結婚式もD.I.Yの時代?披露宴は築100年のボートハウスで「The DIY Wedding」
物質的な豊かさが一巡すると、単に消費するだけの生活に疑問を感じ、より自分らしいライフスタイルの実現に価値を見い出す人々が増えてくるのでしょうか?お金をかけない替わりに手間をかけるDo it yourselfの精神は、今や住まいだけにとどまらず、ウエディングの世界にも少しずつ浸透しつつあります。
ロサンゼルスで活躍するインテリアデザイナーのFaye McAuliffeさんとカメラマンのJustin Kaneさん。自分たちの結婚式は控えめで、洗練されているけど居心地の良い、アットホームな雰囲気にしたいと考えていました。エージェントやプランナーの手を借りずに理想の結婚式を実現するため、花嫁のFayeさんはPinterest(Web上で気に入った画像のスクラップやキュレーションを楽しむSNS)を使い、理想のイメージをストックする作業に没頭しました。
2人の結婚式はサンフランシスコから北に60キロほど離れた入江の集落、インバネスで行われました。両家の住まいにも近く、Fayeさんの叔父や叔母たちが暮らす町で、2人にとってもなじみのある場所でした。ラッキーなことに豊かな自然が残っており、森の挙式と水辺の披露宴という2人の理想を同時に実現できる、稀有なロケーションがそろっていたのです。
花嫁の美しさを引き立てる素朴な草花
結婚式といえば、プロに高価で見栄えのする花や飾りを手配してもらうイメージがあります。しかしFayeさんは友人たちや母、叔母たちの協力のもと、髪飾りのティアラや会場を彩る装飾などを、摘み取った素朴な草花で手作りすることを選びました。童心にかえって花の冠づくりに興じる花嫁と友人たちはとても楽しそう。結婚式の準備中は忙しさからピリピリしてしまう新郎新婦も多い中、彼女たちからはのんびりとリラックスした空気が伝わってきます。
祭壇に見立てた大木の前で愛を誓う
2人の結婚式はFayeさんの叔母の家に隣接する敷地内で執り行われました。花嫁のベールはJustinさんのお母さんから引き継いだもの。欧米の結婚式では、「なにか古いもの」「なにか新しいもの」「なにか借りたもの」「なにか青いもの」の四つの物(サムシングフォー)を花嫁が身につけると幸せになれると言われています。新郎のお母さんのベールは、「何か古い物」として新婦に贈られたサムシングフォーの一つかもしれませんね。
祭壇に見立てたオークの大木の前で、なぜか爆笑する新郎と新婦。牧師役をつとめたFayeさんの叔母さんも笑っています。厳かな雰囲気の中では普段の自分を出せないけれど、こんなアットホームな式ならばその心配もなし。新婦のとびきりの笑顔は式を大いに盛り上げます。
披露宴会場は築100年のボートハウス
式場を後にした一行は貸切のスクールバス(!)で披露宴会場に向かいました。披露宴といえば、ホテルやオシャレなレストランなどが思い浮かびます。しかしFayeさんとJustinさんが選んだのは1914年に建てられた古びたボートハウス。地縁のあるお陰で、なんとか会場として押さえることができたそう。でも一見するとただの古い小屋……。ここがオーナーに何度も電話やメールをして、やっとの思いで予約にこぎ着けた場所?ゲストもにわかには信じがたいことでしょう。ところが会場に一歩足を踏み入れると、天井の高い開放的な空間、会場の雰囲気に合わせたユニークでオリジナルな装飾と、素晴らしい水辺の景色にゲストの目は釘づけに。
海側の窓に向かって真っすぐに伸びるテーブルも、息を飲むような美しいサンセットがよく見えるようゲストに配慮されています。テーブルやベンチは建物の雰囲気に合わせて気取りのない素朴なガーランドでおめかし。新郎新婦のための雛壇は設けずに、主役といえどもゲストと同じテーブルについておしゃべりを楽しみます。
ローカルフードや手作りケーキで「らしさ」を演出
パーティー料理はFayeさんがこの地方の特産品をベースに考えたメニューが並びました。オープンキッチンで腕を振るうのは彼女の友人でシェフのDavidさん。入り江で獲れたばかりのカキに手作りのカクテルソースをあえたものなど、新鮮なローカルフードの美味しい食事にゲスト同士の会話が弾みます。
お祝いの食事の締めはもちろんウエディングケーキ。目にも楽しい段々重ねのウエディングケーキはFayeさんのお母さんの手作り!ベーカリーショップのオーナーであるお母さんが真心こめて作ったケーキは、思わず笑みがこぼれてくるほどチャーミングでフレッシュ。ここでも地元のマーケットで調達したフルーツがふんだんに使われています。手作り感あふれるウエディングを締めくくるにふさわしい、世界にひとつだけの素敵なケーキです。
これが好き!を貫くことが自分らしい結婚式のコツ
パーティー会場が古い木造の建屋だったことで、FayeさんとJustinさんの愛犬Finnも2人のハレの席に立ち会うことができました。会場のムードメーカーだったFinnの存在は、結婚式をさらにあたたかな雰囲気で満たしてくれました。また海風の寒さに思わずドレスの上から革ジャンを羽織ってしまうFayeさんの気取りのなさに、新郎もゲストも終始リラックスしてこの場を満喫することができたのではないでしょうか。
「あなただけの結婚式」と銘打ちながらも、気付いてみれば会場やエージェントの用意した選択肢の中から選ぶだけのことが多い結婚式。FayeさんとJustinさんの例は、プロに頼り切りにならずとも、自らの手と時間をかけることで心に描いた式やパーティーは実現できるのだと教えてくれるようです。「自分たちらしい」結婚式に必要なのは、心から祝福してくれる友人たちや家族、お世話になった人たちとの絆。そして自分を心地よくさせてくれる物を、自信をもって好きだ、と言える新郎新婦の流されない強い心なのかもしれません。