌倉での暮らしに慣れて余白が生まれてきたんだなと気付かされました。

豊かさを感じながら過ごす日々

――ここではどう一日を過ごしていますか?

遠藤:晴れた日には、朝に山に登っています。山頂から富士山や遠くの海を見たり、寝転がって空を眺めたり、朝日を浴びてリフレッシュして、富士山に雪が積もる時期になってきたとか、葉っぱが紅葉してきたとか、四季の移ろいを感じることもできます。

街がクリスマスムードになってきたとか人工的なものではなく、自然の中で季節の豊かさを感じるのが毎日のルーティーンです。

――自然の中で季節を感じられるのはこの場所ならではかもしれないですね。

遠藤:帰ってからは友達と一緒にお茶をしたり、みんなでゴロゴロしながら寝転がってお喋りをしたり。ここは落ち着くねとか帰りたくないなとか言われると本当に嬉しいです。遊園地に行かなくても、カフェに行かなくても、ケーキやご飯など体にいいものを自分たちで作って食べて、この家で一日を大切なひとと過ごすことが本当に幸せです。自然もすぐ近くにあって、すぐにお散歩にも行けますし、こんなは贅沢ないなって思います。

この家に引っ越してから本当にたくさんの人が遊びに来てくれて、人をおもてなしすることが楽しくて、生きがいみたいになっていますね。

――日が落ちた後はどのように過ごしていますか?

遠藤:ここはお店がほとんど近くにありませんし、夜は家で料理をします。キャンドルを焚いてご飯を食べるとレストランにいるみたいな気分になるんです。

高級レストランって大体薄暗くてキャンドルが焚いてありますよね。家にいながら素敵なレストランの気分を味わえるからオススメですよ。

常に内省をして、心の中のいいことも悪いこともアウトプットする

――Instagram(@o0michi0o)では自分の内面を言語化されている投稿も多くて素敵だなと思うのですが、どんな時間に自分と向き合ったりメディテーションしていますか?

遠藤:これまで私なりのいろんな苦難がありました。それらを振り返ったり、人生哲学みたいなことは、常に考えています。場所を整えたり自分で意識をしなくても歯を磨いている時や何気ない日常の中にヒントがたくさん転がっていると思っています。

――常に自分を内省できるってすごいことだと思います。

遠藤:辛かったことやネガティブなことを考えると苦しくなるので考えないように蓋をしたくなったりしますよね。それに、哲学やポエムみたいなことを考えたりしているとちょっと小馬鹿にされたりすることってあるじゃないですか。でも、ポエムが浮かぶ人生ってなんて豊かなの!って私は思うんです。

いい所だけを切り取って発信をしたり、その部分だけを見せるのは簡単ですが、完璧ではない所もあるからこそプラスの面をより感じられると思うので、思いついた時に発信をしています。

側面を切り取らないという美しさ

――いろんな軌跡を辿った今の遠藤さんにとっての「Life is beatiful」をぜひ教えてください。

遠藤:本当に私は家が好きで、「家が変われば人生が変わる」というのを自分の中のキャッチフレーズとしています。

心に余裕がないと家も散らかるし、家はその人の生きざま全てが反映されるので、何を美しいと思うかは人それぞれですが、やっぱり自分にとって美しいと思える家に住むことで人生も美しくなると思っています。

――その美しさは遠藤さんにとって何ですか?

遠藤:Beautifulと言うと美しい、綺麗などポジティブなイメージがありますが、そうではない側面もすべて合わせたものがBeautifulではないでしょうか。

失敗や挫折は人生に大きな学びを与えてくれます。ポジティブな面だけを捉えようとするのではなく、いろんなことがあるからこそ人生が美しくなるのだと今では考えています。

――今までの自分も肯定されているようで、ポジティブな気持ちになれる考え方ですね。

遠藤:暮らしはいいこともそうでないことも含めて日々の積み重ねなので、今日明日完成するものでもないですし、終わりもないのですが、だからこそ今この瞬間から人生はいつでも変えられるものだと思っています。

自分がいいと思ったものを暮らしに取り入れてみたり、日々の暮らしの小さなことから向き合っていけば良いと思っています。一つ私からおすすめできる、今日から取り入れられることとしたら、キャンドルを焚いてみることでしょうか。夜にキャンドルの火を灯しながらゆっくりと過ごすと、豊かな気持ちになって一日の疲れも取れますよ。

それなので、まずはみなさん、キャンドルを焚こう!笑

今の自分があるのはそれまでの葛藤や苦労があったからこそで、その人の暮らしを形成する全てが生きざまであって「家」という軌跡になる。
いい面だけを人に見せたり切り取ることは簡単だが、そこから逃げずにまっすぐに向き合おうとする姿がインタビューを通して垣間見え、そんな遠藤さん自身にも美しさを感じた。

