麦わらの小屋、フランスの麦畑に横たわる巨大な筒形ストローベイルハウス
お米が主食の日本人は、「収穫」と聞くと稲の収穫を想像し、漠然と秋になされるものイメージするのではないだろうか。でもパンやパスタが主食のフランス人にとっては、収穫とは麦の収穫であり、それは主に6月から7月に行われるのだとか。そんな初夏の眩しい太陽に照らされた、収穫後の麦畑に出現した謎の物体。まるで巨大なトーテムポールが横たわっているようにも見えるこのカタマリは、いったい何でしょう?
正解は、麦わらから作られた円筒型の小屋。フランス西部の街ナントとパリを拠点に活動しているアーティスト「Barreau et Charbonnet」(バロー氏とシャルボネ氏のユニット)の「Il n’a pas plu pour les moissons!」という作品なのだ。読み方は「イルナパプリュプールレモワッソン!」と早口言葉のようだが、意味は「収穫に雨は降らないよ!」という可愛らしいニュアンス。
彼らの地元ナント市にあるカルクフーという場所に期間限定で設置されたこのストローベイルハウスは、かつての人々が土地を開墾し、そこから住居を作っていったというプリミティブな営みに敬意を表して作られている。バロー氏とシャルボネ氏は、この作品の作り方にもこだわった。昔の人々と同じように、わらの裁断から壁面への貼り付けまで、工具こそ使用しているもののほとんど手作業でストローベイルハウスを作ったのだ。
この小屋の外側は直径2m、全長7mあるが、わらを何層にも重ねているので内側は意外にコンパクト。ベンチがあり、腰かけたら目の前の窓から外を眺めることができる。
出入口は、窓とは反対側に二つ。
昼間明るいところだと巨大な麦わらのロールに見えなくもないが、夜に中からライトを灯すと途端にムード満点になる。月夜の散歩の途中に、こんなところで一休みできたら最高だ。