森の中のキャビンで、時を忘れる。究極のミニマルハウス「Signal Shed」
都会の喧騒に疲れ、リセットしたくなったとき、どんなところへ足が向くだろうか。アメリカ・オレゴン州の森の中に、そんなときに訪れたくなるような、小さなキャビンがある。樹木の間にひっそり佇む「Signal Shed」は、余計なモノをはぎ捨て、自然と一体になる喜びを教えてくれる。
「Signal Shed」は、ポートランド市に住むMariah Morrow さんとRyan Lingardさんが手がけたDIYキャビン。設計は建築家のRyanさんが担当し、森に負荷のかからない、シンプルで安価なキャビンづくりをめざした。地元の倒木材を購入し、窓やドアはリサイクル。材木や機材などは、登山道から運び入れたという。
「Signal Shed」は小さいながらも、そのセンスは抜群だ。外壁は森の木々に合わせた墨色の縦格子だが、正面のレッドシダーは横張りで明るい。デッキから大きなハッチドアを開けて中へ入ると、すっきりした空間が広がる。たったの12平米なのに、モノが少ないせいか、狭さを感じさせない。あるのは、キッチンベンチと折りたたみ式のテーブルと薪ストーブだけ。ロフトへのハシゴがおしゃれだ。
「Signal Shed」のウリは電気も水道もないところ。料理は薪ストーブを使い、夜はキャンドルやランプを灯す。子どもの頃からキャンプが大好きだったMariahさんは、電気も水道もない暮らしは全く抵抗がないという。それどころか「電気がないとスローダウンできるし、灯りや暖を取ることがどんなに大変かがわかる」という。Ryanさんも「静けさの中で優先順位をリセットする」そうだ。
デッキの陽だまりに寝そべって、美しい湖を眺め、薪ストーブの前で、お気に入りの本を読みふける。ゆっくりとした時が流れる「Signal Shed」は、心身の充電所。何もないということのありがたさを実感しながら、森の音に耳を澄ませる。