Instagram/ @o0michi0o

スイスの暮らしを覗いてみると、あらゆるところに “シェア”が根付いていることが分かる。

マイホームより多数派な暮らし方

まずは、家。物価が高く、また山に囲まれて平地が少ないスイス。集合住宅に住む人々は、国内の6割にのぼるといわれている。

シュヴィーツ州・キュスナハトの「Residential Building in Küsnacht, Switzerland」は、高齢者向け集合住宅。

via:https://architecturephoto.net/134752/

この住宅を手がけたのは、建築家アネット・ギゴンとマイク・ゴヤー。チューリッヒ湖の絶景を楽しめるような造りだけでなく、共有スペースの確保も、クライアントの大きな要望だったそう。

via:https://architecturephoto.net/134752/

地下1階には、居住者と商業テナントのための収納スペースや、共用ランドリールームが用意されている。

via:https://architecturephoto.net/134752/

洗濯機の共有は、この国では一般的。一家に一台を所有するのではなく、集合住宅内の住民とともに使っている。

さて次は、チューリヒ州のロイチェンバッハ地区にある「Mehr als Wohnen」。“暮らし以上に”を意味するこの名の組合住宅も、人と人がモノを通して、暮らしも分かち合うスタイルが魅力だ。

via:https://www.swissinfo.ch/jpn/society/45596302

この地区はもともと工業・商業用地だったそう。それが近年では団地やタワーマンションの建設が進み、2040年までに人口が25%増加すると見込まれている。

「Mehr als Wohnen」の周りには、思い思いに過ごせそうな広場がある。それだけでなく、保育園や幼稚園から小学校、小さな個人店やサッカー場まで。子どもから大人までのびのびとできる施設が、この小さな区画内に揃っているのだ。

こちらにも、もちろん共用のランドリールームはある。

via:https://www.swissinfo.ch/jpn/society/45596302

さらに屋上には、居住者全員が使えるサウナルームも。

via:https://www.swissinfo.ch/jpn/society/45596302

それだけではない。子ども向け屋内遊戯室、コワーキングスペース、会議・セミナールーム、屋上テラス、音楽ルーム、工具レンタルや自転車の空気入れができる作業スペース、ゲストハウス、ビストロ、菜園スペース……。暮らしの中で、ふと必要になったときに安心して使える共用スペースが目白押し。ほとんど完備されていると言っても良いのではないだろうか。

自動車から遊具まで。買うのではなく、一緒に使う

世界でもシェアリングの歴史が古いスイス。特にカーシェアリングは、スイスが発祥という記録もある。まず1948年に、チューリヒの住宅協同組合が車両共同使用プロジェクトをスタート。さらに1987年にカーシェアリング協同組合「モビリティ」が設立され、現代の“カーシェアリング”により近い形態が生まれた。

さらに近年は、国内のスタートアップ企業によるシェアリングカー「ENUU」も話題に。自動車とバイクの中間である「小型4輪モビリティ」の電気駆動車で、免許は不要なのだとか。

via:https://moov.ooo/article/5eb9f9021b05ee0697dd28eb

世界で広まる自転車シェアリングは、もちろんスイスでも進んでいる。2020年、シェアリングサービス「Vélo Partage(ベロ・パルタージュ)」がスタートした。スマホ一つで借りることができ、ジュネーブ州内の各所で返却可能だ。

via:https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/08/5e84b588d2d8ba54.html

そしてもう一つ面白いシェアリングの形に、「Ludothek(ルドテーク)」がある。

via:https://jneia.org/190612-2/

アメリカやノルウェーが先駆けと言われている、遊具のレンタルサービス。スイスでは、1972年頃に最初のレンタル施設が設立された。2011年には、全国組織「ルドテーク連盟」に加入する施設は、全国で約400箇所に達した。

via:https://jneia.org/190612-2/

1970〜80年代のスイスで、遊具は一般的に高価なものとされていた。しかし、木製の遊具や家族で楽しめるゲームを求める子育て世代は多く、そこから“遊具をレンタルする”という発想が生まれたのだとか。

遊具は、小さな頃の思い出を彩ってくれる。しかし、意外とすぐに役目を果たしてしまうものではないだろうか。そういったものをわざわざ買わず、地域の子どもたちみんなで共有できたら素敵だ。

“モノの共有”から、“人の交流”が生まれる

さらに、最近注目を浴びているのが、2012年に始まったプロジェクト「Pumpipumpe(プンピプンペ)」。自宅のポストに「わが家が貸し出せるもの」を表すシールを貼り、必要な人からのコンタクトを待つ。アナログで簡単なシステムだ。

via:https://ideasforgood.jp/2022/04/20/pumpipumpe/

Pumpipumpeのメリットは、要らないものがゴミにならないこと、欲しいものがお金をかけずに手に入ること、だけではない。人と人の交流だ。わざわざ地域の行事や会合へ参加せずとも、ご近所付き合いのきっかけが生まれる、素敵な取り組みといえる。

via:https://pumpipumpe.ch/en/supporter-en/

スイスの人々のシェアリングは、モノの共有だけには終わらない。人と人の、“暮らしの共有”だ。エコや節約だけではない“楽しさ”、“温かさ”がそこには溢れている。

参照元:
https://architecturephoto.net/,
https://www.swissinfo.ch/jpn,
https://moov.ooo/bouncy,
https://www.dir.co.jp/,
https://www.jetro.go.jp/,
https://www.jetro.go.jp/,
https://jneia.org/,
https://ideasforgood.jp/,
https://pumpipumpe.ch/en/home-en/

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横浜市保土ヶ谷区の高架下に展開する、YADOKARIの生きかたを遊ぶ住まい「YADORESI」は入居者募集中!

