ロシア人の胃袋と心を支える菜園付き別荘「ダーチャ」の暮らし。週末農家のすすめ

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日本において一般的にいわれる年間休日は120日程度。一年の中の約1/3を占め、更に人生のスパンで考えても、やはり休日はおおよそ1/3になると考えられる。

“人生の1/3の時間 = 休日”

これは、なかなかの存在感。ここでは、人生において大きな存在である“休日”にまつわる情報を世界中からかき集め、我々日本人が、休日という“自分らしく過ごせる時間”をどう捉え、過ごしているのかを少し向き合ってみたいと考えています。時は21世紀、個が尊重され、情報は世界中から飛び込んでくる時代。日本というスケールに収まる必要はなく、これまでの日本の休日という概念に捉われる必要もない。“家族との休日”、“恋人との休日”、“仲間との休日”、想像している以上に私たちは自由な時代にいる事に気付き、自分らしい休日のライフスタイルに拘ってみてはいかがでしょうか。

Holiday is your life.

ここで発信する情報は、読んで楽しかったというinputに留まらず、自分らしく過ごせる休日のヒントを見つけ出し、何か行動をおこすoutputのきっかけになることを願っています。

via: folliesofeurope.com

長い冬が終わり春の気配が訪れるとモスクワっ子はそわそわし始めるそうです。金曜日の午後になると車や電車に乗りこみ郊外にある菜園付き別荘「ダーチャ」を目指すのです。ソビエト時代の面影を残す巨大なコンクリートの塊の中での都市生活から青々とした緑豊かなロシアの原風景へ。ダーチャはもはや単なる別荘ではありません。ロシアの文化そのものなのです。

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ベランダでお茶を飲んだり、裏の畑で採れたばかりのベリーをつまんだり、森へマッシュルームを採りにハイキングをしたり。ダーチャはその時代時代の人々のニーズを反映しながら文化として熟成し、ロシア人の生活を支えてきました。そんなダーチャは今を生きる私たちに対しても何か生活のヒントを与えてくれるかもしれません。

ダーチャの成り立ち

ダーチャとはロシア語で「与えられる物」という意味。ロシア初のダーチャは17世紀、時の皇帝が近衛兵に褒美として与えたものでした。ダーチャが夏を過ごすための別荘として使われだすのは18世紀のピョートル大帝の時代からだったと言われています。

ピョートル大帝は彼の側近にサンクトペテルブルク郊外の小さな土地を与えまたした。宮廷に仕えていた人の多くが夏場、祖先の墓参りのためロシアの辺境へ里帰りしてしまうため、近場のダーチャで大帝に仕えながら夏を過ごせるようにしたのです。また、大帝はダーチャを通して当時のヨーロッパ的サマーバケーションの過ごし方を導入したかったのだそうです。ダーチャの始まりは随分と特権的なものだったようです。

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社会主義だったソビエト時代、労働組合にとって最も重要な仕事は、ダーチャ用の土地を取得して組合員に割り当てることでした。特権階級からだんだんと普及していったダーチャは1960年代になると、ようやく一般市民にも浸透してきました。ただ、一般市民にとってダーチャは週末、野菜や果物を育てるための場所だったようです。国の集団農場だけでは十分な作物が得られず、輸入された野菜も高価だったためです。食べるために人々は週末農家となり、ダーチャで畑を耕しました。生産的ではない芝生などを植えようものなら組合からダーチャを取り上げられたそうです。

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一方で政府は、社会主義の原則を乱さないよう、ダーチャの広さを0.15エーカー(183坪)に制限しました。生きるために耕しても贅沢までは許されなかったようです。これが今もダーチャの広さの基本となっています。必要だったとは言え、郊外の小さな家で自分で食べる分だけの野菜を作って暮らすというのは、なんとも魅力的に感じます。土をいじっているだけでも日ごろの疲れが癒される、自分自身と向き合えるって人も多いのではないでしょうか?

自らの手で土を耕す喜び

アメリカのオバマ大統領がモスクワを訪問中、ミシェル夫人の菜園が紹介されると「ホワイトハウスでまるでダーチャのような暮らしをしている」とメディアで絶賛されたそうです。ロシア人は自らの手で土を耕す人々に親近感がわくのだとか……。

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現在のダーチャの使われ方はより多様化しているようです。友人とBBQやティータイムを楽しんだり、以前は禁止されていた芝生や花を敷きつめてみたり。そんな中、ダーチャの小さな菜園で栽培したオーガニック野菜や卵、ミルクなどをネット販売する動きが注目を集めています。

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ネット販売を使った新たな流れ

モスクワに住む翻訳家のナタリア・イワンセビッチさんはフランス人の友人に「どんなサラダが好き?」と聞かれて初めて、「私の人生に欠けていたものが何だったかを理解したの」と言います。ナタリアさんは今では、食べるだけではなく、「the fat lazy blonde」と呼ばれる珍しい青菜など何種類もの野菜をダーチャで育て、食べきれないものはオンラインで販売しています。

「オンラインでは、地域の野菜とその地で古くから栽培されていた伝承野菜を主に売っています。ロシアには古くから栽培されていた地の野菜があるんです。ただヨーロッパからの野菜におされて私たちはその多くを忘れてしまっていたのです」

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オルガ・バンコフさんは夫婦で釣りに訪れたモスクワ郊外の自然に魅了されダーチャを購入しました。現在は副業として畜産業を営み、モスクワの富裕層をターゲトに豚肉などを販売しています。「これだけで食べていくのは難しいわ。私たちには他に仕事があるからいいけれど、普通の農家の人はやらないかもね。でも、何が正しいかなんて分からないじゃない。ロシアには放棄された未耕作地だけはあるのだし……」

日本でも問題となっている耕作放棄地とダーチャが結びついたら?なんだか楽しいことができそうに思います。休日不動産でも全国の庭付き空き家や別荘などを扱っていますが、まずは2拠点居住で週末は自然の中へ、なんて所から始めてみてはいかがでしょうか? 慌ただしい毎日から一呼吸おいて心も体もリラックスできることでしょう。

Via:
friends-partners.org
rbth.com
telegraph.co.uk
calvertjournal.com

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