【特集コラム】ムーブメントをリードする街「アルメレ」|オランダとタイニーハウス

(c)Naoko Kurata
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みなさま、こんにちは。「オランダとタイニーハウス」特集コラムの2回目でございます。前回の1回目では、主にオランダの風土、オランダ人の気質についてお話いたしました。今回は、チャレンジ精神旺盛なオランダ人たちが、タイニーハウスに関して過去にどのような取り組みをしてきたのかご紹介いたします。

「それはアルメレでは可能だ」オランダで最も新しい、自由の街

オランダにおけるタイニーハウス・ムーブメントには、アルメレ(Almere)という街が大きな役割を果たしました。アルメレはフレヴォラント州に属し、アムステルダムから東に約30kmの海沿いにある街です。

1967年から1968年にかけて干拓工事がおこなわれ、1976年に最初の住宅が竣工しました。徐々に住民を増やし1984年に基礎自治体(ヘメーンテ)が成立。自治体としてはまだ30年程度の歴史しかないので、オランダで最も新しく誕生した都市のひとつと言われています。今ではフレヴォラント州では最大のヘメーンテであるといわれ、オランダでも7番目に人口の多い(約19万人)基礎自治体です。

Via: almere-nieuws.nl

そんな急発展をとげるアルメレが人気を集める理由は、すばり「自由に家をデザインできること」。意外に思われるかもしれませんが、自由を愛する国オランダでも家に関しては多くの規制が存在します。

(c)Naoko Kurata
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昔ながらの街並みを保持するオランダにおいて、「新築」とはさまざまな規制を乗り越え、多くの許諾を得ていくことを意味します。マンションのようなプロが携わる物件とは異なり、「個人で家を新築することはオランダ人にとって現実的ではない」と現地の知人は口をそろえて言います。そのため、昔ながらの家をリノベーションしつつ住む、というのが一般的なのだとか。

しかし、アルメレは違います。この誕生から約30年の新しい街には「昔ながらの街並み」が存在しないため、規制がなくどのような家を建てても構わないのです。そのため「それはアルメレでは可能だ」(Het kan in Almere)というのが合言葉になっているのだそう。

また、アムステルダムが通勤圏内という地理的好条件もあいまって、「好きな家を建てて住みたい!」と夢見ていたオランダ人たちが続々とアルメレへ移住してきたのです。

(c)Naoko Kurata
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これは、アルメレの住宅街で撮影した写真です。異なる壁の色に、不揃いな屋根の形。他の街では見かけない光景です。

(c)Naoko Kurata
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こちらの家は、茅葺き屋根スタイル。オランダの昔ながらの農家の家を模しているようです。このように「何でもアリ」な街並みはオランダでは非常に珍しく、わざわざ住宅街で家を眺めるために他の街からやってくる人も多いと言います。

まるで観光地のようにもなっているアルメレをここまで有名にしたのは、1980年代に開催された2つのイベントによるところが大きいと言われています。

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1982年のデザイン・コンテスト「ファンタジー」

1982年にアルメレが開催した「ファンタジー」(De Fantasie)という建築デザイン・コンテストで、オランダの建築界は大きなターニングポイントを迎えました。

その応募条件は、以下のようなものでした。

・テーマは「普通じゃない生活」
・(当時の)建築基準に適応しなくても良いので、実験的な家をデザインすること
・素材や構想がオリジナルであること
・ただし、実現可能な内容であること

コンテストでは、142の応募作の中から最終的に10のデザイン案が勝ち残りました。受賞者たちには褒賞としてアルメレの土地を与え、実際にそのデザインを建築しても良いという実践的なものでした。

受賞したデザインは、個性的なキューブハウスや、床面積8×8mのコンテナハウスを思わせるデザインなど、現代においても画期的なデザインの家たちでした。こういった「普通じゃない」家のデザインが、当時のオランダ人を驚かせたのは想像に難くありません。まさにファンタジーのような建築だったのです。その証拠に、当時「5年で壊し、土地を手放す」ことが条件だったこの建築物たちは、オランダ建築界にとって重要な歴史のひとつだと認識されたため、重要な観光資源として現在でもアルメレにまだ家が温存されているのです(そして設計者本人が住んでいることが多いそう)。

厳密にいうと、このファンタジーはタイニーハウスであることは応募条件ではありませんでした。けれど、このコンペによってオランダ人は「夢に規制はない」と実感したのです。

1985年に開催されたタイニーハウス・コンペ「リアリテイト」

そして「ファンタジー」から3年後、1985年に満を持して開催されたのが「リアリテイト」(De Realiteit、英語ではReality)と呼ばれるデザイン・コンテスト。今回の応募条件は、以下のような内容でした。

・テーマは「テンポラリー・ハウス」(一時的な家、仮設住宅という意味)
・敷地は20×20m以下
・受賞者はアルメレの土地に実物を建設できる
・ただし、建設費は自分で支払う

しかも建設費はローンではなく一括で支払うことという条件付きだったので、デザインするほうも現実的な予算を考慮しながら取り組みました。まさにリアリティーがありますね。結果として17の応募作が受賞し、1986年アルメレの一画に実際に建設されました。

(c)Naoko Kurata
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標識にも「De Realiteit」と書かれています。

(c)Naoko Kurata
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敷地の入り口すぐ脇に立っている黄色い高床式の家。海に近いアルメレですが、万が一、海からの浸水があってもこれなら被害を最小限にとどめることができそうですね。

(c)Naoko Kurata
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天井にドームがついている縦長のスモールハウス。

(c)Naoko Kurata
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この家は、太陽光発電のみでエネルギーをまかなえる構造。オランダで初のエコ住宅だと言われています。

(c)Naoko Kurata
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かつて「未来住まい方会議」でも紹介したことのあるMarkiesもこのコンペで受賞した作品で、この場所に現存しています。今回の記事の一番上に掲載した赤い建物もこのリアリテイトの敷地内にあるコンテナハウスで、連載1回目でも掲載した赤い家もこのコンペの作品です。受賞作はすべて公式ホームページから見られます。

このリアリテイト受賞作たちも観光資源として活用されつつ、現役の住宅として人が住んでいるというのだから、オランダの合理性には驚きます。

アルメレで受け入れられたオランダのタイニーハウス

こうした先人たちの活動を受け、アルメレでは一般の住宅街でもタイニーハウスを見かけるようになってきました。

(c)Naoko Kurata
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そう、それはアルメレなら可能なのです!これからもアルメレにはオランダ建築界を牽引する存在であり続けてほしいものです。

次回は、現代のオランダがタイニーハウスに対してどのようなアプローチをしているのかについて、詳しくご紹介していきたいと思います。[/protected]

Via:
mokeham.com
derealiteit.com
architectuurgidsalmere.nl