全22部屋の個室(1R・シャワーブース・トイレ付)と、各個室に付帯し小商いや自己表現が可能な「はなれマド」、リビング・キッチン・ランドリールームなどの共有部から構成されており、個性豊かな住人が集い暮らしながら、新たな自分と生き方の選択肢を探求・挑戦できる住まいです。

特徴

①“生きかたを、遊ぶ“星天qlayの店舗や暮らしを共にする仲間、星天のまちとの出会い・つながり。

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隣接する北欧カフェ「ROBERT’S COFFEE」 と、協働制作スタジオ 「 PILE」で、毎月使える!住人限定の特典をご用意。
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③全部屋に付帯する「はなれマド」
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公式HP・申し込みはこちら:https://yadoresi-hoshiten.life/

 

みなさんタイニーハウスと聞くと、どんな家を思い浮かべるでしょうか?きっと小さな限られたスペースに、キッチンやシャワー、ダイニングや寝室がパズルのように組み合わさり、小さな宝箱のようにぎゅっと凝縮されたようなスペースをイメージするのではないでしょうか?今日ご紹介するイタリアのタイニーハウスクリエイター、レオナルド氏のタイニーハウス、“aVOID”はその名の通り一見”何もない空間”。今回は、その魅力と彼の暮らしの美意識に迫ります。

レオナルドさんとは

今回のタイニーハウスクリエイターインタビュー企画、トップバッターを快く引き受けてくださったのは、イタリアで注目されるタイニーハウスクリエイターのレオナルド・ディ・キアラ氏(Leonardo Di Chiara)。イタリアのペーザロ(Pesaro)在住の30歳の建築家です。現在はTinyhouse Universityの理事を勤めながら、フリーランスの建築家として世界中でタイニーハウスをはじめ多くのプロジェクトを手がけています。

“aVOID”とは

初めて”aVOID”を見た時は、今までのタイニーハウスの概念が一気に覆されるような感覚がありました。ただでさえ限られたスペースに、日常に必要なものを全て詰め込むだけでも大変なところに、何もない空間を作れるとは考えてもみませんでした。”aVOID”は全ての家具や機能が壁の中に収納されているのです。これを聞いただけで、ワクワクしますよね。まるでトランスフォーマーの世界のようです。さて、どんな風に家具が現れるのか、まずはそのデザインのきっかけからご紹介していきましょう!

“aVOID”が誕生するきっかけ

まずは、どのようにしてこの斬新なアイデアが思いついたのか尋ねてみました。

この全てを収納するアイデアは、「どのようにしたら小さなスペースを常に物が溢れず綺麗な状態を保てるか」という問いから始まったというレオナルド氏。

落ち着いてストレスのない自分だけの空間が欲しかった彼は、必要な時に必要なものを取り出せるように全てを収納し、グレーの何もない空間を作り出すことで自分だけの空間を確保することに成功しました。この空間こそが、この”aVOID”の名前の由来です。

自分だけの空間というと、タイニーハウスという小さな家自体が既に自分だけの空間ではあるのですが、そこに物も存在しない空間こそ、真の自分だけの空間だと彼は言います。そして、そんな空間を彼はこう表現します。

「ここはまるで白いキャンバスのように、いつでも自分の生き方を創造できる場所なんです。」

全てのものを収納すると、またゼロからのスタートが切り出せる家。彼にとっては、感覚的に毎日自分の家を作っているようで、時にはデスクで仕事をし、時にはテーブルを広げ友人を呼び、ベッドを広げて眠る。翌朝には全てをもう一度収納して、この日はどんな家にしようかと考える。そして、その作業は永遠に終わりがありません。タイニーハウスがさまざまな場所に移動できるのと同じように、家も固定されずにいつでも変化できるところが、この”aVOID”の面白さだとレオナルド氏は言います。

タイニーハウスと住む土地との関係性

そんなレオナルド氏はタイニーハウスを牽引し、ドイツはベルリン、スイスのチューリッヒやイタリアのローマなど、ヨーロッパの大都市を旅した後、現在はイタリアの彼の故郷、ペーザロ(Pesaro)にあるカントリーサイドで暮らしています。都市にあるタイニーハウス、田舎にあるタイニーハウス、それぞれの魅力を伺ってみました。

「私の夢は中心地や様々なものにできる限り近い場所に住める家を持つことでした。」と語るレオナルド氏。

都心部で家を持とうと思っても、古くて狭くておまけに高い。そこで思い付いたのが両側が建物に囲まれた狭い土地にもフィットする、テラスハウスのようなデザインのタイニーハウスでした。つまり、隣の建物に近づけるように、長手方向には窓が一切ないのです。

高層ビルが立ち並ぶ都市部に対照的なタイニーハウスで暮らすことに成功したある日、彼に転機が訪れます。さまざまな都市を旅している時、イタリア・トスカーナ地方の田舎町に住む友人が彼を招待してくれたのです。

「初めて自分のタイニーハウスが田舎町にある姿を見た時、本当に大きな衝撃を受けました。そして、この家の可能性を理解したのです。この家にはタイヤがついていて、一緒に移動ができる。つまり、まだ誰も住んだことのない場所に住める可能性があるのだと。」

この時をきっかけに、自然や太陽、自分を取り巻く環境と素晴らしい関係を築けることに気づいたレオナルド氏。ただ最終的に大切なのはバランスなのだと彼は言います。都心部なら多くの人と繋がれる。でも田舎なら自然や自分自身と繋がれる。現在は田舎町に住む彼は、自分らしくいられて、誰もいない場所で自分のやりたいことができるのはとてもよかったそうです。

ただ、誰にも未来のことは分からない。コロナの前はミラノに行く予定を断念し、今の暮らし始めた彼も今は田舎暮らしが好きだったとしても変わるかもしれないと彼は言います。

「タイニーハウスの利点は、永遠に決める必要がないことだと考えています。」

大人になると、誰に言われる訳でもなく、なんとなく安定しなくてはならないというプレッシャーを誰もが一度は感じたことがあるのではないでしょうか。それがどこかで自分を制限してしまい、苦しいと思う人もいると思います。本当は、家も生き方も、決める必要なんてないのかもしれません。

家族でタイニーハウスに住むことは可能?

一方、家族が増えたりライフステージが変わっていくこともありますよね。“aVOID”は写真のようにゲストを招いて4人で食事をすることも可能です。それでは、家族でタイニーハウスに住むことは可能なのでしょうか?

