街を見下ろす眺望、真上には広がる青空。ここに集う人々は解放感に包まれながら、それぞれ思い思いの時間を過ごしている。だが、この写真を見るだけでは、ここがショッピングセンターの駐車場だとは誰も気付かないだろう。

ここはベルリンのショッピングセンターNeukölln Arcaden（ノイケルン・アルカーデン）の屋上を利用したカフェ・バーKlunkerkranich（クルンカークラニッヒ。鶴の一種、ホオカザリヅルの意味）。Klunkerkranichは隠れたように屋上にあるが、その人気で、もはや秘密の場所ではない。とてもユニークで洗練された場所として知られている。まずはショッピングセンターのエレベーターに乗り、最上階へ。エレベーターを降りて壁の看板に沿って進んでいくと、目の前に開けた空間が現れる。2500平方メートルの広々としたスペースには、ウッドデッキ、所々に植えられた花やハーブ、一部は砂を入れた砂場スペースがある。コンクリートむき出しの寒々とした雰囲気とは打って変わって、木と植物、砂で囲まれた場所は温かみのある雰囲気を醸し出している。

このKlunkerkranichはどのようにして作られたのか。創業したのは、Julian Reetzと友人のDorleとRobin。3人は7年前から、ベルリンのノイケルン地区でFuchs＆Elsterというクラブを経営していた。クラブ以外にも、劇や小規模のお祭りを開いたりして、人々が集まる「場づくり」に成功していた。そのような時に、人からこのショッピングセンターの屋上を紹介され、Klunkerkranichのプロジェクトが始まった。このプロジェクトのコンセプトは、クラブのような新しい音楽の場を創り出すことではなく、「美しい心で文化的なこと」をすること。このプロジェクトには資金が必要だったが、街の助成金は十分ではなかった。そこで彼らは小屋を作り、そこでカフェ・バーを経営することで、屋上庭園や文化的な部分に投資をすることにしたのだ。

このプロジェクトは政府も積極的に支援している。だが、政府だけでなく、多くのボランティアによっても助けられている。特に始めたばかりの頃は、家族や多くの友人が助けてくれた。後々、彼らのボランティアとしての活動はボランティアではなく仕事となり、今ではほぼすべての人（100人以上）を雇うことに成功している。彼らの目的の一つは、この場所をクラブの人や老人、若者だけの場所ではなく、「みんなの場所」にすることだった。その目的はすでに達成しているといえる。子供たちは砂場スペースで遊び、老人たちはコーヒーを楽しみ、夕方には若者がDJやミュージシャンの曲に合わせて踊る。それぞれが肩肘張らず、自分らしい時間を過ごせる場になっている。

子供から大人まで人気のKlunkerkranichだが、なんといっても一番の魅力は、ベルリンの街を一望できるこの眺め。建物の赤い屋根瓦が可愛らしく並び、夕日が沈むのをゆっくりと待つ。よく晴れた日に訪れれば、思わずカメラのシャッターを何度も切ってしまう位、美しい景色だ。ベンチ、テーブル、バーエリア内のステップのどの場所に座ったとしても、温かいもてなしを受けることができる。ビールを片手に、気分の良い場所を見つけて座る。夕日が沈むまで、友人と語りながら時間を過ごすのも良いかもしれない。だが、もし一人で来ていたとしても、新しい友人と出会うのはそう難しくない。週末にはＤＪやミュージシャンが演奏を行うし、パーティーもよく開催されるから、新しい出会いも楽しめるだろう。普段なら車を停めることにしか使われない駐車場が、人々が集う場所に変身したKlunkerkranich。ベルリンの週末を味わうには最高の場所ではないだろうか。

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