ツリーハウスつくろう(6) ~小林 崇さんに学ぶ、ツリーハウスはじめの一歩~

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今回は、僕が出会い影響を受けた「人」ツリーハウスクリエーター 小林 崇さんと、その世界について、体験レポートを綴っています。

ツリーハウスビルダー養成講座。今回は、樹上へのエントランス。地上部の第1デッキを制作します。

材の運搬は体力勝負


鋸山(千葉県富津市・鋸南町)で制作している今回のツリーハウス。山道の途中にある現場へは当然、重機やトラックは入れない。ハウスを構築する為の材は、全て人力で担ぎ上げるしかない。地上部デッキ用のコンクリートブロックや砂利、デッキを支える太い角材は重く、体力勝負の部分がある。
ホストツリー選択時に周辺環境を見る際、重機が入れるのか?入れない場合、作業道の開墾から始める必要があるのか?など、制作時の考慮が必要だ。

ツリーハウスは生きる樹木に直接土台を築く。その為、制作後の定期的なメンテナンスが大変重要だ。可能ならば、人が自然と寄り添いながら暮らす、その傍らにあって欲しい。森の中の秘密基地!秘密過ぎて誰も行かない…では、ハウスは直ぐに朽ちてしまう。
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ツリーハウスビルダーは台風や大雪、天候が荒れる度に、樹は大丈夫か、ハウスは無事か。といった事をとても心配する。世界各地にハウスを制作しているコバさんは、きっと世界中の天候が気になったりするのだろう、と思ったりする・・・。

担ぎ上げた材は、すみやかに防腐処理を行う。荷揚げでどんなに息が切れていても、この作業は手抜きは出来ない。
今回、僕らが使用しているのは、Wood Long-Eco(ウッドロング・エコ)。この塗料は天然成分のみで作られた木材保護剤。雨をはじき材料の腐食を防ぐエコ塗料だ。化学塗料は土壌の成分を変え、樹木に負担が掛かる。自然に敬意を払い、使用する材や塗料など、ひとつひとつ丁寧に。可能な限り気を配りたいところだ。
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樹上へのエントランス


今回、ハウスが乗るトップデッキは地上7m付近に制作予定だ。中間部に制作する第2デッキでも4m辺りになる。その為、エントランスとなる地上部のデッキも、出来るだけ高く制作する。地上部の第1デッキは、ホストツリーに対して2段構成、階段のように制作する事となった。ホストツリーの根元から見れば、地上1m程の高さにデッキが来る。

要領は、デッキを組む際もハウスをイメージする際も同じだ。屋根などに用いる細い角材の垂木(たるき)を使って実寸でアタリを付けていく。先ずは水平をしっかり取る。傾斜のある谷際にデッキを組むのは、ビルダー見習いにとっては一苦労だ。
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僕らのホストツリーは谷際の斜面に生えた樹だ。その為、根は斜面の傾斜に耐えるよう、山側(下・写真手前側)第1デッキの真下に大きく根張りしている事が予想される。根は樹木の生命線。デッキの基礎を構築する際は、下に根が無いかなど、翼々注意が必要だ。
町に戻ってみると、街路樹などアスファルトで根元を固められた樹木を見かける。少し悲しい。

斜面での根の展開については、針葉樹と広葉樹で大きく異なる。ツリーハウス造りは、樹木の知識・管理技術が求められる。その制作にあっては、常に樹木や自然との対話を忘れてはならない。
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デッキに限らず、樹皮に構造物が当たってしまうと、樹を痛めてしまう。樹木の成長や、風などよる樹の揺れを考慮し、幹周りは十分に余裕を空けて制作する。

設計図やイメージがあっても、必ずしもその通りに行かない事の方が多い。だが、それがかえって図面では描けない美しい外形を生み出したりする。だから面白い。
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遊び心を忘れない


どんな仕事にも、遊び心を。
今回の地上部、第1デッキは、コバさんのアイディアで“木の葉”をイメージする事に。床板も数種類の幅を組み合わせて、葉脈を模していく。2段構成のデッキが、少しずつ姿を現し、一気にツリーハウス制作“らしく”なってきた。
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床板を張り終えると、無骨だが何となく形になってきた。これで、ホストツリーの根元に足場が出来上がり、樹上作業もし易くなる。ビルダー見習い達は、いつの間にか電動工具にも慣れ、作業進行も円滑になってきた。
余った根太や床板を切り落とし、“木の葉”の形状をここから制作していく。コバさんが引いた外郭線をフリーハンドで切り落としていく。とても創作的な作業だ。
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ようやく作業を終え、ツリークライミングし樹上から眺めると、第1デッキの葉っぱの形がよく見える。
ここが、樹上へのエントランスとなる。

写真(下・中央)でも解るように、地上部、第1デッキ制作と並行し、中間部、第2デッキの制作も進行し始めた。その制作では、地上部とは一転、樹上にデッキを構築する大変さを痛感する事となったのだが…その様子はまた次回。
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今回のツリーハウスビルダー養成講座は、好天に恵まれ、山林の美しい空気に包まれながら作業を進めている。作業は大変だが、現場に入ると不思議と癒され、元気になる。

自然は時に厳しい表情も見せるが…それでも僕ら人間は、自然の一部。敬意を払い、寄り添って暮らす。そんな事が大切なのではないかと、制作を通して感じるようになってきた。

 

ツリーハウスクリエーター 小林 崇さんと、その世界についての体験レポート。
次回、樹上のデッキ制作につづく。