遊ぶ子供を見ながら仕事。建築家が裏庭につくったガーデンオアシス

小さな子供のいる方で、在宅ワークができたらと願っている人は少なくないんじゃないでしょうか。
1歳の子供を持つ、トロントの建築ファーム Six Five Four Aの設立者オリバー・ダンもその一人。ダンが自宅の裏庭につくったタイニーな仕事場「Garden Studio」は、高い木の壁に囲まれた緑の芝生の上に建っています。そこは周りの雑多な環境から隔絶された、ファミリーのための安全なオアシスのようです。

9.3㎡というスモールスペースのGarden Studioは、七三分けの屋根の形状がユニークです。アメリカの伝統的な建築様式のソルトボックス・スタイルのようでもあります。これは短辺の南向きの屋根に設けられた天窓から、太陽の日差しをたっぷりと室内に取り込むための設計です。

外装とデッキとフェンスには、同一のシーダー材を使用しています。エクステリアは、竹のようにストライプ状に切断して、エレガントなテクスチャーに仕上げています。
フェンスでフレーミングされた隣接する土地のカエデの葉、シーダー材の肌色、芝生の緑がパステル調の柔らかい色彩となり、スペースに安らぎを与えています。

木の自然の風合いを生かしたインテリアに、天窓、大きなフロントウィンドウとドアのガラスからの採光が、明るく室内を満たします。プレイグラウンドが見通せる窓の下に製図ボードが置かれて、子供の遊ぶ姿を時おり眺めながら仕事ができる環境です。

両サイドには、等間隔にむき出しの間柱が並び、ブック・ライブラリーや小物、パソコンのディスプレイの収納棚として機能しています。黒いワイヤーが目立つように吊られたフィラメント電球に、さりげない美意識を感じます。



世界の大都市で地価上昇は進む一方、住民がより広い住宅スペースを手に入れることは困難となっています。そんな中、ロンドンやニューヨークでは、住宅のエクステンション建築がトレンドとして注目されています。建物全体におよぶ大規模な増改築ではなく、ニッチな空間を活用して、リビングスペースやワーキングスペースを拡張しようという試みです。

多くの住民がマンハッタンから流入しているブルックリンでは、タウンハウスの裏庭に、建築許可申請が不要な100平方フィート(9.3㎡)以下のタイニーハウスを建築するのがブームとなりました。同様の状況のトロントで、Garden Studioは、新しい働き方と住まい方のためにつくられたのでしょう。
家族と一緒の場所で仕事し生活するための、自分たちだけのオアシスとして。