老いた鉄道車両の見る夢「The Little Red Train Carriage」

森の中に建つ赤い外壁の小さな家は、かつてオーストラリアを走っていたクイーンズランド鉄道の車両でした。
打ち捨てられていたこの車両に新しい命を吹き込んだのは、野外彫刻を専門とするMatthew de Boer。彫刻家らしく、細部まで凝った意匠の造りです。

捨てられていた当時この車両は、ぼうぼうと生い茂った草に埋もれ、おまけに倒木によって屋根の3分の1が失われていました。木製だけれど非常に頑丈な造りをしていたこの車両も、こうなってしまっては仕方がありません。

train3
それでも、なんとか住居として蘇らせたいという友人の願いを受けて、彫刻家はこの車両に手を入れることを決めました。空いてしまった穴をふさぐよりも、屋根全体を交換してしまったほうがいい。でも、古きよき趣は壊さずにそのまま残す。新しい屋根にはたくさんの小窓が取り付けられ、自然光が内部にさんさんと降り注ぐようになりました。

train6
train5
新しいトタン屋根と外壁の木材以外はすべて、再利用の素材が使われています。窓に施されたステンドグラスからは、古きよき昔が立ちのぼるよう。

駅のプラットホームを模して、バスルームは車両の外側に作られる予定でした。だけれど外部分を建築するよりも前に、車両本体が売れてしまったのだとか。たしかにこんな居心地の良さそうな家、誰かの手に渡ってしまう前に自分のものにしたくなりそうです。

train2
オーストラリア大陸を長く旅してきた家。今では一箇所に落ち着いて、車窓から見える景色は流れていかなくなりました。しかしここで暮らせば、車両が記憶する旅の夢を見られるような気がします。

夜になって窓の向こうが闇に包まれれば、旅の続きは銀河鉄道へ。いや、もしかしたらいつの日か本当に、住居と姿を変えたこの家が再びレールの上を走ることもあるのかもしれません。

Via: smallhousebliss.com