第2回:夏の到来を祝い、自然に感謝する〜北欧スウェーデンの夏〜| 北欧スウェーデン、夫の祖国の素敵な暮らし

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8月も後半になりスウェーデンの短い夏は終わりを告げようとしています。スウェーデンの夏は残暑が続く事もなく、寂しいほどに終わって行ってしまうのです。スウェーデン人が愛する夏。今回はスウェーデンのミッドサーマーのお話です。

スウェーデンでは夏至の日、つまり一年で一番、陽が長い日にミッドサマーフェスティバル(夏至祭)があります。日本ではまだ大部分の地域が梅雨の時期ですが、スウェーデンは一足先に夏本番になります。
正確には6月の第4土曜日がミッドサマーの日。そして前日の金曜日がミッドサマーイヴ。イヴは祝日となり、この日に各地でフェスティバルが行われます。スウェーデンの北部ではこの時期、白夜。一日中、陽が登っています。
私の住んでいる中部でも、夜中の12時頃にようやく少し薄暗くなる程度。夜中の3時にはもう太陽が登って来ます。

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よる10時で、この明るさ

移住してすぐの頃、この明るさと時間の流れが体で覚えられずに時間の感覚がなくなり、一人で作業に夢中になっていたりすると、気がつくと夜の9時になっていたりして、どうりでお腹が空いてるわけだぁ、と夕食のタイミングをよく失ったものです。

夏至祭

夏至祭当日の朝はお花を摘みに野原へ出かけます。フェスティバル会場の中心に建てられるミッドサマーポールを彩る野の花を皆で持ち寄るのです。

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国土の大半は森林というスウェーデン。自然豊かな田舎ではそこら中が草原で、様々な花が咲いています。皆が持ち寄った花は、白樺の木で出来たポールに巻き付けられ装飾されます。

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スウェーデンの田舎育ちの少年は語ります。「僕は子供のとき、誰も見つけられないような変わった花を見つけて、持って行ったんだ。そうすると、ポールに飾られた時にどれが自分の取って来た花か分かるから、楽しいんだ。」と。ちょっと可愛らしいエピソード。
さて、午後からは音楽とともにポールの周りで踊りが始まります。小さな子供から、おじいさんおばあさんまで。スウェーデン人はシャイだから、なんとなく恥ずかしそうに、でも、心から夏の到来を喜び楽しんでいる様子がとっても微笑ましいです。

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国民の大部分は4週間前後の夏休みをとり、短い夏を満喫するというスウェーデン。とは言っても、必ずしも暖かく美しい夏が来るとは限りません。国民は今年の夏の天気は??といつも気がかり。話題も天気の話が多いのです。
私が散歩をしていると、ビキニ姿にスニーカー、というお茶目なスタイルで庭仕事をしているおばちゃんをよく見かけます。陽に当たるためです。私の義理母も家の中で掃除や洗い物をしていても、太陽が出て来たと分かれば手を止め、庭に飛び出します。ちょっとの陽も無駄にはしません。そして冬に浴びる事が出来ない太陽の陽を体一杯に浴びるのです。
スウェーデンの冬は暗くて長い。だから人々は夏を喜び、夏の到来に心から感謝してお祝いするのです。

夏の楽しみ方

それでは、スウェーデン人はどんな夏の休暇を過ごすのでしょうか?
ながーい休みを取って、もちろん海外旅行に行く人たちも大勢います。しかし、少なくとも休みの半分は自国でゆっくりと過ごすというのが一般的なようです。
「去年の夏は雨ばかりだった。だから今年の夏は海外旅行へ行くよ」「天気が悪そうだから海外に行ったけど、その間スウェーデンは素晴らしい天気だったらしいね?くやしい。」なんて言う会話を耳にすることが良くあります。それを聞くたびに私は『そぉか、スウェーデン人は基本的にはスウェーデンにいたいんだな』と思うのです。

これは、ある少年達の夏の過ごし方の一コマです。車でダーナラ地方へのフィッシングキャンプです。ダーナラ地方はいくつかの湖と森に囲まれたスウェーデンでもサマーハウスを持つ人が多く、素晴らしい自然がある地方です。彼らは特に目的地を決めずに自分たちがテントを張って、釣りを楽しめるポイントを探します。
スウェーデンでは自然は皆のものという考え方。マナーを守って人に迷惑をかけなければどこにテントを張っても良いのです。決まりが少ない自由な国風ですが、人々が秩序を守って行動しているのがスウェーデンです。

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どうやら彼らは誰にも迷惑のかからない、そして誰にも邪魔されない最高のポイントを見つけたようです。 たき火をしながら友人同士、暮れない夜をいつまでも楽しむのでした。

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夏が終わる寂しさ

ちなみに、今年の夏は毎日30度程あって稀に見る暑さでした。さすがのスウェーデン人も「暑すぎる……..」とこぼしていたほど。
私は今年で3度目の夏をスウェーデンで過ごしました。元々夏が苦手だった私。今まではスウェーデン人の夏好きを微笑ましく横目で見つつ、ついつい木陰に入っていました。けれど、今は太陽を浴びるのが好きになりました。好きというより体が太陽を欲している、という感じです。そして8月下旬の今、夜の9時には陽が暮れて真っ暗になると、「あー、冬が来てしまう。暗くて長い冬が来てしまうんだなぁ…….」と、夏を恋しく思い、そしてとても寂しい気分になっています。今、夏至祭のポールの周りで踊る北欧人の気持ちが少しずつ分かって来たような気がします。

素敵なおまじない

最後にもう一つ、こんな言い伝えが。“夏至の夜、7種類の花を摘んで、枕の下に入れて寝ると将来の結婚相手の夢をみる” という言い伝えがあるそうです。スウェーデンの女の子ならきっと誰でも夏至の夜、7種類の花とともに眠りについたことがあるでしょう。素敵なおまじない、皆さんも試してみてはどうですか?それでは、次回をお楽しみに。

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