家族だとしても誰もが自分だけの空間が必要だと語るレオナルド氏。”aVOID”は定住者一人用+ゲスト一人が泊まれるサイズとしてデザインされています。それでは、家族用のタイニーハウスはどのように変化を遂げる可能性があるのでしょうか?

現在5人用のタイニーハウスをデザインしているというレオナルド氏。そこには、一つの空間を家族分に分けるような工夫があり、各々が自分の空間を閉じたり開いたりできるのだとか。

そして、このアイデアはなんと日本のカプセルホテルからインスピレーションを受けたのだそうです。カプセルホテルに滞在した時、同じ空間に多くの人がいながらもm、例えその空間が小さかったとしても、音楽を聞いたりカーテンを閉じたり、確かに自分の空間だと感じられたと言います。

タイニーハウスのムーブメントはアメリカから始まり、どこか海を渡ってきた価値観のような気がしていましたが、言われてみるとカプセルホテルや都心での一人暮らしのアパートなど、私たち日本人ははもともと限られた空間で過ごすエキスパートだったのかもしれません。生き方の選択肢が変化し、増え続ける今、家族で暮らせるタイニーハウス、世界を旅する家族も増えていくのかもしれません。

家族の定義とは

ここで気になるのが、そもそも”家族”ってなんだろう。家と家族というのは、文字通り切っても切り離せない関係性でもあります。家族用のタイニーハウスをデザインしている彼に尋ねてみました。

「人にとって大切なもので、自分自身が感じるものであり、自分らしくいられ、頼れる場所。」

「自分が感じ、深く繋がった人のことを言うのだと思います

と答えてくださったレオナルド氏。時には自分一人きりでさえ、それも一つの家族の形になり得ると言います。

私自身もデンマークに留学中、ルームメイトと2人暮らしでした。彼のおっしゃる通り、彼女のことを心から信頼し、今思えばその時彼女は確かに、私にとって”家族”でした。タイニーハウスのような固定されない家での暮らしがあるように、家族もまた、定義を固定しなくてもいい時代。妻、夫、子供だけでなく、様々な形があり、そしてそれらが変わっていくことも、時には自分の人生にとっていいこともあるのかもしれません。

暮らしの美意識とは?

ここまで変化を喜んで受け入れ、自分の人生を作り上げているレオナルド氏。限られた空間の中、そして変化する生活環境の中でも、いつでも自分らしさを失わずにこのタイニーハウスで暮らすことができる、その暮らしの美意識に迫ってみました。

「美意識とは、自分が好きなものを持つこと、つまり必要以上のものは持たないこと」

何か欲しいものがあれば、自分が確信を持ったものを選ぶ。何かをデザインするのであれば、自分な必要なものだけにし、余計なものは加えない、そう意識しているそうです。そしてそんな自分の好きなものというのは、目でははっきり見えず、暮らしの流れの中にあるものだと言います。ご自身だけでなく、クライアントの家をデザインする時も、これを意識するそうです。その人の隣には、いつもどんなものがあって、その人の周りのものにはどんな流れがあるのか、それをしっかりと観察することで、その人らしい暮らしの美意識が見えてくるのです。

予測がつかないタイニーハウス

ただ、タイニーハウスだけは周辺環境も含め、自分の周りに何がくるかは予測がつきません。そこで前述の美意識の真逆の発想も使ったそうです。つまり自分の身の回りにあるものと完全に異なるもの、好きでないものをあえて使う。それがこの”aVOID”を真っ白にした理由だそうです。そうすることによって、自分の周りにあるもの、自分の好きなものがより一層引き立つのだと言います。

コロナ後の暮らしはどのように変わるのか

タイニーハウスと共に新しい暮らしを創り上げてきたレオナルド氏。そんな彼にとっても予想外だったコロナは、これから私たちの暮らしにどんな影響を与えてくれるのでしょうか。

「私たちは、自分自身を幸せにしてくれるものが何なのか、例えそれを今まで思いつかなかったものだったとしても、気づいていくと思います。」

長い時間何もない日々を過ごした人も多かったと思います。そんな時こそ、自分の心の声に耳を傾け、何が必要で、何が本当にいいものなのかを試す時間でもあったと彼は言います。イタリアでは、この時期テラスの重要性が再注目され、今ではテラスの無い家を買う人がほどんどいなくなってしまったとか。このようにテレビやソーシャルメディアの広告からではなく、自分の実体験を通して、自分自身の幸せに気づいていくのですね。これから多くの人が彼のいう”暮らしの美意識”、つまり自分の好きなものに気づき、必要なものを取捨選択しながら暮らす時代に変わっていくのかもしれません。

さらに、この機会に運動を始めたというレオナルド氏。ランニングや山にサイクリングにもいくのだとか。それまではいつも忙しく、運動をする時間を作らないと決めていたほど。ただ、今は健康にも精神的にもとても良いことに気づき、このようにして多くの人がものだけではなく、行動も含めて何が自分にとっていいものなのかを分かるようになってくると彼は言います。

次の目標や夢

時代の最先端を走り続けるレオナルド氏は、次はどんな夢を持っているのでしょうか?

