街に笑顔をもたらす場所に。布とコンクリートで再建されたコミュニティセンター

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「コミュニティセンター」と聞いて、みなさんはどんな印象を抱くでしょうか。日本人が想像するのは、地域の人々が集まってカルチャーイベントなどを開く場、寄合場というイメージではないかと思います。カンボジアのとある女性グループは、古くなったコミュニティセンターを再建し、地域の人々に幸せをもたらすことに成功しました。その地域に無くてはならない存在になった、そのコミュニティセンターのストーリーをお話しします。

カンボジアのシアヌークビル


物語の舞台は、東南アジアのカンボジア南部に位置する港湾都市・シアヌークビル。その長く美しい海岸線から、近年ではビーチリゾート化が進んでいます。

街の開発自体は1964年頃から始まったものの、1970年から90年代にかけて国内を混乱に陥れた内戦のせいで、都市開発は大幅に計画が狂います。観光地以外では、学校などの市民のための生活インフラが整備されていない場所も多く残されています。

そんな状況に危機感を抱いたシアヌークビルのクメール人(カンボジアの90%を占める民族)の女性たちが、グループを結成。10年以上使われて老朽化したコミュニティセンターを、より一層、市民のために役立つ場所にしようとプロジェクトを立ち上げたのです。

外国のエンジニアたちと、地元のボランティアからなるチーム

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クメール人女性たちが立ち上げたプロジェクトに、非営利団体「Orkidstudio」やイギリスのデザイン・エンジニアリング企業である「StructureMode」が賛同し、コミュニティセンター再建プロジェクトは動き始めます。

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カンボジアの一般的な家は木造の高床式建築ですが、このコミュニティセンターの中心的な素材に選ばれたのは、何とコンクリートと布。内戦の影響から、過去数十年でカンボジア国内の熱帯雨林の被害が進行したことと、伐採のコントロールがなされていない懸念から、木造ではなく全く別の資材を使うことにしたのです。

具体的にはコンクリートを鋳造する型にファブリックを使用したのですが、その縫製には主に地元の女性たちがその技術を提供しました。外国からの技術に頼りっきりになるのではなく、地元の人々が男女問わず、参加できる作業には積極的に関わったのです。

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外国のエンジニアたちと地元のコミュニティやボランティアが協力したことで、複雑な設計だった新生コミュニティセンターは、2015年の夏にわずか8週間で完成しました。

学び場、遊び場、仕事場として愛される「Bomnong L’Or」

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完成した新生コミュニティセンター「Bomnong L’Or」の総床面積は240㎡。コンクリートとファブリックという建物の素材はカンボジア国内では珍しいものの、高床式を踏襲するなど地元になじむ造りになっています。

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かつてのコミュニティセンターの内部は暗く、換気も悪かったのが地元の人々の大きな不満でした。けれど再建された「Bomnong L’Or」の環境は抜群。明るく風通しも良いのに、長い庇(ひさし)があることで直射日光は防がれているのです。

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「Bomnong L’Or」には4つの大きな教室、コンピュータールーム、管理スペース、サービススペース、石鹸造りのためのワークスペースがあります。子どものみならず、大人にも就業に必要な補助教育の場を提供しているといいます。子どもを家計のための労働力にすることなく、センターで必要な学びを得られるように、特に女性に新しいスキルを習得して収入を得る機会を提供しているのだとか。

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だからといって子どもたちは「Bomnong L’Or」で勉強ばかりしているわけではありません。敷地中央のプレイエリアで思いっきり遊ぶこともできます。ここならば、常に地元の大人たちの目が行き届くので、安全に遊ばせることができるのです。子どもがここで遊んでいれば、大人も安心して仕事や就業のための勉強に集中することができるのですね。

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ただ建物を新しくするだけではなく、地元の人々にとって必要なものを提供できるよう考えて設計された「Bomnong L’Or」。しかも環境問題をも考慮して斬新な素材を用い、地元の人が持つ技術を応用することもできました。おそらくシアヌークビルの人々は、このコミュニティセンターを「自分たちの手で創り上げた」と誇りに思っているのではないでしょうか。

そして将来、この「Bomnong L’Or」で学んだ子供たちが地元や国の未来を担うようになることでしょう。ぜひこの場所だけではなく、カンボジア内外で広く採用されてほしいですね。

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orkidstudio.org
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(提供:ハロー! RENOVATION