チョウチョ屋根には理由がある、禅の美学を持つスモールハウス「Butterfly Roof Meditation Hut」
米国イリノイ州東部に位置するシャンペーンという街に、贅沢にも茶の湯と瞑想のためだけに作られた家がある。日本人が見たら誰もがほっとするような和のテイストのそれは、14エーカー(約5.6ヘクタール)もの広大な土地の、自然に囲まれた池の上にちょこんと佇んでいる。
この家は建築家のジェフリー・ポスによってデザインされ、2010年に完成された。大きさは約9平米。茶と瞑想をするには理想的な大きさではないだろうか。
家のオーナーはメアリー・カランジスと夫のビル・コープだ。彼らの所有する土地は左に森が、また西には古い林業地が隣接し、母屋はその中央に建てられている。
メアリーは「周りの自然を眺めながら、一杯のお茶を楽しめる静かな場所が欲しかったのよ」という。彼女は毎朝起きるたびにこの家のイメージが頭に浮かぶという。「この家と環境の持つ均衡がどこか天国を思わせるの。」
彼女の朝を想像してみよう。自然に囲まれたこの地で澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込み、鳥の歌声を聴きながらキラキラとした陽光が畳の上に差し込む。そんな静かな朝、ゆっくりとこの小屋でお茶を飲むのは、なんとも贅沢な時間ではないだろうか。
この家の周りの恵まれたロケーションが独特な効果を生み出している。部屋の下方にしつらえた横長の窓から水面が見え、瞑想を助けるだろう。一日を通して家の壁面には水面が揺れる姿が反射する。別の面に設置された大きな窓からは森の木々が見渡せる。室内には日本の畳が三畳分敷かれ、黒檀のように黒く塗られた白樺の床は深く、静かな池のような印象を与える。イ草で作られた畳は、まるで黒光りする床の上に浮かぶ島のようでもある。
シンプルな遊歩道は控えめな入り口へとつながる。その入り口は杉の壁と一体化し、まるで隠し扉のようだ。屋根はV字でそれ自体がこの家を印象的なものにし、なおかつ屋根に積もった雪や雨を下の池に流す雨どいのような役割も兼ね備えている。
このV字のチョウチョのような屋根により、外観だけでなく、インテリアにも個性を与えている。反射光の効果や、雨水を池に流す役割や、空の景色を部屋に取り込むという、それぞれ異なる目的を最大限に生かすため様々な工夫が試みられた。それら試行錯誤の結果がこの不思議な形状の屋根となったのだ。
冬の間はこの小屋の下の池が氷で閉ざされる。池の上に降り積もった雪の上に浮かぶように家が佇む。家はそんな自然の環境に保護され、穏やかで柔らかいエネルギーに満ちている。まるで日本の禅寺のような空間がアメリカ人によって見事に再現された。
Via:
http://www.dwell.com/house-tours/
http://www.designsigh.com/2011/03/