古いけれど新しい、被災経験を機に進化した蔵「Rebirth House」

via: Ryo Matsui Architect INC.
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東日本大震災でなくなってしまった貴重な建物は、いくらあることだろう。戻ってこない建物のことを考えると胸が痛むが、今回紹介するように、逆境を逆手に一歩先に進んだ例を見ると、嘆いてばかりもいられないなと思う。

東日本大震災の際茨城県にて被災した伝統的な蔵が、現代の技術によって美しくよみがえった。いや、もともとの建物より更にバージョンアップしたことを考えると、新しく生まれ変わった、というべきだろうか。

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次世代に日本の伝統を伝えて生きたい、というクライアントの思いからはじまったこのプロジェクトはしかし、非常に難しい道のりでもあった。まず、震災での破損状態が激しく、建物の枠組みをそのまま使うのは最初から不可能だと分かっていた。デザインを担当したRyo Matsui Architects Inc.は、それでも屋根瓦など再利用できる部分を活用し、周囲の建物と溶け込む元々のデザインを再現するように努めた。

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via: Ryo Matsui Architect INC.

そうこうして最終的に決定されたデザインは、元々の建物の完全なる建て直しではない。モダンな要素を上手く組み入れた、「新しいけど古い、古いけど新しい」としか形容できない見事なコンビネーションが活きたデザインとなった。念頭に置かれていたのは、「古い記憶と新しい暮らし方」。年代を超えて愛されていくために、伝統の持つ価値を大事にしつつ、新しい息吹を加えていかなくてはならない、と彼らは考えた。

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via: archdaily
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内部で気持ちよく生活できるように、元々の設計ではほとんどなかった窓を多く取り付け、明るく開放的な空間を実現させた。しかし、それでも外観は伝統的な蔵屋敷に見えるよう、外部から窓は見えないような特殊なデザインを施してある。夜になって電気をつけてはじめて、この隠し窓は姿を現す仕組みだ。

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コンパクトに見える建物は実は広々とした二階建て。地下にはワインラックが設置されたおしゃれなバースペースまで隠れている。秘密の会議がこの地下で行われているようで、なんだかわくわくしてしまうのは私だけだろうか。

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伝統を大切にしながら、新しいレースをまとうように美しくバージョンアップしたこの蔵屋敷。震災という逆境を見事に乗り越えて、新しい伝統のあり方を追求したこの「生まれ変わった家」には、私たちがこれから考えていくべき課題がつまっている。

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(文=杉田真理子)

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