モノをセパレートし、人をフィットさせる。新ガーデンスタイル「Walden」

「私は静かに生きるため森に入った。人生の真髄を吸収するため。命ならざるものは拒んだ。死ぬ時に悔いのないよう生きるため。※」

ヘンリー・D・ソローの著作「ウォールデン 森の生活」で、このような理念が紹介されたのは、19世紀半ばのアメリカだった。ソローはウォールデン池畔に独力で丸太小屋を建て、自給自足の方法で2年ほど思索的な生活を送った。自然の中でシンプルな生き方を探求することは、もはやここ数年に始まったトレンディな動きではない。

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ソローの著作からヒントを得て、ドイツのデザイン会社Nils Holger Moormannは、画期的なガーデンハウスを考案した。このウッディなコンテナは、四角に仕切られた空間ごとに、シャベルや枝切りバサミ、じょうろ、鉢植え、薪など、実にさまざまなガーデニングアイテムを格納している。

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何がどこにあるか一目でわかってしまうのは、このハウスの「薄さ」が功を奏しているからだ。普通の倉庫のようにモノを積み上げたりする余裕をなくし、逆に空間をカットし切り詰めていく。その限られた場所に、モノを「展示するように」置く。まるで博物館に飾られる重要文化財のように。そうすることで、とても整理整頓された空間が実現する。モノがフラットに配置されるその光景は、現代風にいえば、デスクトップに表示されるウィジェットやアイコンをも想わせる。

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しかし、この幅の狭いハウスに詰まっているのは、それだけではない。ここで衣食住を完結させることだって、もはや不可能ではないのだ。たとえば、ガラスコップをストックできる場所もあるし、バーベキューコンロを置く場所もある。

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さらに、ちょっと腰を下ろしてゆっくりできるソファ、テーブル、読みかけの本を掛けられるおしゃれな「額縁」まである。リビング代わりのこのスペースは、少し狭そうだが、はたから見ると、まるで馬車に乗っているようにも見えるし、日差しが強いときは、シェードを下してカフェのファサードのようにアレンジもできる。まるでルネ・マグリットの世界みたいに変幻自在だ。

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小屋のサイドはクローゼットになっており、長靴や帽子などを入れられる。ちょっと眠くなったら、はしごで2階へ上がり、開閉できる天窓付きの仮眠スペースへ。

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究極の整理術と、最高のユニークさ。ソローの著作に端を発し、自然の中で人生の真髄を吸収するための新しいデザインが、ここに晴れて結実した。まさに、「故きを温ね新しきを知る」である。

[※] 映画「今を生きる(Dead Poets Society)」(1989)より抜粋

Via:http://design-milk.com