緑の美しいプランターハウス「stacking green」

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目の覚めるような真っ白なコンクリートのブロックが積み重なった建物。その隙間から覗く植物の鮮やかなグリーンとのコントラストが実に爽やかで美しい。

初夏の彩りを思わせるこの建物は、ベトナムのホーチミン市の市街地に建てられたもの。建築を手がけたのは、ホーチミンを拠点に活躍する大手建築事務所Vo Trong Nghia(ボー・トロン・ニア)建築事務所と、同じくホーチミンを拠点に活躍する日本人建築家の西澤俊理氏と佐貫大輔が率いる建築事務所Sanuki + Nishizawaだ。

筆者もかつて2回ほど彼らの作品を紹介させてもらったが、どれも実際に住みたくなるような居心地の良さそうな家ばかりだ。彼らの建築の特徴は近代の象徴であるコンクリートと自然の象徴の植物の融合がテーマで、過去にもモダンアートのようなコンクリートの建築物と草木を共生させてきた。

この事務所の手掛けた建築を紹介した過去の記事は、以下のリンクから見ることができる。

伝統とモダンが融合した、アートのような二世帯住宅 「Binh Thanh House」

ホーチミン発、人と木のためのシェアハウス「House for Trees」

今回の施主は30代の若い夫婦とその母親の3人家族だ。間口が4mで奥行きが20mとベトナムでは典型的な鰻の寝床のような土地に、建築家のボーは4階建ての二世帯住宅を設計した。

「もともと人口密度の高いサイゴン(ホーチミン市)では、人々の目を楽しませるためか、街の至るところに花壇がある。そこからもわかるように、サイゴンに住む人々は通りや家のバルコニーなどで季節を彩る花や植物を育て慈しむ習慣があるようだ」と建築家のボーは言う。

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そんなサイゴンの人々の習慣からヒントを得たのか、建物をよく見ると建物の通路側の壁面の1階から4階までコンクリート製のプランターが何層も積み重なって(スタックされて)いる。プランターの高さや間隔は植物の高さに合わせて高さ25~40cmで作られている。このプランターの中には土が敷かれ、階層ごとにさまざまな種類の植物が植えられている。水やりには雨水を使う。灌漑システムに吸い上げられた雨水をプランターに埋め込まれたパイプで水やりが自動的にできる仕組みだ。

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見た目が美しいだけではなく、このプランターの壁面によって、直射日光が家に侵入するのを防ぎ、室内は暑いベトナムの日中でもクーラーを使う必要がないほど風通しがよく涼しい。プランターの隙間から入った暑い空気が、プランターの土と緑によって冷やされるためだ。しかも、この壁面によって交通量の多いホーチミンの喧騒や排気ガスからも家を守ってくれるのだ。

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しかし、直接光が入らないと、室内が暗いのではないかと思われるだろうが、その点も心配ない。建築家は家の一端に明かり取りの吹き抜けになった小さなバックヤードを設け、外部から見えないようにプライバシーを守りつつ室内に光が入るようになっている。暗くなりがちな中階層部分の中央の屋根にも天窓を設け、3・4階部分の部屋の中央にも光が入るように工夫しているのだ。

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さて各階を見てみよう。

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1階の入り口部分は駐車場だ。駐車場奥の1階部分には広い寝室がひとつある。そして寝室の奥には美術館にあるようなモダンなスタイルの小さなバックヤードがあり、吹き抜けの屋上から優しく光が差し込む。このバックヤードの左側にある扉は、1階のトイレに繋がっている。

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2階に上がるには駐車場の左脇にある階段を上る。2階は一家の団欒スペースだ。部屋の中央はキッチンで駐車場の上にあたる部分がリビングルーム。暑いはずの日中でもこの部屋に入る風は涼しく、クーラーを使う必要もほとんどないそうだ。ちなみに、ひと月の電気代はたったの25ドル(約2500円)なんだとか。

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3階にはもう一つの寝室と広いバスルームがある。朝の目覚めと共に美しいグリーンが目に飛び込んでくる寝室は何ともうらやましい。バスルームには大きな浴槽が。部屋の両端に見える植物や屋上から差し込む太陽光のおかげで、とても開放的だ。ここでゆったりとぬるい湯船につかりながら読書をたのしめば、至福の極みだろう。

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そして4階の半分は書斎と祈りの部屋が設けられ、残りの半分は屋上庭園になっている。この屋上庭園のおかげで階下に直接の日光による熱が伝わりにくくなっているのだ。書斎で仕事に疲れたら、この屋上庭園から街を眺めながら、お茶を飲んだり、家族と語らうのも休日の素敵な過ごし方だろう。

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ベトナムはここ数年急速に発展しているが、筆者が過去に見た建築はどれも植物をうまく取り入れて共生しているものが多い。コンクリートづくめの発展ではなく、植物との共生をこれからも増やしていってほしいと切に願う。

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