「建築家としては、”レオナルドの家”ではなく、”みんなのための家”をデザインしたい」

他の人が望んでいるものを知ることが、建築家として難しいことでもあると彼は言います。現在はこのタイニーハウスを他の人に泊まってもらい、インタビューを重ねているそう。自分のアイデアをまずは自分自身が試し、そして他の人に経験してもらう。そしてその経験を基に、次は誰かの暮らしをデザインする時がきたのです。

またご自身の目標としてはこう語る。

「常に新しいことに挑戦していきたいです。常に自分が心地いい場所にいるだけでなく、やったことがないことや知らないことをやってみたい。」

既にこのタイニーハウスを通して多くの経験をされてきたレオナルド氏。それでも尚、新しいことに挑戦し続けようとする姿は、本当に勇気をもらいます。

「新しいことを始めるのは大変ですよね。でもそれによって冒険できたりたくさんの経験に出会えるチャンスができるんです。私の夢は常にそのような状態でいることです。常にそのような気持ちを持っていたいし、そういられる強さも持っていたい。恐れや制約を持たずに、新しいことに挑戦していきたいのです。」

今回インタビューさせていただき、”決めないことの必要性”を改めて考えさせられました。決めないことによる不安や、変化に対する恐れは、この時代多くの人が感じていたことではないでしょうか。逆を返せば、決めないことによる広がる可能性や、変化による新しい出会いや気づきなど多くの楽しみや喜びが私たちを待ち受けているかもしれません。

私たちも、タイニーハウスはもちろんのこと、生き方、考え方も彼のように柔軟に、そして私たち自身がその体現者として、多くの人に伝えていける存在でありたいと強く思うのでした。

 

Photo: ©︎ Leonardo Di Chiara

私達がこれから住みたいのは、どんな家だろう?

ハウスメーカーやマンション・ディベロッパーが提供する既存の住宅展示場やモデルルームから家を選ぶことに、違和感を覚える人もすでに多いのではないだろうか。その家で本当に暮らしたいと思えるのか。そもそも、自分はどんな暮らしがしたいのか。家のことを考えていくと、それは自然に「暮らし方」を考えることにつながっていく。

現代は、個人の志向や価値観が細分化されている一方で、テクノロジーの発達によって、地域や文化、世代、国家の壁をも超えて、同じ価値観で個人同士がつながる状況も同時に起きている。世の中が大きく変わる中で、未来の暮らしと、その器である家は、どのようになっていくのだろうか。

土谷貞雄さんは、暮らしに関するアンケートや訪問調査、企業コンサルティングを実施しながら未来の暮らしの在り方を提案し続けている、日本の暮らし研究の第一人者。未来の暮らしの展覧会「HOUSE VISION」(代表:日本デザインセンター所長 原研哉氏)の企画プロデュースを2018年まで8年間行い、現在は中国・深圳にて都市生活研究所を主宰。

「未来住まい方会議」は、「住」の視点で新しい文化を探求し、この分野で活躍するクリエイターやオピニオンリーダーを招いて、未来の暮らし方や家の在り方を一緒に考え、創造していくことを目指すイベントシリーズだ。

第4回目となる今回は、国内外を問わず世界の住まい方や家の在り方を研究し続ける、暮らし研究家 土谷貞雄さんをお招きし、未来の家と暮らしについてトークセッションを行った。

▼イベント動画を全視聴できます。レポートと合わせてお楽しみ下さい

https://www.facebook.com/yadokari.mobi/videos/637656310061938/

Facebook動画で視聴できない方はYoutube動画(こちらをクリック)も視聴可能です。

未来の家を考えることは、未来の可能性を広げること

2018年に北京で開催された「HOUSE VISION 3」には10棟の未来の家が提案された。「展覧会では答えではなくレファレンス(参照)を示している」と土谷さん。開催期間中は毎日、建築家はもちろん哲学者や経済学者、起業家などさまざまなゲストがトークセッションを行い、参加者と一緒に考え話し合う機会が設けられている。© HOUSE VISION. Photo: Nacása & Partners Inc

土谷さんは、2011年に始まった「家」を起点に未来を構想するプロジェクト「HOUSE VISION」を、建築家 原研哉氏と共に企画段階からつくってきた。2013年の東京を皮切りに数年ごとに開催されている展覧会では、さまざまな企業や建築家、クリエイター達がコラボレーションした「未来の家」が原寸大で建築・展示され、世界中から大勢の人々が詰めかける。3回目となった2018年9月には、北京「鳥の巣」前の会場に10棟を展示し、ハイスピードで進化を続ける中国において未来の暮らしを問いかけた。

土谷さん:「よく皆『未来について教えてください』って言うんです。僕も一生懸命答えてるんだけど、待てよ、と。やっぱり未来って分かんないなって、最近すごく思ってきたんですよね。“未来が分からない”ってことが分かる、ということがまず初めにあって、その分からない答えに向かって考え続けることが、いかにクリエイティブで楽しいか。

未来を考えるというのは答えを出すものではなく、未来のオルタナティブな可能性を広げること。今ある現在から予測した未来じゃなくて、皆の言う未来はきっと、『もっと良い未来をつくりたい』って考えているんだろうと思うんだよね。僕もそうです。

例えば今の中国で、環境問題や人口問題など、そのまま行ったら良くない未来になる予測があるけれど、そうじゃない未来の可能性を考えるということ。それが当たるかどうかじゃないんだよね。そこに向かって歩いていきたい未来を考えていくことに魅力があるんじゃないかと思うんです」

無印良品の家を開発したものの

土谷さんが開発に携わった無印良品の最初の住宅「木の家」。発売時は東京の旗艦店に実物が展示され、話題を呼んだ。

土谷さんは 「HOUSE VISION」を立ち上げる以前は、無印良品の家の商品開発を手掛けていた。かねてより土谷さんは、日本の家のデザインを底上げするために、1戸ずつ建てる従来のやり方ではなく、車のようにある程度大量生産できるよう、家を「商品化」をしていくことができないかと考えていた。そんな時、無印良品から住宅開発のメンバーとしてスカウトされ、描いていたものが実現できるかもしれないと気合いを入れて取り組んだ。

でき上がった最初の商品「木の家」は、実物が東京の旗艦店内に設置され、1日に600人が見に来るほど話題となった。しかし実際は、都市部ではこの規格住宅が収まるような広い土地がほとんど無く、なかなか購買につながらなかった。

皆、どんな暮らしをしているんだろう?

