旅の思い出をネットで共有、ソーシャルネットワーク時代のゲストハウス「PodShare」

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見知らぬ土地のホテルで過ごす夜、しかも海外で一人旅となれば、誰でもちょっぴり心細く感じるもの。そんな旅先での孤独を癒してくれるソーシャルネットワーク時代のゲストハウスがハリウッドにあります。

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PodShareはPodと呼ばれるベッド以外、すべてのスペースを他の宿泊者と共有するゲストハウス。それだけなら従来のユースホステルと変わらないように思いますが、PodShareではプライバシーを守る壁がなくてもゲストが快適に安心して眠れる環境にこだわりました。

ユースホステルで多く見られる二段ベッドは、はしごの登り降りがわずらわしく、ベッドがグラグラ揺れたり荷物をしまう場所がないなど使い勝手はよくありません。そこでPodShareのオーナーであるElvina Beckさんは彼女の父親と協力し、これまでになかったPodと呼ばれる画期的なベッドスペースを誕生させました。

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全10戸のPodは、はしごのかわりにカーペット敷きの階段で固定され、奥行き1.5m、幅2.3m、高さ1.5mの内部には壁かけのフラットテレビ、可動式の読書灯、充電プラグ、タオルや服を掛けるバー、そして寝心地の良さそうな低反発マットレスが備え付けれられています。

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カーテンのないオープンなベッドを見て「自分はムリ……。」と思った方もいるでしょう。けれど旅先では人の目があるほうがセキュリティー的に安心なこともあります。なればせっかくの見晴らしの良いベッドに一人旅、勇気を出してお向かいや上下のゲストに話しかけてみましょう!

そんな時大活躍するのが上段と下段のPodの隙間にかけられた細長い黒板。ここにPod番号と自分の名前を書き込んで、他のゲストやスタッフに名前を覚えてもらいます。相手の名前を知っているだけでも最初の話しかけやすさは随分と違うものです。

PodShareにはその他にもゲスト同士が自然と交流できるような広い通路スペースがあり、時に即興のセッションやコメディーショーの会場となってゲストが孤独になる隙を与えません。

このように他のゲストハウスやホテルにはないサービスが売りのPodShareですが、特にユニークなのはゲストがそれぞれ半永久的な個別番号を与えられていること。この番号か名前をPodShareのサイトに入力すると、スタッフが作成したゲストのプロフィールをオンライン上で閲覧することができるのです。時を経てもかつての仲間と再開できるタイムカプセルのようなこのシステムは、人とのつながりを大切にするPodShareの精神を象徴しているようです。

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PodShareに魅せられたゲストは開業から3年でおよそ4000人。Tripadvisorのような口コミサイトでの評価も上々とその前途は明るく見えましたが、2015年の1月1日、建物の所有者が代わったことで賃貸契約が終了し、「ますます拡大する世界的な孤独感」を癒してきたPodShareは大勢のゲストに惜しまれつつ解体の憂き目に遭います。

現在は別のロケーションでPodShareを再開するべくクラウドファンディングで資金集めに奔走するElvinaさんはこう語ります。
「PodShareのようなミニマルでソーシャルな旅がイノベーションを起こし、心の開放や新たな発見を促してくれると信じているわ。」

彼女のその情熱とネットで今も繋がる世界中のPodestrianたちによって、さらなる進化を遂げたPodShareが新たな旋風を巻き起こす日もそう遠くはないようです。

(文=伊藤愛)

Via:
tinyhouseblog.com
indiegogo.com
thepodshare.com