未来と希望の公衆トイレ「Toigetation」
「Toigetation」は、人が安心して暮らしていくために発明された。それは、熱帯の植物のように増殖していくことだろう。それは、先進国の都市生活で有り難みが忘れられているもの。それは、生活衛生改善のためのソリューションである。
ベトナム、カオバン省ソンラップ集落の山間部の斜面に良く馴染み、枝葉を広げる大木をモチーフに設計された「Toigetation」は、公衆トイレだ。
「Toilet(トイレ)」+「vegetation(草木、植生)」=「Toigetation」と命名された このプロジェクトは、3つの条件をもとにデザインされた。それは、「早く建設できる」こと、「低コスト」であること、そして「広く応用が効く」こと。
建物の表面に厚い層を成す木やハーブなどの植生「vegetation」は周囲4面のテラスを覆い、熱い陽射しを和らげる。竹で組まれた日除けのようなスダレ壁は、構造的な補強要素を担っており、植生により室内環境を快適に保つだけではなく、食料の供給をも担う。
国連の掲げる8つの「ミレニアム開発目標」の一つ、「環境の持続可能性の確保」には「安全な飲料水と基礎的な衛生施設を継続的な利用」が含まれる。ベトナムの学校施設では、トイレの衛生的管理が不充分であることが多い。地方で88%の学校施設のトイレが、ベトナム保健省の衛生基準を満たしておらず、4分の1の学校には、トイレそのものがないそうだ。
ソンラップ集落には、257世帯、1,700人の住民が暮らしている。70%以上が貧困層とされ、極端に貧しい地域では、電気やインフラ、道路、マーケットなどが全くない状況だ。遊牧民が生活スタイルを農耕に切り替え、森を切り開き定住したが、子供たちのほとんどが学校に行っていないそうだ。地元の学校ソンラップ校には485人の児童が通っている。10棟のクラスルーム、4つの支部とスタッフの住居が、いずれも衛生設備に関しては最低限の標準に達していない。「Toigetation」は、このソンラップ校に3週間の工期で建設された。教師や生徒を含めた地元の人材により作成され、竹やレンガ、下水管の再利用など地元の材料が使われているため、コストは3000ドルに抑えられている。
ベトナムの建築設計事務所「H&P Architects」により設計された「Toigetation」は、ソーラーパネルによる発電と下水の再利用を行っているため、都市インフラを介さずにオフグリッドで機能する。特に優れている点は、使用者である子供たちが、この計画を通して自然と地元地域について学ぶことができるということだ。
建設プロジェクトには、地質学、水文学、物理学、空気力学、生物学、野菜栽培、農業などの様々な分野の教材が盛り込まれている。子供たちの未来が、地域の生態系バランスと安定した経済をもたらすとしたら、「Toigetation」は、ただの公衆トイレには留まらない、大きな恵みになると言えるだろう。
Via:
archello.com
hpa.vn