次に開発した無印良品の住宅「窓の家」。2008年度グッドデザイン金賞を受賞した。

続いて、もう少し分かりやすいデザインの家を、と開発した三角屋根の「窓の家」も、グッドデザイン金賞候補にノミネートされるほど高い評価を得るものの、発売当初の売れ行きは芳しくなかったそうだ。「木の家」での経験を生かし、多少のカスタマイズを許容できる仕組みにするなど改善を施したが、結果は思ったようにはいかなかった。

土谷さん:「そこで僕はどうやったら売れるかという前に、皆がどういう暮らしをしているのか?ということを調べようと思ったのが2007年なんです。今まではかっこいい家をつくろうと考えていたのがあまり売れなかったので、もう1回原点に帰って、人がどんな暮らしをしているのかを考えようとしたんですね」

そして土谷さんは、無印良品ユーザーへアンケートやインタビューなどを行うことによって、「暮らしの実態」を徹底的に研究することになった。

平均値からずれたキワの所に「暮らし」がある

土谷さんの暮らしの調査の成果は「無印良品と考える未来の形」(みんなで考える住まいのかたち研究会編集・土谷貞雄編集/エクスナレッジ)という書籍にまとまり、販売もされている他、無印良品のウェブサイトでも見ることができる。

調査には、明らかに数字で分かる調査(例えば、世帯あたりの人数や持ち物の数など)と、観察を必要とする調査(例えば、ここに物が散らかっているのはなぜか?など)がある。特に後者は訪問調査によって行うため、実施する人数が限られる。そこで訪問調査によって得られた仮説を、今度はインターネット上で多くの人に聞いていく。このネット調査を無印良品のユーザーに対して毎月約1万人、1年間で約10万人に対して行なった。

そこで土谷さんが気づいたのは、全体の平均値からはみ出した部分に、個性や固有の暮らしが表れているということだった。

土谷さんが無印良品時代に、調査結果をもとにコラムで提案した間取り。家族のベッドを壁際に並べてカーテンで区切るという極端なアイデアに、ユーザーからはたくさんのコメントが寄せられた。

土谷さん:「全て平均値で暮らしている人なんて、いるわけないじゃないですか。でも、マーケティングとかで考えようとすると、平均値で捉えようとするわけです。例えば、収納についてのアンケートで持ち物の数を調べた時に、靴の数の世帯平均27足と出る。それで家の商品開発をする時に、27足の靴を置く場所を考えても発想が広がらないんです。

ここで、家族全員で12足の人とか、1人で200足という人を見つけてインタビューに行く。200足持っている人はマニアですから、もう靴の持ち方じゃなくて、“靴とは何か”みたいな靴の哲学を教えてもらうわけです。そういうのを聞くだけで、靴に対する考え方が変わりますよね。暮らしというのは、そういうロングテールのキワの所にあると気づいたんです」

土谷さんはこうした調査の「キワ」から得た気づきをもとにコラムを書き、時には家の間取り図に落とし込んだ形でユーザーに向けて発信し続けた。その提案に関して、一晩で200人以上のユーザーからフィードバックが送られて来ることもあった。その中には当然、賛否両論があるわけだが、それが良いと土谷さんは言う。

見る・聞く・観察する、そこからすべてが始まる

「HOUSE VISION」においても、「さまざまなメーカー・企業と共に、彼らの持っている技術やサービスを、どんな未来へ向かう物語として作っていくのかを大事にしている」と土谷さん。Via: http://house-vision.jp/exhibition/2013.html

こうした調査とフィードバックを積み重ねるうちに、当初10万人だった無印良品の家のメルマガ会員は、やがて100万人近くに増加した。その中から「無印はこんなに家のことを一生懸命考えているんだ」と、無印良品の家に関心を持つ人や、欲しいという人が現れ始めた。物を売ろうと思っていた所から、一緒に考えるという関係に変わることによって、全く違う地平線が見えてきたと土谷さんは言う。

土谷さん:「分からないことを分かっていくこと、分からないということに気づいていくことが非常にクリエイティブなんです。実は課題は初めからあるわけじゃなくて、そのプロセスの中で感じていったり、発見していったり、ということなんですね。見る・聞く・観察する、そこから全てが始まる。デザインとは、形をデザインすることじゃなくて、どんな課題を発見していくかが全てなんじゃないかと」

Multi Creative Society

イベント内で土谷さんが示した、未来の暮らしのヒントとなる図。「今まで作ってきた非日常に刺激を求める『演劇的な暮らし』から、どうやってこの1杯のお茶にクリエイティブを作るか、みたいな、日常の中にクリエイティブを見つけ出して行く作業が、これからの豊かさなんじゃないかな」

土谷さんと親しかった、くらし研究家の辰巳渚さんはかつて、家事について土谷さんにこう語ったそうだ。家事労働という言葉に代表されるように、20世紀になって家事が「労働」として、しかも「労働を支える労働」として社会の中で低く位置付けられ、合理化の対象になったことが間違いだと。身の周りを整え、きちっと食事を作って、日々のリズムを繰り返していく家事は、息をするのと同じように、誰もがやらないと生きていけないものなんだと。

