『目的+α』の遊び心を。中庭に浮かぶ光の​ツリーハウス

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コンクリートと石によって創り出される、シンプル且つ整然とした雰囲気。

イスラエルの首都・エルサレムに所在する国立博物館・イスラエル博物館は、歴史的に重要な物品を取り扱う国立施設とあって、その佇(たたず)まいからは、荘厳な風格が感じられる。

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その一方で、同博物館・青年美術教育棟(The Youth Wing for Art Education)入口の、リニューアルされた中庭はというと、大人・子どもを問わず、来館者にとっての憩いの場だ。中庭のリニューアルというそのプロジェクトの目的は、シンプル且つ整然とした博物館の雰囲気の中に、「来館者の声」を反映させるというものであった。

博物館と言えば、小さな子どものいる親にとってはあまり気乗りのしない場所かもしれない。歴史的な資料や芸術品に対して数時間もの間、集中力をキープすることのできる子どもというのは、そう滅多にはいないだろう。子どもの対応に追われて、家に帰るころには疲労困憊(こんぱい) 、博物館で何を見たかすらろくに覚えていないなんていうこともあるかもしれない。

つまり、イスラエル博物館におけるそのプロジェクトの目的は、「博物館の雰囲気を損ねることなく、子どもが安心して遊べる場所を造る」ということであった。

プロジェクトの目玉、そしてデザインコンセプトの要(かなめ)は、この大きな松の樹だ。

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樹の幹には、小さな屋根付きのシンプルなツリーハウスが建てられており、そこからは、細部までデザインが行き届いた博物館の景観が見下ろせる。

ここで一度、子どもの頃の思い出を振り返ってみて欲しい。

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あなたの頭の中にはどのような子どもの頃の思い出が浮かんでくるだろうか。
もしそこに、かくれんぼをしたり、遠くを眺めたりできるツリーハウスが浮かんできたとしたら、それはどんなに素敵なことだろう。

この小さな屋根付きのツリーハウスには、ここで遊ぶ子ども達が、大人になったときに思い出に残る場所になっていて欲しい、という想いが込められている。ユニークな外観もさることながら、構造上の工夫も見事だ。

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頂上のツリーハウスから下に降りて行くための通路は、何度も折り畳まれたかのような構造をしており、子ども達の遊び心を掻き立てる。子ども達は思い思いにこの場所を使って遊ぶことだろう。

遊び方は、遊ぶ子どもの想像力の数だけ、無限に広がっている。

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また、このツリーハウスは、薄い木の板を軽量の鉄骨に何枚も固定するという手法で造られており、透明性が高く、様々な角度から子ども達の様子がうかがえる。子どもを遊ばせる親の気持ちを汲みとった、素晴らしいアイデアだ。

木製の建物を降りて行ったその先には、広場が直結している。この広場は柔らかいゴム製の素材で覆われていて、その周囲は、大人も 座って休めるよう、建物の一階部分によってぐるりと囲まれている 。

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さらに、上に述べたような構造の一つ一つは、同時に、建物の基盤部分や、地面に大きく広がる木の根っこ部分を覆い隠すように設計されており、全体としての景観や、子ども達に対する安全性に配慮されている。

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博物館の雰囲気を損ねないシンプルな外観。子ども達の安全のための工夫が凝らされた構造。何と言ってもツリーハウスとは、『目的+α』の遊び心が詰まった素敵なアイデアではないだろうか。

総じて、「博物館の雰囲気を損ねることなく、子どもが安心して遊べる場所を造る」というイスラエル博物館のリニューアルプロジェクトの目的は、無事、果たされたと言えよう。

しかし、『目的+α』の遊び心は、まだまだこれだけじゃない。

夜になると、ツリーハウスのイルミネーションだけが、辺りを照らし始める。博物館の中庭には、きらきらと輝く光のツリーハウスが、そっと浮かび上がる。

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