第1回:Fire King|アメリカンヴィンテージ・グラスウェア
YADOKARIをご覧の皆様、初めまして。アプティグラフト佳菜と申します。今回からこちらでライターとして参加させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
まずは自己紹介。現在、アメリカ在住で、現地の大学に通う主婦です。専攻はジャーナリズム。普段は社会や地域で起こった出来事や、法律に関する記事等を大学で書いています。将来はジャーナリストになりたい!というよりは、どんな形でもいいので「書く」ことに関わる仕事をやらせていただければと、日々コツコツ書く作業を続けています。
アメリカに移住してからというもの、ヴィンテージのグラスウェアや小物を収集しています。今までたくさんの種類のグラスウェアを集めてきましたが、今回はその中でも、Fire Kingについてお話していこうと思います。
Fire King ジェダイのストレートカップ
Fire Kingの歴史と魅力
Fire Kingは、アメリカオハイオ州にあるAnchor Hocking社のガラス食器のブランドで、1940から1976まで製造されました。Fire Kingはカラフルな耐熱ガラスの食器で、当時にしては安価で手に入りやすく、瞬く間に人気の商品になったそう。当時は他のグラスウェア会社同様に、Anchor Hockingも、Fire Kingを小麦粉やコーンミールそれに洗剤などのおまけとして無料で配っていた時期もあったようです。現在は、Fire Kingでもジェダイ(JaditeまたはJadeite)色のグラスウェアは、今日でもアメリカだけでなく日本でも大人気ですね。アメリカでは、元祖カリスマ主婦と呼ばれたマーサ・スチュワートがFire Kingのジェダイのコレクターで、彼女が自分の番組で自身のコレクションを使ったのが流行るきっかけとなったと言われています。
Fire Kingの魅力は、何と言ってもミルクグラスの作り出す暖かみのある形と色ではないでしょうか。今では製造されていない昔の食器。それでも絶大な人気を誇るFire Kingは、アメリカだけではなく日本にもたくさんのファンがいます。実は、Fire Kingの多くが日本にあるって知ってましたか?
古い時代に製造されたFire Kingはグラスが厚めで、新しいものになるほど薄くなっています。ファクトリーマークと言われる気泡や色むらもありますが、物によって個性があるので、1個1個手に取って見てみるのも楽しみの一つ。丸みのあるつるっとした形のFire Kingの食器を手に取ると、古き良き時代を感じさせてくれるかもしれません。どのFire Kingがどの時代に作られたか調べる方法は、食器の底にあるバックスタンプ(刻印)を調べるとよいでしょう(下の写真参照)。バックスタンプは時代とともにブロック体から筆記体へ変更。そしてGLASSとついているものは古い時代のもので、OVEN-PROOFやMADE IN USAとついたものは比較的新しい時代のものです。時代が進むに従って、オーブンで使用できるグラスウェアとしてOVEN-PROOF、輸出用にMADE IN USAの表記がつくようになったそう。
Fire Kingのバックスタンプ(刻印)。上の2つは1940年代に製造された物。Fire Kingの文字がまだブロック体です。左下は1950年代、右下は1960〜70年代に製造された物です。
Fire Kingの種類
Fire Kingの種類はたくさんあり、色別、形別、それに家庭用に製造されたものや、レストラン用に作られた、通称レストランウェアなどがあります。ブルーが美しい「ターコイズブルー」や小さな花が散りばめられた「プリムローズ」のように製造期間が約3年と短いものもあれば、定番のものは数十年と製造されたものもあります。それらのグラスウェアは普段家庭やレストランで使われていたものが主流なので、傷がないものや未使用品(ミント状態)を見つけるのが難しいですが、探せば見つかるので根気よく探してみるとよいでしょう。
レストランウェアはその名前の通り、レストランで使われていたシリーズ。通常の家庭用のFire Kingよりも厚みがあるのが特徴です。昔は普通にダイナーやレストランでFire Kingの食器が使われていましたが、今では映画やTVドラマでしか見られないのが残念。
未使用のターコイズブルー。ステッカーがまだついたまま。
最初は私は定番のジェダイをちょこちょこ集め、その後はアイボリーをここ数年集めています。人によっては私のように同じ色の物を集めたり、「フィルビー」や「スワール」などのシリーズで集めたりといろいろ。最近は、アメリカでもFire Kingの商品が見つけにくくなってきました。見つかっても高すぎて変えないこともしばしば。何度、後ろ髪を引かれる思いでその場を去ったことか。それでも根気よくあちこち回っていれば、これ!というFire Kingに出会えたときの感動はひとしおです。
日本でも人気のあるスヌーピーやStuckey’s、それにカラフルなスタッキングマグ
それとこれは余談ですが、Fire Kingの価値が再認識されたのに伴い、アメリカのアンティークショップ等で食器を洗わずに売っている人や(コーヒーのシミがついたままとか)、かなり使いこんだんだろうなぁと思わせるような食器(ガラスのツルツル感がないくらい傷がたくさんついている状態とか)を売っている人がいたりします。Fire Kingの良さが再確認されると同時に、「Fire Kingだったら何でも売れる」という変な誤解を生んだのは言うまでもありません。
古き良き時代を感じさせるアメリカンヴィンテージ。今回はその中でもグラスウェア、Fire Kingを紹介しました。お気に入りの一つを手に入れて、ちょっとしたひとときを癒されてみませんか?