そんな「日常」をクリエイティブにしていくことこそ、未来の豊かな暮らしではないかと土谷さんは言う。

土谷さん:「未来の暮らしというのは結局、生活の中に『創造性・クリエイティブなこと』があるということではないかと思います。今世紀の最大の課題は、全ての人がクリエイティブであれ、ということなんですよ。合理性や利便性で標準化されていく世界から、そこで切り落とされた人間一人一人の多様性や個性、マイノリティというものを、どうやって取り戻していくのかということが必要で、それこそがクリエイティブなんです」

【第2部】トークセッション

イベントの第2部は、YADOKARIのウエスギも加わり、9つのテーマの下、会場の参加者と共に語り合った。そのハイライトをご紹介する。

暮らしの美意識

シェアハウスに住む若者も多いが、それは「合理的」な選択ではなく、「美意識のある暮らし」だと土谷さんは言う。

参加者:「今、クリエイター達と一緒にシェアハウスに住んでおり、今日のお話にあった、暮らしの中で日常に非日常を見出す、クリエイティビティを見出すという点が最近考えていたことと合致しています。24時間の中で、今までは仕事と生活を切り離して考えていましたが、仕事をしている時間も、犬の散歩をしている時間も、銭湯に行っている時間も、24時間全てが自分にとって豊かであれば、人生幸せなんじゃないか、みたいな感覚があります。土谷さんの『暮らしの美意識』をお伺いできたらなと」

土谷さん:「合理性というのはどこかを切り捨てることなんだよね。でも、シェアもそうだけど、面倒なこといっぱいありますよ。私の話だけど、北京のシェアハウスに住んでいる時に、賄いのおばさんがすごいお節介な人で、隣で料理していると、僕のオムレツに玉ねぎとかシイタケとか入れてくるんです(笑)。朝はプレーンオムレツなんだって決めているのに入れてきちゃう。でもその人との関係は、ちょっと嬉しいですよね。やっぱり『ありがとう』っていう気持ちになる。人と付き合うってことは、そもそも面倒なことなんです。他にも、全く1人で暮らしていたら今日は掃除しなくていいやとなるけど、人と一緒だと、やはり元あった場所に戻そうとか、コミュニティの中のルールに従っていきますよね。

『そうやって、意識的に何かをやっていく』ってことが美意識だし、美意識は哲学だと思うんだよね。『こういうふうに生きていく』と決めたルールを守っていくことが、自分の生き方を決めていく。ただ合理的に便利やスピードだけを求めていたら、やらないことたくさんあるじゃないですか。そうじゃなくて、朝起きたらとにかく掃除をするってことなんです。辰巳渚さんの『息をするように家事をする』というのは、そういうことを教えてくれたような気がして。それが『美意識』ということ。

美意識というのは、美しいものを見るということじゃなくて、『生き方のリズムを律していく』ということだと思います。つまり、欲望のままに生きないで、ある摂理というか、自然のリズムに自分を合わせていくことじゃないかと思うんですよね」

次世代都市「深圳」

中国のシリコンバレーとも言われる深圳は、世界でも先進的な次世代都市。土谷さんはこの都市で週に5日間過ごし、日本と行き来しながら暮らしの研究を行なっている。

ウエスギ:「深圳は今、中国のシリコンバレーと言われつつあって、先進的なシェアの概念も入りつつ、環境都市であり、テクノロジーも進んでいる状況の中で、土谷さんは住まいに対して研究を始めたじゃないですか。中国の若者達はどうかなっていう所をお話ししてほしいと思っているんですが」

土谷さん:「難しい話題ですね。日本は一つのグループというか、結構分かりやすい国なんですよ、島国だし。僕が中国に行ったのが28年前だけど、まだ高層ビルがなかった。それが今は街中、50階、60階の高層ビルがバンバン建っている状況で、僕がディベロッパーのアドバイザーをやってプロトタイピングすると、1個のプロトタイプで2万~3万戸つくる。ちょっとスケールが違うよね。

その中で多くの若者が、アメリカやヨーロッパ、日本で勉強して帰ってきている。成熟社会、つまり成長経済から衰退に向かっていく経済を経験している国で勉強した若者達は、まだ成長を続けている中国の中にいながらも、すでに他の国で成熟社会の予兆を知っていて、どこか違うんじゃないかと思っている。

中国の場合、他の国が歩んできたような、徐々に成長して成熟していくということじゃなくて、一つの社会の中に、まだ成長を夢見ている人達もたくさんいるし、すでに未来の他の国の現実を知って、同じようにその哲学を持っている人達もいるわけです。なので、田舎暮らしやミニマムな暮らし、みたいなことを始めている人達もいる」

「北京と深圳は、同じ時間軸で全く違う発展の仕方をしている所に日本との違いを感じたし、次世代都市を見ることで、自分達のこれからの豊かな暮らしの在り方を改めて考えさせられた」とウエスギ。

ウエスギ:「北京の講演の時に『小さな暮らしどうですか?』って写真見せたら、『僕は3億円のマンションの方が良い』みたいなことを言われたりとか(笑)でも深圳での講演の時は全然そんなことなくて、若者が『分かるよ、良いよ』って答えを返してくれて。それがなかなかすごいなと」(2018年11月の北京のハウスビジョン講演、および2019年3月の深圳家具展での講演。小さな暮らしについて)

土谷さん:「そういうことも起きてるんだよね。政治の街 北京、金融の街 上海、ビジネスの街 深圳、と言われていますけど、もう少し深く入って行くと、さっき話したように、それぞれの街に多数のレイヤーが存在しているんですね。中国のこの20年ぐらいの変化はハイスピードで、しかもその変化に他の国の流行も混じっているから、可能性としては、小屋を建てに行こうよ(笑)。そのムーブメントもあるってことかな。中国が、今の大多数の発展思考の価値観で未来をそのまま行けるとも思わないし、皆も思ってないんだよね。ただ、どういうふうにつくっていくのかという答えはなかなか見つからない。その意味では例えば小屋を持って行ってさ、皆でつくってみるというのはいいね」

