壁がデッキブラシ!? もじゃもじゃキャビン「Hairy」
ここはイギリスのノッティンガム。
木の陰に隠れて、ちょっこりと顔を出すスモールハウスはかなり周りの自然と同化していて、まるで迷彩服をまとっているようにも見える。
遠くから見ると何やらもじゃもじゃ、モコモコしているこのスモールハウス、実は「ブラシ」でできているのだ。
イギリスに本拠を置く2hD Architecture Workshopが建築したスモールハウス 「Hairy」。敷地面積は約7㎡ほどで、ココナッツの繊維でできたブラシヘッドを壁一面に貼り付けている。
このスモールハウスの中では、都会に住む現代人が忙しい毎日から一度隔離され、静かに落ち着いて何かに集中して取り組むことができる環境が整っている。
例えば、今日中にやらなければいけない仕事に取り組むなどの場合など最適となるだろう。
通称「Mission Control」と名付けられたこのスモールハウスは、まさに秘密基地のような作りをしている。
完全にドアを締め切った状態では、外壁の全てから単純にココナッツの繊維の毛が生えているだけに見えるので、このモコモコしたボックス全体がなんなのかもよくわからなくなる。
中に入るためにはブラシのある一部分を取り外して、奥にある鍵穴に鍵をさして開ける必要がある。
事前に言われていなければ誰もこのようになっているとは想像できず、初めての訪問者を全く受け付けない。
つまり誰にも邪魔されずに、作業だけに集中することができるのだ。
中に入って見ると、快適で非常に静かな空間で、随所に仕事に集中するための工夫がなされている。
部屋の両端に机が置かれて、たとえ二人で作業していてもお互い別方向を向く設計になっているため、干渉し合うことなく仕事に集中できる。
中の壁は白くつややかなベニア板で、防音材、断熱材として羊のウールを壁の中に詰めている。
これにより曇りが多く寒い日の多いイギリスの部屋の中が、体温やパソコンの消費熱で簡単に温まるほどだ。
さらに、全て自然のものを使って建てられているため心地が良い。
外から入ってくるものは天井に設けた小さな窓から差し込む一筋の光のみ。
そう聞くと、部屋の中が非常に暗いイメージを持たれるかもしれないが、日中はこのように非常に明るい。
しかし、長時間椅子に座って働けば疲れる。そんなときは、気分転換に一度外に出ると自然が体を癒してくれて、このようにちょっと運動してみることもできる。
このスモールハウスは中に入って見ると外からみるよりもずっと狭い。
理由は写真のように上から見るとわかるが、実際の中身が厚い壁に囲われていているため、中の部分がその分狭くなっているのだ。
これによりより外界からよく「遮断」され、屋根の上の雨の通り道や雨樋などを外に出さなくても壁の内部で水を流すことができるため、より「家」感がなくなるのだ。
このYadokariの記事でも幾度となく取り上げてきた「ナカとソトの境界を作らない」というコンセプトはスモールハウスやミニマリズムのアイディアと非常に相性がよい。
なぜなら「場所を選ばない」ため非常に魅力的な空間に置くことができ、その境目を作らないことでそのメリットを十分に受け、さらに家自体がたとえ「小さくても」全ての空間を含めれば結果的に非常に大きな空間で過ごすことができるからだ。
しかし今回のこのスモールハウスは、現代の建築において主流となってきている「景観を含めたナカとソトの境目を作らないような全体的な空間作り」というコンセプトのアンチテーゼとしても捉えることができる。
むしろスモールハウスの「隠れミノ」としての部分により注目し、強化したタイプのスモールハウスと言えるだろう。