コンパクトだから快適な、森の中の小さな住まい「Staked Cabin」
アメリカ合衆国ウィスコンシン州の人里離れた森の中、自然豊かな周りの風景とは異質な家が建っています。
積み木を積み上げて作られたような、この家の名前は「Stacked Cabin」。2012年に建築事務所「Jonsen Schmaling Architects」によって設計されたものです。
「Stacked Cabin」という名前の通り、家は四角い箱を積み上げた(stock)されたような外見をしています。
このような外見になったのは、クライアントの予算が少なく、費用を抑える必要があったため。建築事務所は構造をできるだけシンプルにすることで、予算を抑えようとしたのです。
敷地面積は約82㎡。2008年の調査によると、日本の一戸建て住宅の平均敷地面積は持ち家で266㎡、借家では45.5㎡ですから、アメリカの家としては小さな部類に入るのでしょう。
家は3層構造になっていて、下から地下室、その上にリビングホールやベッドルームなどの居住スペースが積み上げられ、いちばん上には、8坪ほどの小さな書斎があります。
建物の一番下にある地下室は家が建つ斜面を掘り進めて作られていて、作業場、格納倉庫、トイレを備えます。
入り口の木製のドアを開けると、そこにはリビングへと続く階段が。リビングは薪ストーブを中心に、中央がリビング、左右には寝室とキッチンがあります。
リビング、寝室、キッチンを仕切るのは、床から天井まであるオレンジ色の長いカーテン。実はリビングスペースにはほとんど内壁がありません。
ウィスコンシン州はカナダと国境を接した州で、冬の期間が長く、厳しい寒さで知られる地域です。冬場の平均気温は−10℃で、さら気温が下回ることもあります。内壁がない理由は、リビング、キッチン、寝室の間に壁を作らないことで、効率的に居住空間全体を温めるため。アメリカの家にしては控えめな敷地面積も手伝って、暖房の費用も安く抑えられることでしょう。
温もりを感じさせるオレンジのカーテンや、部屋の印象を明るくする白い天井や壁も同様に、暗くて長い冬を快適に乗り切るための知恵でもあるのです。
リビングホールには斜面と同じレベルに設けられた大きな窓があり、これを開放することで外に出ることができます。
夏場はこの窓を解放することで、屋根つきのアウトドアスペースに早変わり。最上階の書斎からは、リビングスペースの屋上に上がることもできるので、空気の澄んだ冬場には望遠鏡を持ち出して天体観測をしたり、夏場にはBBQやパーティをしたりするのも楽しそうです。
大きく、庭付きの家が豊かさの象徴であったアメリカ。しかし、すべての人、すべての地域にその豊かさは当てはまりません。
「Staked Cabin」のように、土地の気候や予算に合わせてコンパクトにしたからこそ、豊かに暮らせることもあるのです。
すべては適材適所。あなたが求める生活は、どのようなものですか?
Via:archdaily.com