未来の家

「社会問題には、僕らのレベルで解けることと、『制度』という問題がある。起きてきた小さな問題を社会全体の仕組みとして整えていく必要があるし、政治についても遠いものじゃなくて、僕らとして、もう少し関わっていった方がいいかもしれないね」と土谷さん。

参加者:「行政の立場として固定資産税の課税に関わる仕事をしています。固定資産税の課税で実際に土地を見て行くと、昔の大きかった家がどんどん分割されて小さい宅地になって分譲されているケースが数多くあります。政治・行政と関わっていくお立場として未来の家を考える中で、小さくなっていく土地、小さくなっていく家について、何かお考えがあればお伺いしたいです」

土谷さん:「固定資産税という税金システム・制度の問題と未来の暮らしをどう考えるか。制度がうまく適応していないので、変えなきゃいけないんだけど、1人の人が所有している土地に税金をかけるという今までの考え方が、もしかすると未来には合わなくなるかもしれないね。例えば財産的な価値を持っている家や土地だったらいいんだけど、日本中には、地方でバリューが全くない土地や、もらってくれる人もいない土地が多数発生している。それは税金をどうするかではなくて、そういう土地をどう使っていくかという話なんですよね。本当の問題は、今バリューがない所にどうバリューをつくっていくかということなので、もしかすると税金の話と、経済システムや金融システムと一体になって変わっていく可能性があるかもしれないですね。

その時に、土地の所有がどういうものなのかとか、1人が1個の土地を所有するのかということすら変わるのかもしれない。複数人、または大勢で1個の土地または複数の土地を所有するとか。既存のルールを変えるというよりは、それを飛び越えて新しい仕組みが生まれてくるかもしれないですね」

未来の家への関心は、これからの日々を美意識を持って過ごしたい、という皆の願望から生まれてきているようだ。

最後は会場の参加者同士で、「あなたが暮らしたいのはどんな家ですか?」というテーマの下にディスカッションを行なった。会場からは、「どんな家というよりも、誰と暮らしたいか、どういうふうに幸せになりたいかということにビジョンを持っている」「シンプルだけど日々の暮らしが美意識につながる、やはりハード面よりもソフト面が重要」「結婚や子育てなどのライフステージに合わせて変わる家」などの声が聞かれた。

こうした会場の声に対して土谷さんは、まさにその通りだが、一方で社会が大きく変わっている中で、その「誰と」を疑ってみることや、「変化する家」も一つの家で変化を許容するのではなく、社会が家の流動性を担保できるような仕組みをつくることも大切とコメントした。

「未来の家はどうなりますか?」と答えを求めるのではなく、どんな暮らしをしていくことがこれからの美意識に合致するのか、その時、家の形はどうなるのかを考え続けることが、今の延長ではない、より良い未来を引き寄せる。Via: http://house-vision.jp/exhibition/2013.html

考え続けることでオルタナティブな未来はやって来る、と土谷さんは私達に語った。今ある未来ではなく、自分達でつくっていく未来には初めから答えはない。自分達で発見し、そこに向かって考え続け、歩き続けていくことで実現していく。

未来は予測するものではなく、自分達でつくっていくものだ、ということが、土谷さんからの、終始変わらぬこの日の強いメッセージだった。

(執筆:角舞子)

◎今回のゲストスピーカー

土谷貞雄

暮らし研究家/都市生活研究所 代表(中国・深圳)/貞雄 代表(日本・東京)
「HOUSE VISION」企画プロデューサー

プロフィール
1960年東京生まれ。1989年日本大学理工学部修士課程修了後、イタリア政府給費留学生としてローマ大学留学。1994年帰国後、ゼネコンにて施工、設計、営業などの業務を経験し、住宅部門の商品開発などに注力。2001年M&Aコンサルタント企業に転職し、住宅系の営業支援業務に従事。2004年良品計画のグループ会社ムジネット入社、2007年よりムジネット取締役に就任。この間、無印良品の家の事業を責任者として推進した。2008年コンサルタントとして独立し、株式会社貞雄を設立。日本中国企業の商品開発からプロモーションまで一貫した住宅商品開発支援を行なっている。

ライフワークとして住まいに関する研究を行っている。その一環として未来の暮らしの展覧会「HOUSE VISION」(代表・日本デザインセンター原研哉氏)の企画プロデュースを2018年まで8年間行う。並行して日本を始め、アジア各地で研究会や、暮らしに関する調査、展覧会などを定期的に行っている。現在は、中国・深圳にて都市生活研究所を主催、中国の暮らしの未来探索に多くの時間を注いでいる。

◎パネリスト

ウエスギセイタ

YADOKARI株式会社・共同代表取締役/暮らし研究家

プロフィール
暮らし(住まい方・働き方)の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。暮らしに関わる企画プロデュース、タイニーハウス企画開発、遊休不動産と可動産の活用・施設運営、まちづくり支援イベント、オウンドメディア支援プロモーションなどを主に手がける。

また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」、全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画運営。250万円の移動式タイニーハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を企画販売。

自社施設として可動産を活用した日本初の高架下複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho(グッドデザイン賞、ソトノバアワード 場のデザイン賞)」、可動産イベントキッチンスペース「BETTARA STAND 日本橋(暫定終了)」を企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全再生にも携わる。

著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。

YADOKARI:https://yadokari.net/wp/

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