【新連載】第1回:幸せのヒントは「住」にアリ!?デンマーク人の住まいへのこだわり|北欧エコビレッジで暮らそう
はじめまして、村上はるかと申します。
私は今、大学を休学してデンマークで暮らしています。ひょんなことから未来住まい方会議を見つけ、縁あって記事を書かせていただくことになりました。
北欧は「幸福度の高い国」として日本で知られています。そんな北欧諸国の中でもデンマークは、国連が世界中の国々を幸福度に応じてランクづけした「2013 World Happiest Report」で、2010年から2013年の三年間連続で一位を獲得している、まさに世界一幸せな国なのです。
そしてそんな世界一幸せな国の中で増え続けているのが「エコビレッジ」というコミュニティです。それは自然になるべく負荷をかけず、小さな地域の中で人と人、人と自然との繋がりを取り戻そうとする「脱工業化」への新しい暮らし方です。このコラムではデンマークを中心に北欧に広がる「エコビレッジ」という新しい暮らし方を提案していきたいと思います。これからよろしくお願いします。
第1回の今回の記事では、その導入として、エコビレッジが広まった一つの文化的要因である、デンマーク人の「住」へのこだわりについて触れます。そこにデンマークが世界一幸せだといわれる理由のひとつがあるのです。
エコビレッジという暮らし方
「エコビレッジ」と呼ばれるコミュニティは、北欧からヨーロッパへ、そして日本でも少しずつ広がりつつあります。エコビレッジが世界中に広まったのはデンマークにある国際NGO「GEN(グローバルエコビレッジネットワーク)」がきっかけで、そのGENはエコビレッジを「互い支え合う社会と、環境負荷が少ない暮らしを求める人々が作るコミュニティ」と定義しています。
GENが「環境に負荷をかけない自然に優しい暮らし」を掲げている通り、ここでは誰もが、なるべく持続可能な自給自足の生活を目指し、自然とどう共生していくかを考えながら暮らすコミュニティ。
オーガニック商品を使うのはもちろん、ビレッジ内にはオーガニックガーデンがあり、好きな時に好きなだけ野菜を収穫することができますし、自然もビレッジ内にたくさんあり、馬・羊・うさぎ・やぎなどの動物が、放し飼いで自由に暮らしています。
自然と共に上手に暮らしていく社会を追求できるだけでなく、エコビレッジでは人と人とのつながりも大切なものです。家と家の間のフェンスはなく、ビレッジ内を歩いていればかならず誰かがお茶に誘ってくれる、オープンな関係性が魅力です。
エコビレッジで暮らしていると、そこにいる人はみんな、毎日生き生き暮らしていて、生活を楽しんでいるのが伝わってきます。もしあなたがここを尋ねれば、デンマークが世界一幸せな国と言われているのも納得できるでしょう。
そして、前述したとおり、このような「エコビレッジ」というコミュニティが広がりを見せた理由には、そもそもデンマーク人が持つ「住」へこだわる文化があるのです。
それは「Hygge(ヒュッゲ)」という、デンマーク人全体の暮らしを古くからを豊かにしてきたアイデア。これを知るだけで、みなさんの明日からの生活もぐん!と豊かなものになるのではないでしょうか。
ヒュッゲというアイデア
Hyggeとは他のどの言語にも置き換えることのできない、デンマーク人特有の概念を表した言葉です。
デンマーク人にHyggeの説明を求めると、「親しい人との気の置けない会話やコミュニケーションから生まれる、小さいけれど居心地の良い幸せな時間のことだよ。」という答えが返ってきました。デンマーク人はこのHyggeと呼ばれる時間をとても大切にし、その時間をベースに毎日を過ごしています。
例えばデンマークの冬はとても長く、曇りや雨の、暗くどんよりした日々が続きます。そんな日はキャンドルに火をともし、ソファーやクッションにもたれかかり、ワインをそそぎながら、親しい友達と気長に他愛もない話を楽しみます。
ゆったりと流れる和やかな時間こそがHyggeであり、暗く寒い冬を少しでも楽しくするためのデンマーク人のアイデアなのです。
デンマークに春が来て、明るい日差しが差し込むようになると、長い冬の中この日差しを待ちわびていたデンマーク人は、日光を楽しもうと外で朝食を取ったりします。
デンマークの春は日差しがあってもまだまだ肌寒いもの。そこでデンマークの人々は、布団を外へ持ち出し、コートを羽織り、食器もすべて持ち出して、春の訪れを感じながらゆったりと朝食を食べる時間を取ります。
これもHyggeのひとつで、家からいろいろな物を持ち出したり、めんどうくさそうに思えることも、デンマーク人はそれが自分たちにとって幸せで居心地の良い時間を与えてくれるならば惜しまず行います。そして「Hyggeで始まる一日は、心豊かで贅沢な気持ちで過ごすことができる。」と口を揃えて言うのです。
夏の食卓のちょっとした一工夫もHygge。小さな工夫が食卓を囲む人々を豊かにしてくれます。畑で採れたばかりのスパイスや野菜をお皿に盛り付け、話に華を咲かせながら、太陽の沈まないデンマークの長い夏をみんなで穏やかに過ごすひととき。
大げさなものではなく、ちょっとした工夫をすることで、生活を少し豊かに過ごすことがデンマーク人の楽しみであり、幸せであり、生活のベースなのです。
住むことへのこだわり
「より豊かに住むこと」「居心地の良い空間で時間を過ごすこと」を大切にしているデンマーク人だからこそ、自分たちの一日の大半の時間をより豊かな生活のために費やすのです。
そのため、「住」空間にはそれぞれのこだわりがあります。デンマーク人の友達の家を訪ねる時には、家の案内から始まることも珍しくはありません。家それぞれに個性があり、家全体がお気に入りの家具やインテリアで満たされています。
家具やインテリアの話を嬉しそうに話す姿からも、いかに住空間にこだわりをもち、それを楽しみながら自分に合ったスタイルにつくりあげているのかがうかがえます。デンマーク人にとって家は、ただの寝食の場所ではなく、生活の基盤であり、ルーツでもあるのではないでしょうか。
エコビレッジは家だけではなく、食料の供給・余暇の楽しみ方・社会的生活・自然との触れ合いなどの、暮らしの中にあるほとんどの要素をヒューマンスケール(人が暮すうえで、落ち着きをもつことができるスケール)で提供することができる居住環境です。
住み方や暮らし方を大切にしているからこそ、「家だけでなく、その周りにあるすべての要素を、自分たちの手で、自分たちが居心地の良い環境にしてきたい」というデンマーク人のこだわりが「エコビレッジ」を広めている大きな要因になっているのではないでしょうか。
みなさんは住まうことをどのように考えていますか?それは寝食をするだけの場所でしょうか?自宅の周りの人たち、周りの環境はどうでしょうか?帰宅後だれにも会わず、コンビニ弁当を食べて寝てしまう……、そんな日々を送っていませんか?
小さなことから幸せを作り出す、デンマーク人の「Hygge」や「エコビレッジ」などの暮らし方は、何気ない日々を豊かにしてくれるヒントです。皆さんもぜひ一度試してみてください。
次回は、実際にそこで暮らす人々の暮らしぶりを紹介していきたいと思います。