アルプスの空家活用?元・牧畜小屋の外壁に包まれたモダンリビング「Gaudin House」
標高1760m、アルプスの牧草地、スイスのアンゼール。冬になれば、雪深く過酷な気候条件の雪山だが、夏場は放牧地として、緑の草原に囲まれる。牧畜用の石積の小屋は、1878年に建てられた。
しばらく忘れさられた牧畜小屋は、建てられた当時の姿を留めていた。この小屋の居住施設へのコンバージョン(用途変更を伴うリフォーム)を手がけたのは、スイスの建築設計事務所Savioz Fabrizzi Architectes。彼らは、この小屋のプロジェクトで、最も重視したのは、この小屋の元来の個性を活かすということ。小屋は石積の外観を保ちながら、厳しい冬のスキーシーズンでも、快適な休暇を過ごせる居住空間に生まれ変わっていった。
その地階に家畜が収容されていた放牧地の小屋は、かつての姿を留めながらも、新しい人生をスタートさせていく。
粗面の石のファサードは、新しいものだが、元の姿を再現したものだ。内部は、全面にカラマツの木板が張られ、薪ストーブの熱をしっかり包み込み、日が暮れて、談話を楽しむ住人をいつまでも温めてくれるだろう。
薪ストーブを背にして見える、横一文字の大きな窓からは、アルプスの絶景が一望できる。部屋の天井は、三角の屋根形状と合わせて斜めに掛けられる「登り梁」に張られているため、窓から入る光が、部屋全体に広がる。このシンプルで現代的な内部と、古い牧畜小屋の外観との差が、この小屋の魅力を引き出している。
絶景を望める立地であり、スキーリゾートという土地柄から、朽ち果てた牧畜小屋は、見事に生まれ変わった。小屋のプロジェクトは施主の名から「Gaudin House」と呼ばれるが、現在、休暇用の別荘として使われている。
このコンバージョンでは、絶景を目の前に景色を望める斜面に建つという条件を見つけたということも、大きな発想の転換である。なぜなら、傍らに朽ちた空家などがあっても、通常なら、見落としてしまうだろうし、景色の一部として、見過ごしてしまうだろう。もし、近所の空家を見て、「自分が暮らしてみる」ことを想像してみたら、新たな価値を見出すことができるかもしれない。
最近の日本では、空家の増加が問題視され、法制度も変わり始めている。ほんの数秒でも、魅力的に変化した空間を想像してみるだけで、空家は減っていくのかもしれない。
via:
archdaily.com
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