スモールハウス……ではない!? エストニアの川のほとりに浮かぶ「vala」

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水面にゆらりと浮かぶ、木造密閉式のこの建築物。トムソーヤの冒険さながらの、住み込み式の筏スモールハウスかと思いきや実はこれ、サウナなのだ。

建築アーティストの サミ・ リンタラと、エストニアン・アカデミー・オブ・アート (EAA) の内装建築科長の ハンネス・プラクス、そしてエストニアの建築スタジオである「b210」の指導を通し、世界中から生徒が集まるインターナショナルサマースクールの一環として、「Flooded (フルーデッド)」がエストニア最大の国立公園沼である「スーマ」に、浮かぶサウナ『 Vala 」を制作した。

この名前の由来としては「屋根に落ちてきた雨水を集めて利用するビルドインシャワー施設を参考にした」ということらしい。このプロジェクトでは生活実物大の建築物のプロトタイプをつくり、設計し、そして発展させていくというゴール設定をした。

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この建築物は、「洪水が頻繁におこるような、常に変わり続ける、厳しい自然へと適応する建築物」と言うものをためす意味でデザインされた。建物全体、つまり内装や建設物理の計算、周りの天候や文化的なコンテクストをすべて考え抜かれている。

エストニアでは年に少なくとも一回は道や牧草地、庭などの日常の公共空間が「スーマ」の流れによって水没すると言う現象が起きる。
しかし、この非常に特殊で、通常好ましく思えない環境を有効活用しようと、サウナの発想を見出したハンネス・プラクスが「サウナと言う習慣は水と密接に結びついている」と言及して、結果がこの「vala」となったわけだ。

これは、現地の人と訪問者とを結びつける場所でもある。

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このサウナは池の上に浮かぶような「筏」のようになっており、もちろんこのように漕いで移動可能だ。

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上からみるとこのように本当に筏のよう。

この筏は現地で数週間でこのように建設された。

 

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日本人が思い浮かべるような普通のサウナではなく、このサウナは水に浸かりながら楽しめるようになっている。このようにふらりと立ち寄って、男女分け隔てなく仲良く肩を並べて入浴するのも楽しそうだ。サウナというより、さながら日本の混浴温泉のようだ。

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このように壁には脱いだ服をかける場所もちゃんと作ってあり、実用的な側面も考慮されて利用しやすくなっている。

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この建物の仕組みとしては、横の隙間から暖かい空気が送られるようになっているので水に浸かっていても暖かい。

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後ろに遮られているシェルターをくぐり、横を見てみるとこのように昔ながらの薪暖炉が設置されている部屋がある。
ここで薪を燃やして、熱を発生させ、この密室がサウナになる。

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このサウナのいいところは、大自然の中にあるところだ。大自然のマイナスイオンを浴び、美しい星空や夕暮れを見ながらサウナを楽しめる。これ以上の贅沢は他にないだろう。

夜になると、この大自然の中で柔らかい明かりが一層綺麗に水面に写る。

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このサウナは公共のフリースペースとして誰でも無料で使用でき、「エストニア森林管理センター」によって管理されていく予定だ。この一連の活動にすべての人間が参加可能なのだ。

普段なら、水が生活空間に流れて込んでくるなんてただの迷惑で、場合によっては災害にさえなる環境。しかし、このような自由な発想で、自由に使っていいサウナがどこからともなく流れてくるなんて、聞いてるだけでも楽しくなる話だ。楽しめるスペースが一つあることで、この地域の社会がほんのすこしだけ幸せになり、さらにこのような活動が広まることで世界全体に幸せが増えていくと思う。

このような活動のためにモバイルハウスというツールは非常に効果的であり、より広まっていければと願う。

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