斜面に生えるスモールハウスは4週間で完成!? メキシコにあるリゾートホテル
カラッとした晴れの日が続く、乾燥したメキシコのヤリスコ州、海と山、自然があふれるイェラパの山側にあるベラナホテル。そのホテルのラグジュアリールームが驚きの構造をしている。もともとは従業員用の仮設住宅として設計されたものだが、形が面白く、景色を楽しむのに最適なデザインなのでその後一般に貸し出しを開始したそうだ。「佇む」というより「生えている」という表現の方がしっくりくるかもしれない。地面から発生したかのような飛び出る4つの鉄フレームに、まるで見張り台のような建造物がくっついている。
これをツリーハウスか、または山小屋と呼ぶのか、なかなか形容が難しいが、角錐をひっくり返した形のスモールハウスだ。V型に生えた4本のフレームに、ボートから取った木材を使って壁を貼り付けた、プレハブ形式の建築物だ。金属の波状の屋根は傾斜が付けられており、降った雨を生活水として集め、再利用する。ソーラーパネルやコンポジットトイレもあり、素材は現地のものを使ったりと環境にも優しい。
この家が優れているのはそれだけではない。4週間以内という短期間でコンクリートの基礎を作ったところに鉄のフレームが組み立てられ、壁や床が貼られていく。かつ、電気を一切使わずに建設することができるため、低コストでハイスピードな建築が可能になるというのだ。街から離れた、非常に厳しいとされる環境での建設においても、非常に有効だと言えるだろう。
傾斜部分を利用してリビングスペースにアクセスできる。スカイウェイ通路のようなものを作れば、ツリーハウス同士を連結させることができる。
リビングの広さは16m✕16m、地面から16m上に住まいが作られているため、自然と周りの景色が良く見えるようになる。メキシコの美しい自然の景色を見ながら、同じ時間を過ごす他の滞在者との会話も弾むこと間違いなしだ。
特別に貼り付けられたプレハブの壁には特別な装飾をしているわけではないが、簡素なプレハブ作りからは想像もできないほど部屋の中はラグジュアリー雰囲気に包まれている。とはいえ、家具やインテリアコーディネートだけでそれを実現しているのではない。外と中の区別が曖昧になっていることも、贅沢な空間を演出する一助になっている。オープンスペースになっているものの、うまくカーテンを使ってプライバシーを確保し、さらにメキシコの強い日差しから守ってくれるのも嬉しいポイントだ。
ツリーハウスとも山小屋とも呼べるこの独特な形状とコンセプトが、このスモールハウスの最大の特徴だ。どちらかに敢えて定義することもないだろう。
このスモールハウスのアイデアは他にも転用できると思う。ほとんど地面の状態への影響を受けないので、川辺や海辺に建てることもできるかもしれない。いずれにせよ、将来性と転用先をいろいろと考えたくなるようなスモールハウスだ。