第3回:スウェーデンのお茶の時間と素敵な陶器〜Gustavsberg, Stig Lindberg〜| 北欧スウェーデン、夫の祖国の素敵な暮らし

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今回はスウェーデンのお茶の時間と素敵な陶器についてのお話です。スウェーデン語でお茶の時間のことを『Fika(フィーカ)』と言います。スウェーデンの人たちは一日に何度もフィーカをします。のんびりリラックスするのが大好きな人々、フィーカをする事で気持ちにゆとりが生まれるのだと思います。彼らは「私たちスウェーデン人はフィーカが大好き」と自分たちを語ります。

フィーカの時間には大抵シナモンロールやクッキー、ケーキなどが付いてきます。しかし、私がここに来て感じたのはフィーカは珈琲、紅茶の内容にこだわるお茶の時間ではなく、時間を共有してその時を一緒に楽しむ、という要素が大きいということです。スウェーデンのフィーカは特に難しい話をする訳でもなく、ゆったりとした時間を過ごす事を大切にするのです。

家族でもフィーカの時間を必ず持ちます。そして、職場でもフィーカの時間が必ずあります。仕事の後に同僚と付き合いで飲みに行ったりする習慣がないスウェーデンですが、この勤務時間内のフィーカの時間を共にする事で同僚同士お互い仲を深めるのでしょう。

スウェーデン生まれの陶器

フィーカの国から生まれた素敵な陶器がここにはあります。今回はそんなスウェーデン生まれの陶器をご紹介します。
日本で北欧雑貨はとっても人気がありますね。デザイン王国から生まれたその陶器をコレクションしている方もたくさんいらっしゃると思います。私もその一人で、始めてスウェーデンに来たときからその虜になりました。”北欧”とひとまとめにされがちですが、ここスウェーデン発の陶器にはどんなものがあるでしょうか?

スウェーデンの代表的な陶器メーカーはGustavsberg(グスタフスベリ)というメーカーで1825年にスウェーデンのストックホルムに設立されました。スウェーデンの中でも屈指のデザイナー『ヴィルヘルム・コーゲ/Wilhelm Kage』『スティグ・リンドベリ/Stig Lindberg』『リサ・ラーソン/Lisa Larson』など、数々のデザイナーを輩出してきた名門陶器メーカーです。今現在も、工房だけを残して、セラミック製品を中心に生産が続けられています。その中でも今回は私の出会ったスティグ・リンドベリの陶器をご紹介します。

左から MAXIMマキシム:RANKAランカ:Spisa Libbスピサリブ
左から MAXIMマキシム:RANKAランカ:Spisa Libbスピサリブ

葉っぱのデザインが上品で可愛らしい”マキシム”は赤とグレーの2色があり、1960年から1963年の3年間製造されていました。フォルムデザインはStig Lindberg、デコレーターはBibi Bregerです。こちらは義理母が毎朝珈琲を飲むのに使っていたものです。私が「素敵!」と興味を示し私の好きな陶器メーカーだと話すと「え?これ、グスタフスベリだったのね。」とカップ裏のスタンプを眺めていました。さすがスウェーデンの代表的な陶器メーカー、何気ない形でスウェーデン家庭の日常に登場してくるのです。

“ランカ”はハート形に見える花びらと、つるになっている葉っぱが描かれています。北欧の食器は自然をモチーフにした物がとても多いのです。人々の暮らしと自然が密着しているからこそ生まれるデザインなのでしょう。
正直、このランカを始めて目にするまではあまり興味をもっていませんでした。ですが、蚤の市で出会って初めて手にした時にすごく感動したのです。手におさまる感じ、丸み、ふちの厚み。コロンとしたそのホルムに圧倒されました。
実はこちらはスティグ・リンドベリがデコレーションを、巨匠のコーゲがフォルムのデザインをしたものです。さすが、グスタフスベリの陶器は裏切らないなぁとため息が出るほどでした。

“スピサリブ”は復刻版が製造されていますが、こちらはオリジナルのものでリンドベリのサイン入りです。
リンドベリは自分が絵付けしたものには丁寧にサインを施しています。それも自分の作品への責任なのでしょう。彼のプロ意識の高さを感じます。多少の欠けがありますが、その欠けが年代物の趣を感じさせさらに愛着を湧かせます。
こちらはアンティークショップで350Kr(スウェーデンクローナ)、日本円にすると5000円ほどです。それに比べ、上記のマキシムやランカは一般の人たちが出店する蚤の市で売られていたので、日本円で1000円以下ほどのお値段です。どこでどのように出会うかによって値段も大きく異なってきます。
蚤の市のたくさんのがらくたと思われる品々の中に混じって息をひそめている事があるので蚤の市巡りはやめられないのですね。

Stig Lindberg(スティグリンドベリ)

それでは、そのスティグ・リンドベリとは、どのような人なのでしょう。

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こんな人です。1916年生まれ。美術大学コンストファックで学び、1937年にグスタフスベリ社に入社。セラミックの製造を経て1940年には専属のデザイナーになりました。
黒縁メガネに蝶ネクタイ、そしてパイプ。なんだか作品のイメージとピッタリな人です。私がスティグ・リンドベリを知ったのは始めてスウェーデンを訪れた時です。
首都ストックホルムにあるガムラスタンという街のアンティークショップ。そこには私の趣味にぴったりはまった陶器の数々が並んでいました。その一つ一つをじっくりと、じーっと見つめてそのお店に滞在していると、お店のオーナーさんが「スティグ・リンドベリっていうのよ。スウェーデンでとても人気があるデザイナーなの」とその商品について細かく説明してくれました。
それからというもの、私はすっかり、リンドベリの虜になってしまいました。そして、復刻版以外はもう作られていない希少価値のある陶器探しに夢中になったのです。

最後に、こちらはBersåです。

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こちらはリンドベリの代表作でスウェーデンでも人気があります。日本では”ベルサ”と言われている事が多いようですが、実際スウェーデン語では”ベショー”と発音されます。
写真のたくさんのBERSÅは旦那の祖母のコレクションです。これぞ、スウェーデンのおばあちゃん、やっぱり持っていた。という感じです。

棚の中に大事に置かれていたBERSÅはクリスマスなどの特別な時に使っているとか。
友達にもらったり、自分で買ったりして何年もかけて少しずつ集めたそうです。このBERSÅは現在復刻版が製造されており、私が結婚した時にエリンという名の旦那の幼なじみの子が、復刻版のティーカップを贈ってくれました。彼女とは一度一緒にパーティーをした時に会っただけだったのですが、私がリンドベリが好きと言ったのを覚えていてくれたのです。

そんな話をした事はすっかり忘れていた私ですが、覚えていてくれた事をすごく嬉しく思いました。アンティーク品に刻まれた長い歴史や貫禄が好きだけど、新しいものに自分で刻むストーリーと彼女の思いが詰まった新しい食器もこれまた好きだ、としみじみと思ったものでした。

そんな訳で、私が一瞬で虜になったスウェーデンで出会ったリンドベリの作品たち。北欧の食器は気取らずに普段使いしてとっても幸せになれる食器たちです。そして、なんといっても彼らのデザインはどこか懐かしい、どこかで出会った事があるような、日本のご家庭にもすっと馴染むものばかりです。こんな北欧食器少しずつ集めてみませんか?

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