少なく、長く、という美学。ミニマリストのための「スローファッション」
未来住まい方会議で以前紹介した、服のお直し屋さんがキャンピングカーで移動する「The Worn Wear Mobile Tour」を覚えているだろうか?
■ まだ捨てないで!ウッドのキャンパーで行く、パタゴニアの古着お直しツアー「The Worn Wear Mobile Tour」
アウトドアウェアのパタゴニアの企画で、仕立て屋さんとミシンをキャンピングカーに乗せてアメリカを横断するものだ。車をとめた先々で、古くなった服を無償で直す。アフターメンテナンスに力を入れるパタゴニアは、服一枚一枚に込められたストーリーを大切にしながら、「質の良い一枚を長く」というメッセージをアメリカ中に発信した。それも、モバイルハウス好きにはたまらない、気の利いたキャンピングカーで。
今回は、このパタゴニアの例が「小さな住まい方」を更に豊かにするヒントを求めて、「スローファッション」について考えてみたいと思う。
「Dressing up smartly(賢く着る)」という美学
小さな住まいにはコンパクトな持ち物が必須だ。必要以上の身の回りの品に囲まれて、自分がミニマリストだとは言いがたい。食べるもの、着るものなど、日々自分が消費するものへ対する細やかな気配りが、「本当に必要なものだけ」を軸にしたシンプルな生き方へとつながっていく。
だから、衣服だって単なるファッションと侮ってはいけない。衣類の製造が環境に与えるダメージを抑えるためにも、「Dressing up smartly(賢く着る)」というのは重要なテーマなのだ。これは、コペンハーゲンをベースに活躍するwebマガジン「Less Magazine」が発信する重要なテーマだ。
小さく、豊かに生きるために必要な知識
以前未来住まい方会議で紹介した移動式未来型ドーム「Dorms of vision」で、「Less magazine」による服のお直し出張が開催された。ブランドに関わらず古くなった自分の服を持ち込めば、無料で一枚一枚丁寧に修繕してくれる。
加えて、日々自分たちが身にまとうものについて意識的になるために、服が作られている素材について詳しくなろう、というワークショップも開催された。どの素材が何の用途に適しているか、どのような手入れでどれ程長持ちするか、ということを学びながら、「より少なく、より豊かに」生きるためのライフスタイルについて参加者同士が意見を交換しあう。
これに関連して、未来住まい方会議で紹介する自作のタイニーハウスやDIYの作品についても考えてみてほしい。これらすべてに共通しているのは、自分の身の回りのものへの細やかな気配りと、シンプルかつ長く使い続けるための必要な知識だ。
一枚一枚のストーリーを大切に。ミニマリストのための「スローファッション」
冒頭で触れたファッションブランドのパダゴニアは、ユーザーから「一枚一枚の服にまつわるストーリー」も集めている。友人からプレゼントされたもの。ぼろぼろだけれども手放せない理由。フリーマーケットでみつけた一着との運命の出会いなどなど、思わず自分のクローゼットを開けて思い出に浸りたい気分になるものばかりだ。
ちまたには破格で購入できてしまうファーストフードならぬファストファッションに溢れているけれど、ちょっと立ち止まって、手入れしてでも長く使い続けたいものを買う。そんな「スローファッション」のあり方は、シンプルな暮らしをモットーにするミニマリストには必須ではないだろうか。
スローファッションといっても、なにも超高級な服を買えといっているわけではない。未来の住まい方会議でもこれまで紹介してきた、廃材を利用したリサイクルのタイニーハウス達を思い出してほしい。まだまだ使えるのに、有効活用されないまま捨てられたものに手を加えて、もう一度息を吹き返させる。
フリーマーケットやセカンドハンドショップに足を運べば、一枚一枚ストーリーを持った服たちと出会える。自分がもう着なくなったものは、もちろん捨てずにリサイクルする。シェアリングエコノミーにも繋がっていく考え方だ。
タイニーハウス好きが飛びつくような、お洒落なウッドキャンパーでアメリカを駆け回ったパダゴニアの「The Worn Wear Mobile Tour」。そのウッドキャンパーが運んだメッセージは、単なるお洒落なデザインではない。一枚一枚を少なく、長く、大切に。シンプルに生きるためのこれからの未来の住まいを考える際に、ぜひ、自分が身にまとうものへもまなざしを向けてみてもいいかもしれない。
(文=杉田真理子)
via:
Patagonia.com
Los Angels Times
Transworld Business
Less Magazine
Yadokari.com
wornwear.patagonia.com